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未確認構造体


     未確認構造体に関する第一次報告書



 

 本報告書は未確認構造体調査部隊の調査報告を基にしているが、極めて限定的かつ短期間の調査を基にしており、この第一次未確認構造体報告書で全てがわかる訳ではない事を最初に明記しておく。

 調査箇所は大日本帝国国内のみであり、他国の未確認構造体は含まれていない。

 この報告書は、内部構造と内部の危険性を現時点で確認できたものだけを上げている。

 産出物に関しては、商工省・農商務省・大蔵省の合同調査報告書を参照の事。




1.未確認構造体の概要


 地上に立つ塔と地上に空いた大穴の2種類が存在する。



1.1 塔の外見


 塔の場合は直径200メートルから400メートルで複数階層の外観を持つ。

 外見は石材で構成されたと思われる塔から、コンクリートや木造にしか見えない塔まで様々である。多いのは石材で構成されたと思われる西洋風の塔が多い。

 一部の塔で上部が崩れているが、外見は同じである。なぜ崩れているのかは不明。

 階層は1階層20メートルと全ての塔で共通である。最大20階層である

 層は上階ほど細くなっているが、1層10メートル程度が細くなる。細くなった部分は幅4メートルの回廊となっており、丁寧に転落防止用の手摺りも付いている。回廊には上下を繋げる階段は無い。



1.2 大穴の外見


 大穴の場合も穴の直径は200メートルから400メートルである。

 石材で構成されたと思われる穴から、どう見てもコンクリートにしか見えない穴や素掘りにしか見えない穴まで様々である。

 大穴も副層構造になっており、1層は高さ20メートルである。塔同様に1層ずつ下に行くほど直径が10メートル小さくなっている。

 塔と同じように内側の狭くなった部分は幅4メートルの回廊となっている。手摺りも付いている。回廊には上下を繋げる階段は無い。

 最大深度は400メートルであるが、一部周囲が崩れたのか埋没している物は正確な深度は不明である。




2.内部


 塔も大穴も内部は外観から想像できない広さであり、人智の及ぶところではない。

 調査が及んでいるのは2層までであり、塔も大穴も同じであり区別はしない。

 内部には差異があり、2.2以降を参照されたい。



2.1 内部容積


 驚く事に内部の直径は外径の10倍から20倍である。倍率は一定しない。

 1層2層とも高さは10メートルであり、床と天井は10メートル前後の厚さが有るものと思われる。

 今後の継続的な調査で傾向を見極めるべきである。


 

2.2 内部構造


 確認されているのが、迷路型と草原型の2種類である。内部は存在場所と同じ時間経過があるようで日の出と日の入りは同じであった。昼は明るく夜は暗い。


 

2.2.1 迷路型


 迷路型は文字通り迷路であり、通路と部屋で構成されている。所々に広場があり、水場から水が湧き出ている。広場は小さい公園のようであり、水場から水があふれて水浸しになる事は無いようである。

 水は防疫部隊の調査によると飲用可能であり、細菌や寄生虫などの有害生物は確認されていない。  



2.2.2 草原型


 広さは迷路型と同じであるが、信じられない事に天井を支える柱が10本しかない。柱の直径は5メートルで間隔は揃っていない。目印にするには良い。

 中心部に水場が4カ所あり水が湧き出て、それを水源とする小川が各2本計8本流れ出ている。流れるので高低差はある。測量の結果、水源から壁側へ1%程度の傾斜が存在する。迷路型同様、水は飲用可能である。

 草原の植生の多くは雑草。普通に地面に生える雑草である。植物学の教授や研究者も違いは無いと言う。

 所々に低木が存在する。一部では林という密度で存在している。




3. 内部存在物


 存在物と表現したが、仮称である。



3.1 生物


 迷路型と草原型で出現する生物の違いがある。不思議な生態で生物と言っていいものか判断に迷うがここでは生物としておく。生物というのは仮称である。

 不思議な生態とは死ぬと消えてしまう事である。死んだ場所には小さい石が残されるが有用性は確認されていない。しかし、何らかの意味は有るものと推測する。



3.1.1 迷路型に現れる生物


 迷路型に出現するのは緑色の小人である。身長は概ね120センチ前後で揃っている。

 会話や意思疎通が可能か調べたが、敵対的行動を常時とっているのと動物程度の鳴き声しか無く不可能と思われる。

 注意事項として1層に現れる緑小人(仮称とする)は、非武装である。

 特徴としては臭い。常に獣臭よりも臭いと思われる匂いを発している。野生動物の方が清潔と思われる。1層では単独か2匹程度であるが、2層だと必ず複数となる。複数に襲いかかられれば兵士一人では負ける可能性が大きい。

