殿下頑張る
少しは異性に慣れてきた2人ですが、まだまだ先は遠い予感
◆◆第三章・前編◆◆
翌日
「アンナ、今日は1人で大丈夫よ。」
「いいえ、心配ですのでしばらくはアンナもご一緒いたします。」
と、アンナも馬車に乗り込んで来た。
「アンナもお父様みたいに子供扱いしてー。」
「なんとでもおっしゃってくださいな。」
馬車内でブツブツ言い合っているうちに騎士団棟に到着した。
今日はルーファスが出迎えてくれた。
「ルーファス様、ごきげんよう。」
「フェリシア様、今日もお越しいただきありがとうございます。 殿下がお待ちかねです。」
ルーファスの後について行きながら、今日は何をやらされるのかしら?と少しだけ不安になったフェリシアは確認してみた。
「ルーファス様、今日は何をすればいいのでしょうか?」
「はい、取り敢えず剣術練習場に来て欲しいとのことです。」
うわっ、また素振りををやるのかな? 昨日みたいに醜態をさらすことになったらどうしよう。。。。
彼女の顔がサァーっと青ざめていくのに気付いたルーファスは声を掛けてきた。
「ご気分でも悪くなりましたか? 顔色がさえないようですが。」
「実は昨日素振りで恥ずかしいことになってしまいまして。。。」
「ご安心下さい。今日は大丈夫ですよ。」
練習場に近づくと昨日の少女がフェリシアに気がつき走って来た。
「こんにちは、お姉さん。 今日はもう来ないのかと思ったわ。」
「心配してくれたのね。ありがとう。」
「あれ?今日はドレスなのね。」
「ふふ、そうよ。そういえばお名前を聞いてなかったわね。」
「エレンです。」
「素敵なお名前ね。私はフェリシアよ。小さなお友達ができて嬉しいわ。」
2人の様子を見ていたルーファスは会釈をしてその場から去って行った。
エレンも稽古が始めるからと生徒達集まっている所へ走って行ってしまった。
あら、いやだわ。1人になってしまったじゃない。。。。
急に不安になってきた時、聞き覚えのある声で呼ばれた。
「フェリシア、今日も来てくれてありがとう。」
この声は殿下ね。
振り返ると最高の笑顔のマティアスが立っていた。
・・・・なんだろ?今日の殿下はキラキラしているわ。
少しだけ見とれてしまったフェリシアは慌てて挨拶をした。
「殿下におかれましてはご機嫌麗しく。。。」
「また、昨日も言ったろ。そういうのはいいから。」
マティアスは固まっているファリシアの手を取ると見覚えのある廊下へ向かった。
・・・・この手はどうしたらいいのかしら。こういうの慣れてないから早く離して欲しいのにぃ。。。
「殿下、今日は素振りはいいのですか?」
「あぁ、昨日は悪かったね。令嬢にいきなり素振りをやらせるなんてどうかしてたよ。」
「(はいそうですね、なんて言えるわけないじゃない。)いえお気になさらずに。」
執務室に入ると昨日とは違う奥の部屋に通された。
テーブルの上にはすでに茶器が用意されており、昨日は無かったお菓子もあった。
・・・・このお部屋は昨日とは雰囲気が違うのね。室内の調度品もこのティーセットも高価なものに違いないわ。もしかしたら王族か上位貴族の騎士様専用のお部屋なのかしら。
フェリシアが目を輝かせているのをマティアスは満足そうに見つめていた。
「気に入ってくれた?」
「はい、とっても! お部屋も素敵ですし、特にこのカップ、ピンクの花びらに金の縁取りが可愛いです!」
2人がいい感じに会話を始めた頃、ルーファスがお茶をもって現れた。
「フェリシア、さぁ、お菓子も食べて」
「はい、いただきます。」
口に入れるとバターの香りがふわぁっと広がっておいしい、王室のお菓子は全然違うのね。
「殿下、とてもおいしいです!」
「ところで、フェリシアはどんなお菓子が好きなんだい?」
「お菓子はみんな好きですが、今は中央広場前のルナというお店のお菓子がお気に入りなんです。焼き菓子の中に木の実や乾燥した果物が入っっているんですよ・」
「有名なお店なの?」
「去年開店したばかりなのですが、とても人気ですぐに売り切れてしまうんですよ。」
「ふぅ~ん、そんなに人気があるのか。」
エンジンがかかってきたマティアスは次から次へと質問をしてきた。
好きな色は?
好きな食べ物は?
動物は好き?
好きな花は?
海は好き?
大好きなアイドルの全てを知りたいようにマティアスも【フェリシア何でも帳】作成に余念がなかった。
・・・・今日は質問攻めで全然会話になっていないような気がするけど、こんなので殿下のお役に立っているのかしら?
ちょっぴり心配したフェリシアだった。