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村の崩壊、そして探し物。

 こんにちは、ボクの名前はヘルメス。

 ボクはまだ、村には帰れません。

 ボクはいま

 トロルたちと歩いています。



 トロル達は、いまだにボクについてきている。

 ボクが人間だなんて疑う余地もないのだろう。

 間合いを維持して歩いているから頭も使えるのかな。

 そもそもトロルって、言葉とか通じるのかな…

 話しかけるくらいしてもいいよね…同種だもんね…攻撃とかしてきませんよね?


(「がんばれー」)

(「ふがー」)


 他人事みたいに…


「こ、こんにちわ〜、今日はどちらにいくんですか〜?」


 つたない。

 けど勇気を出して隣のトロルに話しかけた!

 トロルが豆鉄砲喰らったような顔をしていた。

 え、これ、もしかして警戒されてた??

 実は敵だと思ってましたパターンですか?

 周りのトロルたちがきょろきょろと顔を見合わせている。


「フ、フガ! 何言ッテルンデスカカシラ!」


 え?言葉通じた?

 ちょっと聞き取りづらいけど。フガフガ言うだけじゃないの?

 これは適当に挨拶して終わり、じゃ済まされないな…


「皆さんこれからどちらに行かれるんですか??」


 2度同じことを聞いてしまった…

 怖くて持ち前の明るさが発動できていない!


「フガ! 今カラ目的ヲ果タシニ行クノデスヨネ!」


 とりあえず意思疎通はできるみたいだ。

 目的?目的ってなんだ?


「あの〜、目的ってどんな目的なんですか?」


 これ、聞いて良いやつだよね?いいよね?

 状況がわかるまでは下手に距離を詰められない。


「忘レタ?! エステート様ノ命令ヲ遂行シニイクンデスヨ!」

「エステート? 命令? 誰それ、そんな名前聞いたことないけど?」

「フガフガフガフガッ?!」


 やっぱ人違い、いやトロル違いをしてるらしい。

 ボクのことを他のトロルと勘違いしているようだった。

 頭は使えても区別するまでじゃないのか。

 

(「よそ者ってわかったら攻撃されちゃうかもよ!!」)

 

 そうだ! レイナの言う通り。

 よそ者とわかってフルボッコには合いたくないです!

 村の近くに行くまで話を合わせよう!

 どうやらエステートというやつの命令で何か探しているらしい。

 めちゃくちゃ強そうなのに従順な奴らだな。

 おしゃべりは大好きだ、それにトロルから聞ける話なんて絶対おもしろいに決まってる。

 もうちょっと話を続けてみよう。


 ボクはトロルからエステートのことや目的について質問を続けた。

 トロルが言うには

 エステートはこの地域の魔物のボスだということ。

 最近おかしな魔力が出現したと言うこと。

 その原因の調査をしろと命令が出されたこと。

 そのため今からその原因を探りに行くこと。

 などなど、教えてくれた。

 ボクは忘れん坊ということで話を通してある。

 結構フランクに話せるようになってきた。

 もう少しでボクの村だ。





 村は荒れ果てていた。

 行きと帰りの変わりように言葉が出ない。

 ボクのお母さんは?お父さんは?村のみんなは?

 ボクはトロルの体のまま村に駆け寄る。

 焼け落ちた家屋、破壊された家屋、凍りつけの家屋。

 例外なくボクの家ものボロになっている。

 

「なんのようだ」


 殺気を出しながら出てきたのは1人の男だった。

 隣のトロルがその男に状況を説明していた。


「ワタシタチハ、ココラヘンヲ調ベニキタ、クワシクハイエナイ」


 ボクは村を亡くして頭が真っ白。

 立ちすくむことしかできない。

 ぼったちである。

 手も足もぶらんぶらん。

 家族の行方に想いを馳せる。


「それならもう用はないだろう、お前らが探してるものは燃え去った。小汚い集落にでも帰りたまえ。トロルどもよ」


 そう言って、男は手をヒラヒラさせている。

 明らかにトロルたちは相手にされていない。


(「ヘルメスくん!! しっかりして!!」)


 ボクは現状を受け入れられない。まだ動けない。

 さっきまで生きていた村が消えたのだ。

 幸か不幸か、死体はまだ1体も見ていない。

 少しの希望も感じていた。


「あの、この村にいた人たちはどこにいますか」


 オブラートに包めなかった。

 気を使うなんてできなかった。


「おまえ本当にトロルか? 我らが王、コンドルド様がこの地の者たちの調査を御命令された。

 理由は言えぬが、命令だ。この街のもの達は消えてもらった」



 消した…? ってことは殺したのか?! 

