表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/15

冒険者もとい、ダンジョン管理者

 仲間が増えてしまった。しかも魔物。

 最初の仲間は支援魔法師などと思っていた。 

 これじゃまるでボクは…魔物使いだ…

 混合(キメラ)、これは魔物になれるのか?それとも生み出すものなのか?


 ふと思った、

 やはりトトノはガイコツ達と同種なのだろうか。

 魔物の歴史はややこしい。

 この星が生まれた時は原始スライムしかいなかったという。

 神様が手を加えたことで、多くの魔物に変化していった。そんなことをお父さんが教えてくれた。

 もしやこのトロル達も、混合(キメラ)することで…

 いやいやダメダメ一度息の根を止めなくてはならない。


 朽ちた家屋に腰掛けていると、

 ムギチャがこちらにやってくる。


 「あの、カシラ、そろそろ私たちがいた場所に帰りませんか?」


 トロル達の言葉もだいぶはっきりわかるようになってきた。

 それはそうと、村を離れるのは少し気が引ける提案だ。

 結局ボクのお母さん達もどこにいったかわからずじまいだし。


 ムギチャにはそれが伝わっていたみたいだった。

 

「大丈夫。私たちの拠点、よく冒険者くる。そこで情報集めたらいい」


 少し悩む。

 確かにここにいるよりもまずは情報を集めたい。それには街に行く必要がある。けど彼らを連れて街には行けない。

 それなら、彼らのお言葉に甘えた方が良さそうだ。

 ちょっと早いけど、13歳ヘルメス、街を出て

 冒険者デビューします!


(「私も冒険者デビュー!」)

(「ふが!」)


 

 歩いてる間にトロル達はいろんなことを教えてくれた。

 ボクは田舎者だから都会のマナーやルールなどに疎かった。

 彼らは冒険者と関わることが多かったらしく、世間話や近くの街の噂話までも話してくれた。

 

 「何もしらねぇんですね、カシラ」


 都会には酒場があって、そこは飲食兼仲間集めの場になっているということ、禁止魔法があること、嫌われている人種がいないこと、ドラゴン討伐が流行っていること。色々教えてくれた。


 歩いている間に何人かの冒険者とすれ違った気がするが、あちらからすれば移動するトロル集団。

 全く関わろうとしてこなかった。

 ちっこいボクはトロルで隠れてしまい認識すらされていないだろう。

 ボクも危険度Cの集団とこんなに話ができるとは思ってもみなかった。

 真面目に考えると恐ろしさが増していくので、あまり深いことは気にしないようにする。

 

 「他の種族には手を出さないんですか??」

 「私たちにとって強いものがカシラです。前のカシラが他の種族だったこともあります。あまり多くはありませんが。」


 人間のボクを嫌がらないのでつい聞いてしまった。

 いくら田舎だとはいえ魔物の世界は弱肉強食。

 それに従うのが世の理なのだろう。

 トロルより強い魔物がいることを改めて感じた。

 ボクの緩んだ気が引き締まった。

 


 



 「ココです」

 「ココって、ココのこと?」


 ムギチャは洞穴を指さしている。

 明らかにお父さんから聞いたことのある

 「ダンジョン」の特徴にそっくりだ。

 

「ここってダンジョンじゃなくて?」

「そんな所です。ごゆっくりしてください」


 ちょっと待って!

 もっと村っぽいものを想像していた。

 冒険者と関わりがあるって、その()()()ここに来て狩られた冒険者のことだったのか!!

 ムギチャが魔物の群れにダンジョンはつきものだと横で説明している。

 

 「中にも私達の群れがおります」


 ムギチャが胸ドラムを始めた。

 ダンジョンからわらわらとオオカミやらカラスやらが出てくる。その数およそ100を超える。

 

 「カシラ! 私たちこそ、トロル・オブ・デスとそこに従う魔物達です。そしておまえたち! ここにいるのは、新たなカシラ、人間族のヘルメス様だ!」


 その瞬間、各々の魔物が雄叫びを上げている。

 冒険者デビュー、とはいえ1日でこの数の魔物と出くわすとは思わなかった。しかも味方として。

 トロルのカシラを倒したばっかりにボクは魔物の群れを率いるカシラになってしまった。

 これが後々、めんどうなことに繋がるとも知らずに。


 


 群れ、そしてダンジョンの主となってしまったことで管理をしなくてはいけなくなってしまった。

 配置や施設管理の中枢部隊。

 食料収集の狩猟部隊。

 新たな魔物のスカウト部隊。

 備蓄庫や保管庫の生活部隊。

 ダンジョン改造のための工事部隊。

 そしてダンジョンの守備部隊。


(「魔物も群れになるとこんなに文化的な社会を築くものなのね。私が知ってるファンタジーとはちょっと違うみたい」)


 冒険者になったはずのボクは施設管理を行っていた。

 ムギチャから手取り足取り教えてもらう。

 魔物達がカシラをやりたがらない真意を知った。


 ……

 

「街!!! ボク街に行く!!!」


 ボク冒険者!! やりたいことが違う!! 

 なぜボクは洞穴の中で魔物を管理しようとしているんだ。

 冒険者希望のボクからしてみれば自由を奪われたに等しい。

 人に会いたい。

 無理矢理にでも街へ行ってやる!

 徹底的に争うつもりでいたのだが、


「カシラがいなくなったら誰がここを管理するんですか?!」


 ムギチャの重圧が怖くて首を縦に振ってしまう。

 ボクにガンを飛ばしてるけど、

 あのボク、一応カシラだよね。

 縮こまっていると

 近くで聞いていたトトノが走ってきた。


「トトノがやるから大丈夫!」


 トトノ…頼もしい…こんなちっちゃいのに…

 魔物のことは魔物に任せた方がいい!


「そうだよね! 魔物は魔物! ボクはヒト! トトノお願いします!!」

「はぁ、わかりました。人の街に偵察に行くということならば、私たちトロルがお供します」


 ついてくるの?

 正直その間に逃げ出そうと思ったのに…

 こんなデカい奴らについてこられたら入国できない。

 

「君たちきたら人間みんなビビっちゃうよ!! このダンジョンをもっと良くするために人間から情報集めないと!!」

「それもそうですね。まだまだダンジョンについて教えることもたくさんありますし」

「ボクは1人で大丈夫! (レイナもいるし)」

「わかりました。キケルの街なら近くに森もありますし、そちらまでお供しましょう」


 結局ついてくるのかよ!

 街に行けるなら、それで手を打つしかない。

 

「今すぐ行こう!トトノ!お願いね!!」

「トトノに任せて!」


 うーーーん!

 いよいよ街にいける! どんな冒険者がいるのかな!

 どんなスキルを持った人がいるのだろうか。

 どんな魔法を持つ人がいるのだろうか。

 どんな武器が…

 考えるほどにワクワクする!

 まずは無事に街まで着かなくては!

 周りを見てそんな心配はすぐに消える。

 なんせ緑色の巨大5体を侍らせているのだから。

 ボクは街へと向かって歩き出した。



【ヘルメス・アドレア】


性別 男

年齢 15歳

職業 ダンジョン管理トロル・オブ・デス

スキル 混合

 内訳 レイナ、トロル、スライム


仲間

 内訳 トロル5体、クロカラスとクロウルフ多数





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