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お見舞い

◆◇第五章◆◇


 帰りの馬車の中で思いっきり泣きじゃくったのに、邸に戻りアンナの顔を見たら更に泣きたくなってしまったフェリシアだった。


「不思議ね、こんなに涙を流したのにまだあふれ出るなんて。」

「お嬢様、もう全部出し切ってスッキリしましょう。」

「そうね。今日はもうお部屋にいるわ。なんだか気分もよくないし。。。」

「少しお休みになられてください。後でお茶をお持ちしますので。」


フェリシアは自室のソファに倒れこむとクッションを抱え、ボーッと1点を見つめていた。


なんであんなことになっちゃったんだろ?

別に空腹だったわけではないのにぃ。。


ハァ~。。。

静かな室内に溜息だけが響く。


しばらくするとアンナがお茶と軽食を持ってきたので少し口にした。


「これを頂いたらもう横になるわ。いっぱい寝て明日には忘れたいの。」

「お嬢様、それが一番ですわ。それと瞼の腫れはどうしましょうか?」

「このままでいいわ。たぶんまた泣きそうだし、また腫れるでしょ。明日お願いね。」


もう寝る!と言ったものの眠れるわけもなく、窓から夜空を眺めていた。

ウトウトしては目が覚めの繰り返しで結局朝を迎えてしまった。


「お嬢様、おはようございます。ご気分はどうですか?」

「アンナ、おはよう。気分は最悪よ。考え事ばかりで全然眠れなかったわ。」

「まぁ、今日もゆっくりなさった方がよさそうですね。」


夜通し泣いて腫れた目に冷たいハンカチをあてがってもらっているとシリルの声が聞こえた。


「フェリシア、入っていいかい?」

「はい、お兄様どうぞ。」


シリルは入ってくるなりフェリシアの顔見てクスッと笑った。


「僕の可愛い妹は一晩中泣いていたようだね。」

「ひどいわ。私だってまさか殿下の前でこんな恥ずかしいことが起こるなんて思わなかったもの。」

「そうだな。気持ちが落ち着くまで王宮へは行かなくていいだろう。」

「殿下と顔を合わすことなんか絶対にできないわ。」

「殿下には体調不良で少しゆっくりすると伝えておくから。」

「お兄様、ありがとう。」


今頃になって睡魔に襲われ始めたフェリシアはそのままスーッと深い眠りに入った。


~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~

 

 何時間経ったのだろう。廊下がバタバタ騒がしい。


そぉ~っと扉を開いて廊下を見渡すと執事長のラッセルがせわしく歩いているのが見えた。

と同時にほんのり甘い香りが感じられた。


お菓子の準備?

急な来客かしら?

私は関係ないしまたお部屋に引きこもりましょう。


ファリシアは部屋着に着替えて窓から外をボーッと眺めていた。


するとアンナが様子を伺いにやってきた。

「お嬢様、起きてらしたのですね。急いで客間にいらしてください。旦那様がお呼びです。」

「私にお客様なの?」


アンナはニヤッとして

「いいえ、もうお戻りになりましたよ。直接のお客様ではないのですけど。」

「ふぅ~ん、なんだろ?」


部屋に入ると確かにスィントン侯爵夫妻とラッセルがいたが、それよりも先に目に飛び込んできたのは

テーブルの上に置かれたお菓子の山だった。


フェリシアがナニコレ?と言いたげな顔でテーブルの上のお菓子を見つめていると

コホンと咳ばらいをしてからラッセルが説明し始めた。


「フェリシアお嬢様、今しがた王宮からお嬢様へお見舞い品が届きました。」

「へっ?王宮から?こんなにたくさん?」

「さようでございます。お嬢様が大好きな「ルナ」のお菓子が100個以上はあるかと。」

「・・・・」

「あと手紙と花束がございます。」

ラッセルは手紙と花束がのっているトレーを差し出した。


「フェリシア、これはどう解釈したらいいのだ?」

「お父様、私にもよくわかりませんが。。。ただ今日は体調不良ということで殿下とお会いするのをお休みしました。」

「聞いたわフェリシア。」

「はい、お母様。でもまさかお見舞いが届くなんて。。。しかもこの量。。。」


ドア近くに立っていたアンナは「ほらね、やっぱり」と言いたげにニコニコしていた。


「とにかくいただいたお菓子は邸の者全員でいただきましょう。ラッセルとアンナお願いね。」

「はい、奥様。」


ラッセルとアンナは返事をすると手際よくテーブルの上のお菓子を集めセッティングを始めた。

「このままお茶のご用意をしますね。」


「フェリシア、もう一度確認するが殿下とはどういう関係なのだ?」

「どういう関係と言われましてもお父様。。。私は殿下のお話し相手だと思っております。」

「ふぅむ。もしかしたら殿下はそのようには思ってないのではないか?」

「そうでしょうか。。」


フェリシアはテーブルに置いたままの手紙を見つめた。

何が書かれているんだろう?


沈黙の中、親子3人でお茶をしているとドアが開きシリルが現れた。


「父上、母上只今戻りました。。。ってこの異常な量のお菓子は何?」

「まぁ、シリル、今日は随分早く帰ってきたのね。」


「お兄様、実は殿下がお見舞いにお菓子を届けてくださったのです。」

「えっ?しかもこれルナのお菓子だよね? う~ん、そういうことか。。。」


「お兄様ルナのお菓子がどうかしたの?」

「フェリシアが落ち込んでいると思って今日は仕事を早く切り上げてルナに寄ったんだよ。」

「まぁ、お兄様もルナのお菓子を?」

「いや、そうしたら店内は空っぽで、店主が言うには王宮から急に店中のお菓子を全部買うって言われたらしんだ。」


「まぁ、お兄様の気持ちだけで嬉しいですわ。」

「王宮で急なお茶会でも催されるのかと思ったら我が邸に届けられていたのか。」


うふふ、殿下らしいわ。

もしかしてルーファス様にお願いしたのかしら?


「とにかくお兄様も召し上がって。」


「いくらシリルが来たからといってもはさすがにこれだけの量は食べきれないわね。そうだわ、フェリシア」

「はい?お母様。」


「明日にでも修道院におすそ分けしたらどうかしら?」

「そうですね!焼き菓子なら大丈夫でしょうから明日届けに行きますわ。」


外に出れば少しは気持ちが晴れるかもしれない。

フェリシアは前向きに考えるようにした。


そして父親のトラビス侯爵だけが不安そうな顔をして黙り込んでいた。

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