トロルと守護天使
今日も隣の街まで魚のおつかいを頼まれた。
今日は少し回り道して行ってみようと思います。
こっちは村人がよく使ってる道なんですけど、今日は冒険者が利用する道を使ってみます。
近道ですが魔物が良くでることで有名です。
まぁ、魔物と言ってもスライムなのですが…
ただボクはお父さんみたいな強くて優しい冒険者になりたい。そして、村のみんなに慕われたい!魔力がなくてもできるところを見せてやりたい!
そう思っています。だからあえて危ない橋を渡ってみるのです。
ボクの村、結構田舎だからやることないし。
山の間の崖を抜ける。
ーーフガフガッ!!
道を塞がれた。
行く先には一体の大きなトロルが仁王立ちしている。
緑色をした大きな図体は山肌に酷似している。そんな体に腰ミノだけがぶら下がっている。
ボクは硬直してしまった。
ここら辺にこんな大型の魔物が出るなんて聞いてない!! どこの町も、近くにはスライム程度しか出ないはずなのに!
そっと後退りする。
ーーフガーーーーッ!!
ーードシンッ!!
大きな両の拳を振り下ろしてる。相当な重量なのだろう、地面にヒビが入っちゃってる…
怖いけど、ここで逃げたら冒険者にはなれない!
こんな修羅場、お父さんも乗り越えてきたはず。
レイナもいるし、雷に打たれた時と比べればこんなのちょろいもんだ!
(「わ、私も頑張るね」)
レイナの声が聞こえる。
トロルの拳を鉄の剣でいなす。
重た!!! 腕一本でこの重さ!
トロルは、こちらの実力に気づくと終わらせにかかってきた。
両腕を振りかぶる。
左右は壁。
「よけっ、避けきれないっっ!!」
剣でいなしきれない!
覚悟した。
(「ヘルメスくん! 私、魔法! やってみる!」)
「チェンジ!」
ーーパチン!
ほっぺを叩く。
「弾けなさい!!」
入れ替わったレイナはトロルの顔面目掛けて火炎を飛ばす。
ーーピカッ! ボガン!! べちゃべちゃ
トロルの頭内部が沸騰し、爆発する。
返り血がレイナを襲う。
「うっわ! きったな!!! 無理無理! チェンジー!!」
ーーパチン!
続いてヘルメスが返り血を浴びる。
「た、たおした?? トロルを…?? レイナありがとう…ボク、死ぬところだった」
自分1人では到底倒せないような大型の魔物をレイナは爆発させてしまった。
彼女はボクが思う以上に強いようだ。
少しグロテスクだから人前ではあまり使えないけど…
(「私もびっくり。まさか頭の中が爆発するなんて…」)
レイナが元いた世界では魔法は使えなかったらしい。
ボクももしかしたら…魔法を…
そういえばトロルの油って売れた気がするな。
トロルの腕を持ち上げるーーー
ーーーシュワァン…
トロルが光に包まれ、ボクの腕に吸われていく。
(「え! なに?! トロルこっち側に入ってきたんですけど!!」)
え?
どゆこと??
トロルが入ってきた??
(「フガフガ」)
確かにトロルの声が聞こえる。ボクの中から。
どういうことだ?? 今ボクたちトロルを倒したよね??
生きている?? どうして??
これってもしかして、レイナがボクに入った時と同じ状況…??
てことは、これってもしかして…
【あなたのスキル、混合が発動しました】
どこからともなく声がする。これはレイナの声ではないぞ。
【私はあなたの守護天使キメラ、各スキルを司る守護天使の1人です】
【あなたは今、初めて混合のスキルを使いました。それにより私は目覚めました】
どういうことだ??
ボクの体にはいまレイナ、トロル、それとキメラがいるってこと??
もう何が何だかわからない。
人外がすでに2匹。
ボク、もう人間じゃなくない?
ヘルメス・アドレア
性別 男
年齢 15歳
職業 冒険者
スキル キメラ
内訳 レイナ、トロル
キメラの仕組みちょっと整合性ないかなぁ、どうだろうか