花壇・厩舎 そして。。。
◆◆第四章 前編◆◆
庭の小鳥のさえずりが遠くに聞こえてくる。
今日も天気がよさそう。でももう少しベッドでまどろみたい気分。。。。
「お嬢様~ 起きてください。いいお天気ですよ~」
アンナが起こしに来た。
「さぁさぁ、お嬢様。今日は殿下とお散歩の日ですよ。早く起きてください。」
眠い目をこすりながら身支度をし軽く朝食を取り出かける準備を始めた。
「今日もお一人で大丈夫ですか?」
「えぇ、大丈夫。いつも門までルーファス様がお迎えに来ているから。」
「承知しました。ボンネットをお忘れないように。では、行ってらっしゃいませ。」
騎士団棟側の門に着くといつものようにルーファスが待っていた。
今日は剣術練習場を通らずに騎士団棟の裏手に向かった。
そこにはマティアスが立っていた。
フェリシアを見つけると、顔がほころび急いで駆け寄ってきた。
うっ、今日の彼女は一段と可愛いな。
「フェリシア、さぁ行こう。」
2人は騎士団棟の裏手に伸びる小道を進んだ。
両脇には小さいながら花壇のように草花が植えられてた。
満開の水仙はたっぷりの日差しを浴び、黄色の花びらがキラキラ光ってまぶしいくらいだった。
「わぁ、騎士団棟の裏側ってこんな風になっているんですね。」
「厩舎の係の者が騎士達が少しでも和むようにと作ってくれたんだ。女性騎士もいるしね。」
「可愛らしくて私たち2人だけの秘密の花壇みたいですね。」
「王宮にはもっと広くて綺麗な庭園があるよ。早く君に見せたいな。」
「はい、楽しみです。」
しばらくすると馬の鳴き声や草の独特な匂いが漂ってきて厩舎に近づいてきたのがわかった。
マティアスは馬の世話をしている者たちに声をかけた。
「みんな、ご苦労。」
すると、作業をしていた者たちはピタッと動きを止め頭を下げ
1番年上の者がニコニコしながら挨拶をした。
「殿下、お久しぶりでございます。殿下がお見えになって馬たちも喜びますよ。」
言い終わり頭を上げるととチラッとフェリシアを見たが、慌てて視線をマティアスに戻した。
「厩舎に来るのは久しぶりだからな。元気だったかダン?」
マティアスはフェリシアが馬に夢中になっているのを確認してから世話係のダンの肩をチョイと引っ張り
耳打ちした。
「彼女のことはまだ公けにできないんだ。頼むよ。」
ダンはコックリ頷いてマティアスの顔を見てニッコリ笑った。
マティアスはダンを彼女に紹介すると厩舎の奥に進んだ。
「僕の馬を紹介するよ。」
「ウィザード!」
マティアスが呼ぶとどこからかヒヒィーンと鳴き声が聞こえた。
自分の主が近づいているのがわかるらしく、うれしそうに鼻を鳴らして待っている。
「よしよし」
マティアスも嬉しそうに愛馬ウィザードの体を撫でている。
殿下はこんな優しい表情もなさるのね。とっても幸せそう。
「フェリシアも撫でてみる?」
「はい!」
フェリシアは手を伸ばしそぉーっとウィザードの鼻を撫でた。
ウィザードはヒヒンと鼻を鳴らしファリシアに顔を寄せスリスリしてきた。
「ウィザードはフェリシアを気に入ったみたいだな。」
「うふふ、とっても可愛いですわ。」
続けてウィザードに向かって話しかけた。
「よしよし。いい子ね。あなたはここでの2番目のお友達よ。」
えっ、2番?ということは1番目は。。。マティアスは淡い期待を抱き聞いてみた。
「ウィザードは2番目か。1番目は誰なんだい?」
「エレンです。」
即答されてしまったマティアスは頭を殴られたようなダメージを受けしばらく声を出せなかった。
笑顔で「もちろん殿下です!」って言ってくれるとばかり思っていたのにぃ。。。
「そ、そうか。。。で、エレンとは誰なんだ?」
「剣術クラスの生徒さんです。」
魂が抜けたような顔をしているマティアスを見てフェリシアはトドメを刺した。
「殿下、ご気分でも悪くなりましたか?顔色がさえない様ですが。。。」
「い、いや大丈夫だ。そうか剣術クラスの生徒と友達になったのか。。。よかったよかった。。。」
ん?本当は1番は自分だと言って欲しかったのかしら?
「本当は殿下が1番なのですが、私にとって殿下はお友達ではありませんので。」
マティアスは絶句した。彼女にとって自分は一体何なんだ。。。。
「私にとって殿下はただのお友達ではなく特別な人なんです!」
えっ?特別な人?
「ヤッター!」
つい声を出してしまった。
嬉しさのあまり天を仰ぐマティアスに降りそそく春の日差しはまるで後光のようで、
美しい天使が降臨してきたかのようだった。
フェリシアはキョトンとした。
だって殿下は王族だもの、特別な人に決まってるでショ。