出会い
驚嘆が息とともに飲まれ、残ったのは唖然だった。
「ス、タンド……?」
尻もちをついたまま、仮和明が見上げたのは白い長そでのジャージに手を突っ込んだままの女子が怜悧に立ち尽くす姿だった。まだ四月だというのに同じく白いジャージ地のショート丈を穿いている彼女の横に守護霊のように浮かび上がる容姿があった。今まさにそれによって転倒を抑えられたわけだ。しかし、それは守護霊のイメージが喚起する人の似姿ではなかった。四本の腕はそれぞれ、ロボットと見間違えるきわめて細い爪のような四本指の腕、先端がナイフなっている腕、ハサミになっている腕、五指の腕、それらの両腕を担う体幹には包帯がミイラのごとく巻かれており、頭部には聴診器らしきものをヘッドバンドのように装着していて、目はカメラのようであった。
「仮和君、あれはね」
彼に寄り添った清瀬阿弥が説明をしようとすると、
「あながち間違いじゃないんだよね、それ。開発者の一人が『ジョジョ』のアニメ見て着想を得たらしいから。スタンドじゃなくて、ここではアナムネね。アナムネーシス、想起っていう意味。ここ向宇市は、貴廂の天蓋のおかげでAR空間都市なのよ。アナムネはね、夢の顕現なんだよ」
アナムネと呼んだ守護霊と見間違えたものを消して、畝摘文はあっけらかんとして答えた。
「『ジョジョ』ではスタンドを精神のエネルギーと言っていただろ、それは分かるようで分かりにくい。やあ、仮和明君。ようこそ夢叶う都市・向宇市へ。私は政福氏。アナムネの研究者の一人だよ」