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 ある日の放課後、ソラが3Bの出入口から顔を覗かせると、男女共に騒がしかった教室の女子の声だけが少し控えめになった。


「え、見て」だとか「きゃぁ、やばくない?!」だとか、そういった声がソラの耳にも入って来る。それが自分の容姿を指しての言葉だという自覚がソラにはあったが、敢えて聞こえないふりをした。


 ソラは目的の人物を見つけると「祈里」と大きめに声を上げて呼んだ。祈里は、コイツまじか、とでも言いたげな顔でソラを睨みながら動きが固まる。


「え、蒼井くんと、古谷さん仲良いの?」「今名前で呼んでたよ?!」「どういう関係!?」


 いつも通り外野の声は一切気に留めず、「おい祈里、早くしろ。行くぞ」と再度ソラが声をあげたところで、祈里が早歩きで——どこか怒りを含んだ歩みで——ツカツカとソラのもとまでやって来て、そのままソラのワイシャツを引っ張ってクラスを出た。

 そして、人通りの少ない廊下まで来てから祈里が振り返った。


「ちょっと! やめてください! 悪目立ちします!」


 祈里は口を真一文に結んで、一生懸命ソラを睨むが、まったく怖くない。


「何がだよ。お前がクラスに遊びに来いって言ったんじゃねぇか」

「そう……ですけど! あんなに噂されるなんて思わなかったんです! 祈里、明日からクラスの女子全員の敵になってますよきっと……」


 言いながら祈里は嫌な想像でも巡らせているのか、顔がみるみる青くなる。


「どうせ今もぼっちじゃねーか」

「ぼっちじゃないです! 遠巻きに様子を見られてるだけです! なのに、ソラくんのせいでそれもおじゃんです」

「おじゃん、て言葉使う女子高生はじめて見たな」


 ソラは少し面倒になってきて、何の気なしに窓の外に目を向けた。体育倉庫が見えた。その近くに一人の女子がいた。ツインテールの小柄な女子。リボンの色を見るに後輩か。


「だいたいソラくんは自分がクラスの女子の仲を歪めるレベルのイケメンだっていう自覚がですね——」と祈里が説教を始めようとしてソラが、しっ、と人差し指を唇に当てるジェスチャーをしてみせ、黙らせた。


 ソラに釣られて祈里も怪訝そうに窓の外に目を向ける。

 ツインテールの後輩女子は私服の男女3人組に絡まれていた。それも見知った3人組だ。後輩女子は激昂した様子で、男女3人組と言い争っていた。


「あれ、この前のOB・OGの先輩方じゃないですか」祈里とは元同級生だろうに、律儀に先輩呼ばわりする。

「前も思ったが、お前、あいつらと知り合いじゃないのか? もと同級生だろ?」

「祈里、1年生の頃から学校休みがちで2年の時はほぼ保健室登校でしたから……」


 ふぅん、とソラがまた階下に視線を戻すと、OBのあご髭男子が後輩女子の肩を小突くように押した。後輩女子がよろめく。


「ソラくん、なんかまずそうです」と祈里が不安げに言う。

「ったく。面倒くせーな。問題ばかり起こしやがって、あの3バカトリオ」


 ソラと祈里は階段を駆け、急いで校庭に降りた。


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