 コ、コイツ…ヒトを殺すと痛い目見ることしらないのか!


「…理由はわかりました。消した理由は聞きません。ただなんで村まで破壊した?」


「トロルのくせにしつこいなぁ、おまえは。

 探し物を他の奴らに見つけ出されてしまっては面白くないだろう?」


 探し物…?

 なんのことだ?? ボクの村にそんな貴重なものなんてないはずだ。

 トロル達の目的と同じなのか?

 ボクの村の「変わったもの」を思い返す。

 うむ、どうやらボクぐらいしか変わったものなんていない。

 それ以外はなんてことはない普通の田舎だ。

 レイナの存在は誰も知らない。

 変な汗が額を伝う。

 …そういえば、村の中にいる時は気づかなかったけど魔力って見えるもんなの?

 …まずい。

 やっと少し、この状況のめんどくささに気がついてきた。

 レイナの魔力が漏れている可能性がある…


「さがしもの? ここら辺でそんな噂聞かないですけど!」

「もっと威厳を持てよ、おまえが垂れ流してるその魔力はただの飾りのつもりか?」

「や、やはり気づいてましたか。君たちを魔力で威圧してやろうと思ってたんですよ」


 やっばい! 見栄張っちゃった!

 レイナー! 魔力引っ込めてー!!


(「どゆこと? どうすればいいかわからないよ!」)

(「フガ! とりあえず深呼吸すればいい! 心を落ち着かせるのが大事!」)

(「なにそれ! むずかし!」)


 おまえ喋れたのか。


「俺も舐められたもんだな。魔力で威圧をされずとも顔つきでわかる。ま、こいつら雑魚には無理だがな」


 横のガイコツたちを指でつっつく。

 

 「それは失敬。小手調べのつもりだった」


 煽りすぎちゃったかな…

 トロルたちも若干引いている。


「ふははは! 我に? 小手調べと? おまえも下僕にしてやってもいいんだぞ?」


 と、高らかな笑いはすぐに消える。


「して、おまえらはココに何を探しにきた」


 毅然とした態度で仁王立ちする。

 ボクも何を探しにきたかわからないのだ。

 隣のトロルはエステートからの命令だということだけを伝えた。 


「ふむ…エステートも感知していたか」


 魔力を感知できる人はそう多くないのか。


「して、おまえたちはなにするつもりだった?」

「目的果タシテエステート様ニ渡ス。断レバ、殺ス」


 ええええええ! 急に宣戦布告?!

 男とトロルを交互に見やる。

 どちらからも僅かな殺意を感じる。


「お前らが死ぬ、その可能性は考えなかったのか?」

「ソレハナイ、私タチハシナナイ!」


 早急に逃げ出したい。

 リーダーのはずのボクを置いてけぼりにしてバチバチしている。

 様子を見守ることしかできない。

 気のせいかも知れないが、後のトロルたちの鼻息が荒くなっていく。

 大きな腕をブンブン振り回す音まで聞こえるんですけど。


「あ、あの!! 探し物ってなんですか? 見つけにくいモノですか? 一緒に探すのとかどうですか?」


 そうだ、仲良くやればいいんだ。

 向こうも同じ目的だから無駄な争いは好まないはず! そうそう、こうやってみんな仲良く。


「アホかお前は。そんな生ぬるいカシラがいるとは、魔物界隈も落魄れたモノだなぁ」


 逆効果だったみたいです。

 ただその探し物、見つけられるわけにはいかない。

 多分、探し物はボク、ボクというよりレイナ。


(「いけー! やっちゃえー! そいつやっつけろー!」)

(「フガー!」)


 煽らないでくれ。

 それ以上煽られると…

 村のカタキをとりたくなるだろ!!

 冒険者になるならこの状況、逃げ出すわけにはいかない!

 ボクはトロルも倒せたのだ。


「おまえもその探し物に、殺されるって可能性は考えなかったか?」






 

ゴーレムマンと同じセリフ吐いてるの今気づいた…

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