 敵対的行動はかみつく、及び爪でひっかくである。攻撃力は低いが不潔であり、咬まれたりひっかかれた傷口から早期に化膿してくる。

 筋力は人間比で体格相応と思われる。成人男性が1対1ならば慌てる必要は無いと思われる。

 第2層からは武装してくる。どこでその武器を入手しているのは今の段階では不明である。

 武装は棍棒が主で、少数だが錆びた剣を所持している。この攻撃で負傷した者もおり要注意である。錆びた剣はやっかいで傷口は状態が悪く傷跡が酷く残る。

 3層には達していないので予測になるが、さらに強い武器を所持するか体躯が大きくなるものと予想する。

 


3.2.1 草原型に現れる生物


 草原型には緑小人は出現しない。1層で出現するのはウサギもどきだけで2層からウサギもどき複数と小型の狼と思わしき生物が出てくる。

 ウサギもどきも小型の狼も人を見ると襲いかかってくる。出現するのはどちらも単独であるが、複数出現するウサギもどきは至近距離で次々と現れ対応する時間が足りなくなる場合がある。

 ウサギもどきは本来のウサギとは違い、額中央から小さな丸い角が生えている。角は生け捕りにして切ってみたが鹿の角と同じで牛の角のように血管は無い。意外に瞬発力と攻撃力が高く油断すると酷い痣を作る事になる。当たり所によっては骨折など重症化する可能性もある。

 ウサギもどきの防御力は弱く歩兵銃の銃床で叩けば退治できる程度である。

 小型の狼と思わしき生物は、体高50前後センチの好戦的な犬と思って良い。生物的能力はほぼ同じ大きさの犬と思われる。つまりかなりの強敵であり、こちらが無武装の場合は極めて危険である。 


 

4. 危険生物に対する対応策


 兵の単独行動は危険であり、必ず複数で行動する事が必須となる。

 危険生物の防御力は弱く、小型の狼以外は歩兵銃の必要は無い。小型の狼は火力による遠距離阻止が好ましい。

 緑小人と小型の狼は噛み付いてくるので、首部と腕部の防御を考えないと危険である。足はゲートルで十分な防御力があるが足首が弱点となるので短靴よりも長靴が望ましい。

 咬傷からの感染症が有り、消毒薬と傷薬を切らさないようにすべきである。

 現在は研究不十分であり、将来的に兵装体系の変更が必要になる可能性もある。



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5. 肉体的変化


 調査に当たった兵の内、体調に変化が有った兵が存在。

 身体能力の僅かな向上が見られた。

 検査の結果、既知の感染症や寄生虫などの病気は確認されず。


 変化が有った兵を含む調査団全員に未確認の感染症や寄生虫などの存在も考えられ、隔離の上追跡調査を行っている。 

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 以上のように現時点では1層と2層のみの調査であるために、3層以上の脅威は不明である。

 




 制作年月日

 昭和17年02月15日

 大本営による調査纏め。

 陸軍参謀部と海軍参謀部による。


 調査箇所


 陸軍

 塔

 東京  新宿御苑  400メートル級

 千葉  長沼    300メートル級

 香川  善通寺   200メートル級

 大穴

 栃木  那須    400メートル級

 新潟  新発田   400メートル級

 宮城  仙台    300メートル級

 東京  日比谷公園 300メートル級 下層埋没

 北海道 真駒内   200メートル級


 調査部隊 

 400メートル級 歩兵1個中隊

 300メートル級 歩兵2個小隊

 200メートル級 歩兵1個小隊


 400メートル級塔型と大穴型は1個中隊。300メートル級塔型と大穴型は2個小隊。200メートル級塔型と大穴型は1個小隊が調査に当たった。 

 内部空間の大きさからいたずらに人員を投入しても混乱するだけ思われ、この部隊数にした。

 異例の調査にて、通常の中隊長に加え中佐を置き、小隊長に加え少佐を置いた。 

 特に新宿御苑と日比谷公園は皇居に近く重点が置かれ、中佐が大佐に少佐が中佐になった。 

 那須も御用邸に近く力を入れた。

 


 海軍

 塔

 北海道 単冠湾新島  400メートル級 上部崩壊

 広島  呉      400メートル級 

 長崎  佐世保    400メートル級

 京都  舞鶴     300メートル級

 東京  小笠原向島  200メートル級

 大穴

 台湾  高雄     400メートル級

 鹿児島 鹿屋     300メートル級

 沖縄  徳之島    200メートル級


 調査部隊である海軍陸戦隊の編成は陸軍と同じ。

 呉・佐世保・舞鶴・鹿屋と台湾の高雄は海軍基地敷地を含んだために海軍が担当した。 



 追記

 単冠湾の塔は上部4層が崩れ、日比谷大穴は3層分ががれきに埋もれている。

 その原因は不明であるが、違いが無いかと調査に含めた。

 1層2層では有意な違いが無かった。



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