三月なのかチャンネル─今日はゲストが来てるよ!─
「みんなー、ウチの配信に来てくれてありがとーー。今日は仲の良い友達とゲームするからね!」
最近視聴回数やチャンネル登録者数をどんどん伸ばしている新人の配信が始まった。今回はゲストを招いてゲームをするみたいだ。
「じゃあ今回のゲストさん!入ってきていいよー。」
「どうも。」
入ってきたのは灰色の髪で長身の美人さんだ。あまりモデルさんとか詳しくないんだが、女優さんか…?
スラっとしたモデル体型から繰り出される惜しげもなく晒される生足。気がついたら画面とキスしそうな距離感で配信を見ていた。なのかちゃんのおみ足も素晴らしいが彼女はもっと…まずい、冷静にならねば。
「もう、どうも。じゃないよ!自己紹介してって打ち合わせしたじゃん!」
配信者のなのかちゃんが怒っている姿なんて初めて見た…しかも、この怒り方は本気で怒ってるわけじゃない。もー、しょうがないなぁ!みたいな気心知れた世話焼きさんの雰囲気だ。
なのかちゃんの初めて見せる魅力的な姿に改めて惚れなおした。
「星。よろしく。」
「銀狼。よろしく。」
「ホタルです!よろしくお願いしましゅっ!」
…?
呼ばれたのは1人ではなかっただろうか。
「ん??なんか声多くない…?」
「なんかついてきちゃった…」
なのかちゃんも困惑している。乱入ゲスト…銀狼と自己紹介した銀と紫の印象の子。かなりラフな格好でだらーっとしてて可愛い子…薄着で膨らみかけのソレが俺を狂わせる。
さらにもう1人。ホタルと紹介したふわふわで白と緑の印象の子。儚げで、優しげで、どこかの令嬢かと思うくらい整った顔立ち…それに、慎ましい態度とは裏腹に慎ましくない服を下から突き上げてるソレがまた1つ俺の性癖を開拓した。
元々作業しながら見る予定だったけどこうしちゃいられない。録画とコメント待機だ。
「いーじゃん。私も混ぜてよ。」
「き、きちゃった…!」
「なの。今日何やる予定だったっけ?」
「それも覚えてないの!?一緒にゲームやるつもりだったんだけど…んー、あっ!これならみんなで協力プレイできるよ!」
急遽やるゲームを変えるみたいだ。あわや放送事故だが上手く流れに乗せている…やはりなのかちゃんはかなり配信が上手い。
「えー、これイージーすぎるよ。」
「銀狼。文句言わない。4人だしホタルいるしファミリー用は妥当。」
「あ、あたしあんまりゲーム上手くなくて…ごめんね?」
「ホタルちゃんが謝ることないよ!それよりもウチは4人で一緒にできる方が嬉しいな。」
「はぁ。別にどんなゲームだってホタルならキャリー出来るけど?」
どうやら銀河的人気を誇る横スクロールで協力してギミックを解きながらゴールに向かって進むゲームを選んだようだ。
「仕方ない…じゃあ場所取りだ。私ベッドもらいっ。」
「アンタねぇ!そこ画面の外だよ!?」
「じゃあ私はここ。」
「アンタも!なんで画面の外のゴミ箱に座ってるの!!」
なるほど。このメンバーだとなのかちゃんはツッコミに回るのか…いつもより右に左に声を張り上げて忙しそうだ。
「え、えっと…あたしはここでいい、かな。」
「ホタルちゃんは椅子に座って!?なんで立ってるの!?!?」
「今頃緊張してきちゃって…これネットにずっと残るものなんだよね?」
「そ、そうだけど…乱入と緊張の順番おかしくない??」
振り回されるなのかちゃんも可愛いなぁ…
「だいたいさー。画面の外とか関係なくない?ゲーム画面見せるんでしょ??」
確かに。銀狼ちゃんの指摘はもっともだ。
どこに陣取ろうがマイクに声が乗れば問題はない。画面映りを気にするのはメイクとかファッションに造詣が深い彼女だからこそだろうか。
「あっ。」
「…嫌な予感。まさか、なの。OBSとか…」
「…持ってない。」
「銀狼。」
「今あるわけないじゃん。一回戻らないとないよ。」
「ホタル。」
「OBS…星が言ってたし…わかった!野球の用語だね?ごめん持ってないよ!」
「んー、そう!ホタル正解!でも残念。持ってないかー。」
星って子はホタルちゃんに激甘みたいだ。もし野球だとしてもストライク・ボール・アウトってカウントのことだから間違いなく持ち運べるものではない。
「ど、どどどどうしよ〜。」
「私に案がある。」
「星様ぁ〜!!」
感激に震えるなのかちゃん。自信満々に答える星ちゃん。この配信事故を救うアイデアがあるのか…!
