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庭園パーティー 3

◆◇ 第十六章 後編 ◆◇


 一通り挨拶が済むとクロフォード侯爵一家は陛下への挨拶の為スィントン家から離れた。

ユーインは見違えるほど素敵になっていたが、やはりフェリシアは好意的にはなれなかった。


 「さぁさぁ、せっかくだから皆んなで綺麗なお花を楽しみましょう。」

母レイラが提案した。

レイラは家族四人での参加は今回が最後になると思うとこうした楽しみを思い出の一つにしたかった。


「見て、フェリシア。バラが見頃で綺麗ね。」

「本当ね、お母様。」

「ほら、フェリシア。黄色いバラよ。素敵ね。」

「お母様、こちらに可愛らしいお花があるわ。」


レイラは幼な子を相手にするようにファリシアに話しかけ彼女も嬉しそうに答えていた。

トラビスとシリルは母娘(おやこ)をニコニコ見つめながら二人の後ろについて行った。


「お父様、私喉が渇いたわ。」

「そうだな。挨拶も済んだし何か頂こうか。」


テーブルに所狭しと並べられている料理は種類も豊富でどれも美味しそうだ。

書類を運んだだけだがこれらの料理に自分がほんのわずか関わったのが嬉しかった。


う〜んいい匂い。

でも今は飲み物が先ね。

何を頂こうかなぁ〜


フェリシアがワクワクしながら陳列されている飲み物を物色していると彼女の視野に赤い物体が入ってきた。


えっ?

あの赤いドレスの方はシンシア様では?


フェリシアは飲み物を選んでいる振りをしながら彼女を目で追った。


隣にいるのはきっと宰相ね。

陛下にご挨拶かしら?


あっ! 

フェリシアは息を飲んだ。

マティアス殿下だわ。


フェリシアが引きつった顔で立っていると背後から声をかけられた。

「お嬢さん、そんな深刻な顔をで何をしてるのですか?」

ビックリして振り返るとユーインが立っていた。


「まぁ、ユーイン様、驚かせないでくださいませ。」

「アハハ。フェリシアが立ち尽くしているからどうしたのかなと思ってさ。」

「飲み物を頂きに来ただけですわ。」


ファリシアは係の者から果実水を受け取るとその場を立ち去ろうとした。

「待ってよ。」

ユーインはフェリシアの手首を掴んだ。


「きゃっ」

「あっ、ごめん。ねぇ、せっかく久しぶりに会えたのだから少し話さないか?」

「ごめんなさい。この後予定があって。。。」

「そう。。残念だな。綺麗になったフェリシアと話したかったのだけど。。。」

「またお会いできますわ。では。」


フェリシアは逃げるようにユーインから離れた。

ユーインは苦手だ。

でもお互いに大人になったのだから世間話くらい私だってできる。

だけど。。。今はとてもそんな気分じゃないわ。

赤いドレスが頭から離れない。


今日は雲ひとつない青空で庭園パーティー日和なのに私の心は土砂降りみたい。

やはりシリルお兄様の耳に入れておいた方がいいかしら。。。。

それにしてもこのモヤモヤ感は何?


フェリシアが家族の席に戻って来ると「遅かったじゃないか」と声を揃えて言われた。

シリルの隣に座ったフェリシアは彼に耳打ちした。

「お兄様、後でお話したいことがありますわ。」

「ん?いいよ。このパーティが終わったら一度政務室に行くから王太子様のお茶会が終わるまで待ってるよ。」

「そうだったわ、これからマデリンを王太子様に紹介しなくてはいけなかったんだわ。」


母レイラの情報によるとマデリンは異父弟(おとうと)エヴァンと一緒に来るとのことだった。


もし王太子様がマデリンを気に入ってくれれば程なく私と殿下との婚約も公になるだろう。

そうなればシンシア様に言いがかりをつけられることも無くなるし、きっとモヤモヤも消えるはずだわ。

今日を頑張ればまたいつもの平穏な日々になるわ!


