表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/42

12

12


 その日の放課後、有栖はまんまと体育倉庫のカギを手に入れた。

 性懲りもなくまたタイムカプセルを探しにやってきていたOB・OGの3人組をソラが見つけたので、それを利用した。有栖は放課後、体育教師赤井の元まで行き、OB・OGを手伝いたいと申し出た。そうして体育倉庫の南京錠のカギを受け取ったのだ。

 有栖はホームセンターへの買い出しから戻ってきたソラ、双葉と体育倉庫前で合流した。


「あれ? 祈里は?」ソラが訪ねる。

「3バカトリオの相手をしてるよ」

「よくそんな酷い役割引き受けるよね」双葉が顔をしかめた。

「祈里たんの我慢強さを活かした最適な配置でしょ」有栖が自画自賛してから、すぐに「そんなことより」と祈里の話題を雑に放り投げた。

そして「どう? ちょうどいいのあった?」とソラの顔をうかがう。

「ああ。いい感じのが買えた」ソラが悪そうに笑うと隣の双葉が「サイズだけはね」と白けた顔を見せていた。


 ソラと双葉、2人ともそれぞれ異性にモテそうな整った顔立ちをしているが、お互いに少し毛色が違う。ソラは鼻がスッと通って鋭い目の美男であり、双葉は顔が丸くて小さく、可愛らしいという印象を与える美女だ。だが、系統の違う2人も横に並ぶとどこか兄妹のように見えた。

 ソラが包装をバリバリ破いて『いい感じの』ソレを取り出した。

 南京錠だった。体育倉庫についている物とよく似ている。

 有栖が新旧2つの南京錠を並べると双葉は「やっぱ全然だめじゃん」と目を細めた。


「新品だから綺麗過ぎちゃってバレるか」と有栖も苦々しく顔をゆがめる。だが、ソラだけは「いや、いけるいける」と呑気に構えていた。

「は? 本気で言ってんの? これで鍵の入れ替えに気がつかなかったら、その人バカすぎでしょ」

「貸してみ」


 ソラが新しい南京錠を取り上げると、持っていたビニール袋をガサガサとあさって彫刻刀と紙やすり、それから極細のサインペンを取り出した。


「あんた、他にも何か買ってるとは思ってたけど、そんな物買ってたの?」

「必要なものだ。てか、『あんた』って、俺一応お前の先輩だぞ」

 ソラが双葉を睨むと双葉は「なら先輩として敬えるところ教えてください、ソラ先輩」と両手を組み合わせるお願いポーズでソラを煽った。

「可愛くないやつ」


 ソラが彫刻刀で新しい南京錠を削ったり、紙やすりでこすったりと加工をはじめ、仕上げにサインペンを少し塗っては指でこすりと繰り返してから、完成した品を古い南京錠の隣に置いた。


「すごい! ほぼ同じ!」


 2つの南京錠に有栖は顔を寄せて交互に見た。2つの南京錠をシャッフルしたら有栖にはおそらく見分けがつかないだろう。


「ソラ先輩、すごい偽造技術っ! さすが犯罪者!」双葉は引き続きソラを煽る。

「お前もその犯罪者の一味だろうが」


 ソラは加工された新しい南京錠を体育倉庫の扉に引っかけた。扉にぶら下がる南京錠を改めて見ても違和感は皆無だった。

有栖は古い南京錠のカギについているプラスチックタグを外して、新しい南京錠のカギの1つに取り付けた。


「これでよし。今日からボクらはいつでも体育倉庫に自由に入れるようになった」


 新しい南京錠には予備カギがある。その予備カギを有栖がカバンに突っ込んだ。


「てか、あたしとしては体育倉庫なんかじゃなくて、職員室あたりを爆破したいんだけど」


 双葉がそう言うと、有栖が「ほらね」とばかりにソラに目を向けた。


「どうして俺の周りはこうも危ない連中ばかりなんだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