彼女の乗車を認めて?
「パム。ホタルの乗車を認めて。」
星に手を引かれて気が付いたら星穹列車にまで連れてこられていた。私が少し手を引こうとすると強く握り直され、離さないという意思表示。えへへ、うれしっ。
「慌てて帰ってきたかと思ったらなんじゃ!」
「パム、お願い。」
「あ、あの…」
何この生き物。うさぎ…?しゃべってる…?
「そもそも他のメンバーから許可はもらっておるのか?」
「まだ。でも、納得してもらうから大丈夫。」
「なんも大丈夫ではないわ!それに、今は空き部屋がないから少し時間をもらわんと。」
「それに関しては問題ない。ホタルは私の部屋で暮らしてもらうから。」
「っ!?」
聞いてない!聞いてないよ!?私はすごい勢いで彼女の方に振り向く。パムって子を見つめるその瞳は本気の目だった。…強引な星も素敵。
「認めてくれるまで、ここを動かない。」
そう言ってぎゅっと手を強く握られた。う、嬉しい…でもこれ私も動けないよね!?
「…じーーっ。」
パムさんの視線が痛い。なんとなく「オマエがなんとかしてくれんか」と言っているような気もしてきた。
「せ、星?急な話しだし、一旦お泊まりとか遊びに来たって感じにしてみんなに認められてからで…」
「そ、そうじゃ!それに、無理やり彼女を乗せたところで誰も良い思いはしないじゃろ。」
「…私が今までより少し落ち着く、かも。」
「くぅっ!オマエのわんぱくさを知っているから結構ありがたいかもしれん。じゃがダメじゃ!!認められん!」
「お願い。」
どうして彼女がこんなにも必死でお願いしてくれてるのかはわからないけど、私も離れたくないもん。がんばって、みようかな…!
それに、なんとなくだけどパムさんを納得させたら全員が納得する気がする。この子が列車のカースト最上位…!だと、思う。うさぎさんだけど、多分。
よしっ、よしっ。頑張るぞ、覚悟を決めるのよホタル!
「わ、私から!提案があるの!」
「オマエはオレの味方じゃなかったのか!?」
「私を列車に乗せてくれるメリットを挙げられます!」
「こら!話を聞かんか!」
「列車に出たゴミ。生活してるとどうしても出てくると思うんだけど、なんとかできます!」
「…ふむ、続けてくれ。」
「わ、私なら燃えるゴミ、燃えないゴミ、資源ゴミ。種類、量を問わずに処理できる!列車の中にゴミが溜まるのは乗客全員にとって良くないと思うの。」
「確かに、いくら列車が速いとはいえ、跳躍した後にすぐ駅や途中の休憩所に寄れるとも限らんしな。」
「…パム、今列車の中にゴミを集めている部屋はある?」
「うむ、こっちだ。着いてきてくれ。」
星がパムさんに質問を投げかけ案内される。ナイスアシストだよ、星!
な、なんとか首の皮は繋がったかな!手を繋いだままの私たちの手が汗ばんでいる。彼女も緊張してたのかも。
「…ここじゃ。」
「…うずうず」
「やめるのじゃ!ホタルが乗れなくなっても良いのか。」
「我慢します。」
「おお、本当に大人しくなりおった…!」
うずうずした彼女が私の手を離す。わ、私って彼女にとってゴミ山以下…!?しょんぼり。ゴミに嫉妬するなんて人生で初めて…
そして、部屋には黒い袋や家具、衣類まで、大小様々なものがそこに捨てられていた。うん、これくらいなら全く問題ない!役に立って、パムさんに私たちを認めてもらうんだ!
「なぜ『私たち』なのかはよくわからんが…その言い方じゃと、まるで交際を認めた父親のようじゃな。」
嘘っ。どこから口に出てたの!?ぅぅ…私と星が交際。認めて…はぅぅ。交際。交際かぁ。したい、なぁ。
「おーい、帰ってこんかーーー!」
ハッ!意識が別のところにいっちゃってた!今は目の前に集中…よしっ。
「じゃあ、始めるね……焦土作戦、実行!」
私は目の前のゴミを全て燃やす。燃えた後の灰すら燃やして消す。
「わぁぁぁなんじゃああ!?誰じゃ!?!?列車が燃えてしまう!!?」
「安心してください。この炎は、私が燃やそうと思ったものだけを燃やし尽くします。列車に燃え移ることはありません。」
「…カッコいいっ!」
こらこら、そこの可愛い子。あんまりキラキラした目で見ないでください。少し、複雑です。そんなことを考えている間に部屋に捨てられていたゴミは跡形もなく全て燃やし尽くしてました。
「ご覧の通り、スペースも設備も必要ありません。さらに二酸化炭素やガスのようなものも排出されませんので、列車内の空気環境も清潔に保たれたままです。いかがしょうか。」
「ホタル。君の乗車を歓迎する。」
やりました。これで私も星穹列車の一員に…!あれ?いいのかな??まぁいっか。星と一緒にいられるし!!
────その夜、抱き合って寝ようとしてる私たちに『なにそれーーー!?ウチ聞いてない!ず、ずるいっ!』と甲高い声が投げられた。