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手紙

◆◇ 第六章 ◆◇


 自室に戻ったフェリシアはお気に入りの窓際で手紙を胸にあて外を見つめていた。


王族の前でお腹を鳴らしたからって不敬罪にはならないわよね?

わざわざお気に入りのお菓子を届けてくださったんですもの、普通にお見舞いよね?


あれこれ考えても仕方がない。

事実はひとつ。


震える手で封筒を開けた。


*****************************

** 愛しいフェリシアへ

**

** 具合が悪いと聞いたが大丈夫なのだろうか。

** 無理せずゆっくり休んで欲しいと思うものの、

** 君の笑顔が見られないとやはり寂しいよ。

** 昨日会ったばかりなのにね。

** 

** 好物を食べれば元気になることを期待して「ルナ」のお菓子を送るよ。

** 元気になったらまた会ってくれるかい?

** また景色がいい所に行こう、今度はウィザードと一緒にね。

**

** 楽しみに待っているよ。

**

** マティアス・リスティアル

*****************************


ホッ、取り敢えず殿下の気分を害していないようで安心したわ。


広げた手紙を膝に置きテーブルの上に飾られた花を見つめた。

殿下から頂いたお花だわ、アンナが活けてくれたのね。


フェリシアはゆっくり目を閉じ心を落ち着かせた。


一安心したけれどこれからどうすればいいの私?

ついさっきまではこのまま体調不良を続けて話し相手役が自然消滅して欲しいと願っていたのに。


手紙の内容を好意的に受け取ってノコノコ王宮へ出向いていいの?

でもどんな顔して殿下とお会いすればいいの?

お会いした時何を話せばいいの?


私には難しすぎるわ。

あまりにも経験が無さすぎるのよ。


もっと大人にならなければいけないとは理解しているのだけど。。。。

何かとても大きな物を背負ってしまった気分だわ。


ファリシアは目を開けた。

1番に目に入ってきたのはほんの数分前に見た花瓶に活けてあるお花だった。


あっ、このお花、厩舎に向かう花壇にあった水仙だわ。


「殿下。。。。」

ぽつりとつぶやいた。


もう少しだけ時間を頂こう。



〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜


 翌日、侯爵家が寄付している修道院へ行き併設されている施設にいる子供達にお菓子を差し入れた。

修道院長にゆっくりしていってくださいねと声をかけられたが、

自分が置かれている環境が知れ渡っているのではないかというマイナス思考がフェリシアの帰宅を急がせた。


「ハァ~」「フゥ~」

「お嬢様、馬車に乗った途端ため息ばかりですね。」

「ごめんなさい、アンナ。」

「私は大丈夫ですけど、御令嬢としてはよろしくありませんね。」

「不思議とため息をついている数秒だけ無の気持ちになれるのよ。」

「まぁ、そうなんですか。では、ため息は私の前だけにしてくださいませね。」


邸に戻るとラッセルが立っていた。

何やらトレーらしき物を手にしているのがハッキリわかった。


フェリシアはイヤな予感しかしなかった。。。。


「お帰りなさいませ、お嬢様」

満面の笑顔でのお出迎えに彼女の心臓はバクバクした。


「今戻ったわ。ところで手にしているは何かしら?」

「はい、お嬢様。また王宮、いえマティアス殿下からの贈り物です。」


あぁ、やっぱり。。。


「ありがとう。」

青いリボンがついた小さな箱を受け取ると急いで自室へ向かった。


そわそわしているフェリシアを見てアンナはすぐに言った。

「一息入れましょう。すぐお茶を用意しますね。」

「えぇ、お願い。できればその後も私と一緒にいて欲しいのだけど。」

「はい、承知しました。」


しばらくするとアンナがお茶の用意をして戻ってきた。

「ねぇ、アンナ、殿下からの箱って何だと思う?」

「そうですねぇ、小さいから宝石でしょうか」

テーブルに茶器の用意をしながらサラリと答えた。


「えっ? 宝石? ま、まさか」

「あら?どうしてですか? 侯爵家のお嬢様ですもの宝石の贈り物くらいいただくでしょう。」

「そんなぁ」

当たり前のように言ってしまうアンナが怖いようでもあり頼もしいようでもあった。


「お嬢様、そんなに怯えないでくださいませ。せっかくいただいたのですから開封してはいかがですか?」


手紙の時と同様フェリシアは震える手でリボンを紐解いた。

箱を開けると中には髪飾りが入っていた。


「まぁ、素敵!」

思わず口ずさんでしまったが、すぐにハッとしてアンナの顔を見た。

「お嬢様、これは愛ですわ。」

「ア・イ?」

「えぇ、よくご覧くださいませ。銀の髪飾りに青い宝石が散りばめられているのですよ。」

「とても綺麗よ、それがどうしたの?」


髪飾りは花をモチーフにサフィアが装飾されている。

じーっと見つめているファリシアにしびれを切らしたようにアンナは言った。


「マティアス殿下の御髪と瞳のお色じゃありませんか。」

「えー--- 本当だわ!」


昨日から自分の回りに1枚ずつ壁が作られ逃げ道をふさがれているような気がしてならなかった。

ゴールはまだ見えないけれど、すでにレールは引かれ始めたように思えた。



「あら?お嬢様、箱の底に封筒が入っていますよ。」


アンナに言われ箱をよく見るとカードらしきものが入っていた。


「読むのが怖いわ。」

「あら、何をおっしゃているんですか。愛のささやきでしょうから怖いわけありませんよ。」


花瓶の花を整えながら当たり前のように言ってのけるアンナは最強だわ。

フェリシアは改めて思った。


「そうかしら?」

平静を装いながらメッセージカードを開いた。


*************************

**  愛しいフェリシアへ

** 

**  フェリシアに似合いそうな髪飾りを見つけたので贈るよ。

**  気に入ってもらえたらいいのだけど。

**

**  マティアス

*************************


フェリシアは髪飾りを手に取るとアンナが見ていない時にそっと自分の髪に合わせてみた。

髪飾りは少し桜色がかった金髪にとてもよく映えていた。


気に入るに決まってるじゃない、こんなに素敵なんだもの。













   

 

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