喧嘩の理由
「ホタルのばか!」
「星のバカーー!」
ドリンクを車掌さんにもらおうと、列車のラウンジに向かっていると丁度そのラウンジから大声が響く。
ちょ、ちょっと何事?ウチ、ドリンク取りに来ただけなのに…さっきまでホタルちゃんが来るって嬉しそうにソワソワしてたじゃん!
「ホタルは大体いつもそう!こっちのことなんてお構いなしなんだ!」
「星だって!!」
あーー、もう部屋に戻りたくなってきたけどかなりヒートアップしてるみたいだし、このまま見過ごせないよね…どうにか頭を冷やしてくれると良いんだけど。
「ス、ストップストップ!2人とも!大きな声出して一体どうしちゃったの!」
「あ、なの…」
「ご、ごめんなさい!」
ウチを見るなりさっきの勢いが萎んでいく2人。よし、クールダウンは出来たみたいだね。
「アンタ、せっかくホタルちゃんが遊びに来てくれてるのに嫌な気持ちで過ごさせる気??」
「ち、違うの…私は。」
「ホタルちゃんも!顔を合わせてすぐ喧嘩なんて!」
「ご、ごめんなさい…。」
このまま2人の言い分を聞いてあげたほうがいいかな。ウチが間にいればまた喧嘩なんてしないだろうし。とりあえず話を聞いてみようかな。
「じゃあ何があったのか教えてくれる?」
「わかった。まず、ホタルが遊びに来てくれて何をしようかって話してた時に…ホタルは優しすぎるし私を優先させがちだから、今日こそはホタルのしたいことをしようと思って服を見にショッピングに行こうって言ったの。」
「うんうん。その優しさを少しだけでもいいからウチにも分けてほしいなってこと以外何も問題なさそうだね!」
「そしたらホタルが『私に気を遣ってない??ショッピングより公園にいって砂場で遊ぼうよ!』って…」
え、えっと…?喧嘩する?それ??
話が見えてこないんだけど…
「だ、だって星はいつも私のこと気遣ってくれるし一緒にいて苦しいなって思ってほしくないんだもん。」
「気遣ってない!ホタルに喜んでほしいだけ!!私が砂遊びしてもゴミ漁りしてもホタルは楽しくないでしょ!!」
「た、楽しいもん!一緒にいるだけで幸せだもん!!!」
ま、また始まっちゃった…でもこれってお互いが思いやりあって喧嘩しちゃってるってこと??
「星はいっつもそう!ホタルホタルって…私そんなにつまらさそうな顔してる??私、星といるとき表情ふにゃふにゃな自信あるんだけど!?」
「ホタルだって!いつもいつも私がやりたいことやらせてくれて!優しくて!お世話してくれて!あったかくて!!これじゃホタルからもらったものを全然返せてない!!」
あーー、これ心配いらないやつだ!
ラウンジをよく見てみると、奥のソファで微笑みながらひっそりコーヒーを飲んでる姫子がいた。…きっとブラックなんだろうなぁ。
「ホタルは1人で頑張ろうとしすぎ!もっと私に頼ってよ!」
「十分頼ってるよ!!星だって私のことお姫様扱いしてくれるし手繋いでくれるしずっと一緒にいてくれるし…幸せすぎて私だけこんなにもらっていいのかなってなってるもん!」
あ、あははー…ウチ、邪魔だったかなぁー。
今日はなんだかブラックコーヒーに挑戦してみたい気分になってきちゃったかも。姫子に淹れてもらおうかな。
「なの。私悪くないよね?」
「なのかさん!私悪いこと言ってないよね?」
「ウチ、もう行くね…2人とも、末長くお幸せにね?」
ふらふらと姫子の方に歩いていく。ちょっと胸焼けしてきたかも…
「なの!」
「なのかさん!」
───こんな喧嘩ってあるんだ…




