侵入者対策
未確認構造体への侵入者対策
内閣総理大臣試案
現状で民間人の内部侵入を阻止する明確な規定も法律も無く自由に侵入している。内部に侵入後生還する人数が、全体の9割ほどである。宝箱に当たる人数はさらに少なく全体の2%程度となっている。宝箱を目指し無理をして死亡する者が後を絶たない。
この現状を鑑みるに警察では能力不足であり、軍の活用をし円滑な侵入者対策及び死亡者削減対策とするものである。
現在、複数の未確認構造体に軍の検問所を設けており注意喚起する事で未帰還者が減少している。
全ての未確認構造体に軍の検問所を設けるべきであろう。検問所には救護所を併設し、けが人の治療に当たるものとする。
産出物は価値換金表を作り一時預かりの後、速やかに提出者に現金または為替で支払うべきである。支払いは当日中が望ましい。その際税金は天引きし、後から課税処置が生じないように配慮すべき。
対象者を大日本帝国国民のみとし侵入許可証を発行。全ての侵入者を管理する。
侵入許可証は善良な国民なら取得できるとする。前科前歴の有る者は慎重に審査の後、是非を決定する。
許可証の発行と買い取りの運用は新規に総理大臣直轄の機関を設立し、それに任せる事とする。
各国とも未確認構造体が出現しており、当面は自国民限定としても国際的に非難される事は無い。
内務省試案
全ての侵入希望者は最寄りの警察署に毎回侵入希望届けを提出するべし。
侵入届は成人全てが届け出可能とするべし。未成年者は侵入不可とする。
継続的に侵入を希望する者は内務省外郭団体非常勤職員をとして登録し、これを管理する。
侵入者管理のための内務省外郭団体は速やかに設立し非常勤職員の募集を始めるものとする。
全ての産出物は内務省預かりとし、後日価値確認の後為替を送付するものとする。
検問所は警察外郭団体を設立し、これに任せるものとする。
産出物から得られた所得は所得税の対象であり、課税対象である事を周知する。
未確認構造体の侵入者管理は東京等の大都市では警察外郭団体が行うが、地方の未確認構造体では地方自治体が行うものとする。
「内務大臣にお聞かせ願いたい。この「地方の未確認構造体では地方自治体が行う」というのは地方に任せるという事でいいのか」
「内務大臣」
「その通りであります」
「議長」
「中川君」
「地方に業務を任せるという事はそこで得られる利益も地方の予算に組み入れていいという事ですな」
「議長」
「内務大臣」
「地方自治体に管理業務は任せますが、資金の流れは内務省で一括し後に配分を行います」
大きくどよめく議場。
「内務省で独り占めにする気か」
「強突く張り」
「上がりだけ攫うのか」
等の罵声と怒号が飛び交う。
「議長」
「大平君」
「内務省外郭団体非常勤職員とは、いかなる身分になるのかお教え願いたい」
「議長」
「内務大臣」
「内務省外郭団体非常勤職員は内務省外郭団体が管理する非正規職員であり、この場合は未確認構造体内部より拾得物を持ち帰りその成果によって歩合給を出します」
再び
「内務省で独り占めにする気か」
「強突く張り」
「上がりだけ攫うのか」
「面の皮が厚すぎる。人をなんだと思っているのか」
再び怒号と罵声が飛び交う。
その日、未確認構造体侵入者対策の素案を議決し法的効力を速やかに発現させるべく国会議事堂では臨時国会が開催されていた。
その日に議決されるのは侵入者対策を急ぐためであり、もっと突き詰めたかったのであるが報道各社や言論者に急かされて世論が早期の規則化を求めたためだった。
議会では内務省が鼻薬を嗅がせている議員やケツ持ちをしている議員と内務省関連の利権を持っている議員よりも、これ以上の内務省肥大化と権限強化を嫌う勢力が勝った。
内閣総理大臣素案を元に速やかなる法律化が諮られる事となった。
笑っているのは内閣総理大臣と内務省に対抗している者たちだった。
内務大臣や内務次官は顔を真っ赤にしている。
「ふむ。内務省外しは成功しましたな」
「しかし、警察は非協力的になるでしょうな」
「軍の方でなんとかします」
「憲兵隊ですか。アレは少しいただけませんが」
「姿勢を改めるよう指示を出しますし、検問所の主役は一般兵です」
「憲兵隊は参加させないと」
「そうではありません。憲兵隊には未確認構造体内部や周辺の犯罪行為を取り締まらせます」
「未確認構造体を事実上軍の施設と見なすとでも?」
「検問所だけですよ、軍の施設は。憲兵隊の管轄拡大を正しく運用するだけです」
「本来ならば軍施設周辺の治安維持と軍人の犯罪対応が仕事ですからな」
「赤対策と極右極左対策として大目に見てきたのが恥ずかしいですな」
「赤は特高警察がこれまで以上に力を入れるでしょう」
「実はこの機会に特高警察の権限と活動範囲を縮小しようと思います」
「最近は悪評がよく耳に入りますからそれは面白そうですが、内務省が黙っていないでしょう」
「この件でいずれ何かやらかすと考えます」
「足下をすくわれないようにお願いしますよ」
「注意しております。ただ憲兵隊には特高警察に協力的な者も多く」
「苦労しますな」
「全くです」
対米戦が無くなったと思ったらこれか。もう戦争の危機は無いのだからお役御免で早く辞めたいのだが。内閣総理大臣は思った。