 賑わっていた庭園パーティーも次第に人数が減ってきて何となく寂しくさえ感じてしまう。


「我々もそろそろ失礼しようか。」

トラビスが言うと

「フェリシア、王太子様に失礼の無いようにね。」

とレイラがフェリシアに言った。

「はい。お父様お母様、お気をつけて。」


「じゃあ、僕は政務室へ行こうかな。フェリシア、途中まで一緒に行こう。」

シリルは席を立ちながらフェリシアの肩に手を置いた。


フェリシアは歩きながらシリルにシンシアのことを聞いてみようと思った。

「お兄様、バートン宰相も政務室へ戻られるのですか?」

「宰相? 驚いたな。フェリシアの口から宰相の名前が出てくるなんて。」

「あら、お兄様、私はお妃教育を受けているのですよ。ちゃんと教わりましたから。」

「アハハ、そうだったな。宰相はどうかな?来ないと思うけど。」

「お兄様は宰相のお嬢様をご存知ですか?」

「あぁ、知ってるよ。シンシア嬢だろ?彼女がどうかしたのかい?」

「親しいのですか?」

「いや、何回かお会いしたことがある程度だよ。宰相は王太子妃にさせたくて仕方ないみたいだけどね。」

「本当ですか?」

「うん。でもね、本人たちがお互いにいい顔しないみたいだよ。」


ここで政務棟入口に着いてしまった。

「じゃあね、フェリシア、またあとでね。マデリンによろしく言っておいて。」

シリルはフェリシアのモヤモヤなど気にもせず手を振りながら政務棟に入ってしまった。


あーん、もっと聞きたいことあったのにぃ。

安心していいのかな?

・・・・もっと詳しく聞いてからにしましょう。

今はマデリンに集中しなくては!



時間に余裕があったのでフェリシアは騎士団棟を通り過ぎ厩舎の方に足を伸ばしてみた。


庭園パーティーが催されていたせいか普段見かけない警護担当の騎士たちが行ったり来たりしてた。

彼らはフェリシアをチラッと見ると「こんな所に令嬢が一人で何をやっているんだ?」と不思議そうな顔をして通り過ぎて行ったが、彼女はそんな視線など気にもしなかった。


ふふ、ここが一番落ち着く場所みたいだわ。


何をする訳でもなく辺りを眺めているとダンが気がついて近寄って来た。


「あら、ダン。先日はありがとうね。」

「お嬢様、お身体は大丈夫でしたか?」

「しっかり風邪を引いてしまったけど大事にはいたらなかったわ。」

「それは何よりです。」

ダンは答えながらキョロキョロしていた。

きっと殿下を気にしているのだろうと察したフェリシアは先に説明した。

「私一人よ。ちょっと時間があったから寄ってみただけなの。」

「左様でございますか。あのぅ、大変失礼ですがお嬢様は。。。」

「あー、そうね。ジョシュア殿下の遊び相手よ。それと、私はフェリシアよ。名前で呼んでダン。じゃあね。」


長居は無用とフェリシアはダンに手を振りマティアスを探しに戻った。

騎士団棟の近くまで来るとルーファスが誰かを探している様子だった。


もしかして私を探しているのかしら?


フェリシアはそーっと近づいて驚かそうとしたが、さすが騎士である彼はすぐに人の気配に気づいて振り返った。

ルーファスはあまりにも早く振り返ったので抜き足差し足のポーズから元の体制に戻せない情けないフェリシアの姿を目撃することになってしまった。


「フェリシア様!な、何をしているのですか?」

「あっ、えっと、ルーファス様を驚かそうと思ったのだけど、私がビックリしてしまったの。」

驚いた顔のルーファスはフェリシアの言い訳を聞いて目尻を下げたかと思うと手で口元を隠しながらクスクス笑った。

「殿下がお持ちですよ。さぁ、行きましょう。」


騎士団棟入口に行くとタイミングよくマティアスが棟内から出て来た。


「フェリシア!」

二人に気づいたマティアスは手を振った。

その姿を見たフェリシアはシンシアとのことを思い出したまらない気持ちになった。

本当はすぐにでも走って行って抱きつき甘えたい気分だった。


「殿下お待たせして申し訳ございません。少し時間があったので厩舎まで散歩をしていました。」

優しい眼差しでフェリシアを見つめていたマティアスは手を伸ばした。

「さぁ、行こうか。馬車が着く頃だよ。」


あまり目立ちたくないというマデリンの希望で騎士団棟側の門で迎えることにした。

「兄上とマデリン嬢、上手くいくといいね。」

「えぇ。」

ぎこちないフェリシアの返事に違和感を持ったマティアスは歩きながら彼女の横顔を見た。

フェリシアはマティアスの隣にいるとシンシアのことが気になって胸が締め付けられるようだった。


しかし、そんな心配も馬車の到着で一挙に吹き飛んだ。



馬車到着の知らせを受け門まで急いだ。

扉が開いたがマデリンらしき令嬢は現れず謎の女性が降りて来た。


先に降りて来た人は侍女かしら?

でも侍女にしては飾り過ぎじゃない?


その着飾った女性はニコニコしながら近づいて来るではないか。


「誰?」


フェリシアは不安を感じずにはいられなかった。


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