「ないものは仕方ないから、今日はゲームをしてる私たちを配信する。」
「何言ってるの星様!?」
きっと視聴者全員がなのかちゃんと同じことを思っただろう。
機会を改めるとか、画面を直に映すとか、色々やりようありそうじゃない…?星様…?
「ウチそんな配信聞いたことないからね!」
「なら私たちが初めて。これも開拓の旅だよ。」
「違うからね!?」
「時間がもったいない。早くやろう。」
「あーーーーっ!もう!ウチ知らないからね!?」
こうしてゲームを起動…した?画面見えないから視聴者側からじゃわからない…
「銀狼。そのアバターと称号は全コンプ報酬?」
「おっ、さすが星。わかるねー。」
「アンタ!その椅子ウチの椅子なんだけど!?」
「ええっと、星。その、そこ1人用の椅子だから…膝に座ってもいい?」
「ホタルならどこに座ってもいいよ。なんなら私が椅子になろうか?」
「ねぇ!無視しないでよ!!ウチも一緒に座っちゃうよ!?」
現場が混沌としてきた。それはそれとして百合の波動を感知した。
「ホタルちゃーん。もうみんな集まってるけどマルチロビー来れる?」
「ええっと…インストール中?って書いてあるよ!」
「今!?」
「なの。ステイ。」
「そうだよ。急にやるゲーム変わったしホタルは普段ゲームしないから今買ったんでしょ。」
「こういう時真っ先に銀狼が噛み付くイメージあったのに…随分優しいんだね?」
「は、はぁぁ!?別に!?普段ホタルとゲームできなくて寂しいとか!一緒にやれて嬉しいとか!これを機に私ともっとゲームしてくれないかなとか考えてないから!適当なこと言うのやめてくれる!?」
そこまで言ったら言ってるようなものだよ銀狼ちゃん…それはそれとして、さっきのカップリングとはまた別勢力が出てきてしまった。俺は誰を応援すれば…!?
「ねぇアンタ。お願いだからウチを無視しないでよ…そもそも今日はウチと2人っきりでゲーム配信する予定だったじゃん…ぅぅ…」
「なの…うん、ごめん。でもOBSなかったじゃん…」
「うっ、それなら2人でお話ししたらいいじゃん…あんまり寂しくさせないでよ、ばかっ。」
ん?おかしいな。さらに百合の波動が…別勢力が台頭してきたぞ??このメンバーの相関図が気になってきた。どこで売ってますか?
「そしたら今日はおしまい!ウチたちの不手際で視聴者さんたちに不愉快な思いとかさせたくないし…また今度ちゃんと準備してからこの4人でゲーム配信しよ!」
「まぁ確かに。顔合わせ配信的な感じにはなっただろうしまた今度でもいっか。」
「仕方ない、日付決まったら教えてよ。私とホタルは任務もあるから調整しないと。」
「あっ、インストールできたって!これで星と一緒にゲームできる!」
「今!?」
「なの。ステイ。」
「そうだよ。あれからしばらく騒いでたし、私の改造したハードならこれくらいよゆー。まぁでも操作方法もわからないだろうし、私がホタルにチュートリアルしとくよ。」
「これウチが悪いの!?」
あー、もうメチャクチャだよ。でもなんだろう…この4人の配信から目が離せない…間に挟まらなくても良いので同じ空気吸わせていただいてもいいですか?頑張って信用ポイント貯めるので。
噂が噂を呼び人が集まって、チャンネル登録者数。SNSのフォロワー数が鰻登りに。
あっという間に銀河の中でもトップレベルの人気配信者になってしまった…星ちゃんが。
曰く、4人の関係性が気になる。
曰く、24時間365日定点カメラで配信しませんか。
曰く、SNSで銀河の歌姫ロビンさんからフォローバックやリプライが積極的に返ってきた。
曰く、実質乗っ取ったチャンネルの最初の配信が右手だけ映った17秒。
俺はというと、ばっちりこの4人の魅力に取り憑かれて箱(?)推しになっている…おっと、次の同人祭りで星ちゃんハーレム本多数っと。要チェックだ。
今では大人気の三月なのかチャンネルだが、この4人での配信は未だ続きがない。首だけではなく全身長くして待っているが…続きが配信されることはなかった。
──── そして、この配信は伝説になった。




