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creep

作者: odayaka
掲載日:2025/09/14


 奈良に一度だけ行ったことがある。

 母親も同伴だったはず。

 でも、彼女がいたと言う記憶はない。


 大学受験で田舎から出て来た。

 まぁ、都会の人からすれば奈良だって地方の田舎なんだろうけど。


 もっと西の、西の、日本の中でも田舎と呼ばれるような土地から来たから。

 だから、奈良だって、俺にして見りゃ『出て来た』になるわけで。


 奈良までどうやって出たんだか覚えてはいない。

 新幹線だって通らないような田舎だから。


 バスに乗った記憶はないから、JRの特急を乗り継いでいったんだろう。


 ただ、奈良に着いてからも、電車に乗ってても、田園風景が見えるばかりで。

 何だ、田舎じゃないか、と。

 別に馬鹿にしたわけでもなく、ほっとしてた。


 とは言え、やっぱ、電車の便は多くて。

 都会はやっぱ違うな、と多分、本気で思ってた。


 もう、昔の話だから。

 もう、昔の話だからさ。





 東北弁を話す女の子がいた。

 制服を着てさ。

 同じ受験生なんだろうな、と思った。

 地味な、女の子。

 ショートカットで、まぁ、教室見渡せば二、三人くらいはいるだろう。


 方言っていいな、って。

 思ったね。俺もバリバリの方言で。


 多分、そんなこと思ってた、って知れたら、都会の人たちも馬鹿にするんだろうな。



 確か、奈良の大学は落ちたな。


 田園風景が続いてる。

 やたら豪華なホテルに泊まった。

 バイキングだったかな。

 どうでも良かった。今から考えたら。







 東北訛りの子がいたのは。

 受験会場だったのかな。

 覚えてない。

 断片的にしか。




 親父と泊まったビジネスホテルを思い出す。

 いびきがやたらうるさくて。

 ムカついてた。

 あれは鳥取の大学の受験だった。

 ビジネスホテル。ツインの部屋。




 ありがとう、って言えなかった。






 俺は自分が悍ましくて。



 俺は、自分が震える程、悍ましくて。








 ありがとう、と言いたかった。







 ありがとう、と言いたかったんだ。









 あの子は、赤いスカーフを首に巻いてた。

 黒いセーラー服を着てた。


 笑顔一つ思い出せない。





 当たり前だよな。


 あの子とはその時だけだったんだから。



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