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庭園パーティー 2

◆◇ 第十六章 中編 ◆◇


 スィントン侯爵家の馬車は王宮へ向かっていた。

家族四人で庭園パーティーに参加するのは今年で最後になると思うと父親のトラビスは複雑な思いだった。


 王宮に着くと咲き乱れた薔薇でいっぱいの庭園に案内された。

すでにたくさんの招待客であふれていた。


「先に陛下にご挨拶に行こう。」

トラビスの後について行った。


招待客リストを確認したからわかっていたけど実際一箇所に集まると圧巻だわ。

自分もそうだけど貴族って大変ね。

おしゃれして社交して。。。私、できるかしら。。。


「陛下、妃殿下にご挨拶申し上げます。本日はお招きいただき誠にありがとうございます。」

トラビスにならい家族全員で挨拶をした。

「おぉ、スィントン侯爵、よく来てくれた。今日は家族で楽しんでくれ。フェリシアもね。」


フェリシアが顔を上げると王妃が微笑みかけてくれた。

その後ろからマティアスが手招きしているのが見えた。

「お父様、お母様、殿下が呼んでいるのでお話ししてから行きますね。」

フェリシアはそう告げるとマティアスの元へ急いだ。


「フェリシア、こっち。」

マティアスが手振って待っていた。

「殿下、お待たせいたしました。」

「イヤ、たいした用はないのだけど、今日は王族として色々あるから一緒にいられないからね。」

残念そうに話すマティアスにフェリシアはにっこり微笑んだ。

「はい、心得ております。マデリンが到着しましたらお知らせいたしますね。」

「あぁ、そうだったね。」

フェリシアは何となくモジモジしているマティアスを見て何か他のことを言いたいのでは?と思った。

「殿下?」

「うん?その、今日はとても素敵だよ。着飾ったフェリシアを近くで見れて嬉しいよ。」

「この青いドレスは殿下の瞳の色に合わせたんです!」

「やっぱりそうか!すごく嬉しいよ。実は俺もこっそりフェリシアの瞳の色に合わせたんだ。」

マティアスは上着の袖をめくりカフスを見せた。

カフスはキラキラ輝くエメラルドが装飾されておりそれはフェリシアの瞳の色に間違いなかった。


 マティアスと別れたフェリシアは家族の元へ急いだ。

庭園パーティーは家族で参加することが多いので庭園内は華やかな装いの人でいっぱいだった。


あれ?お父様達どこにいるのかしら?

噴水の方かしら?


不審者のようにキョロキョロしながら歩いていると背後から女性の声がした。


「ちょっと、そこのアナタ!」

フェリシアはキンキンした声が聞こえるがまさか自分とは思わず気にも止めずに家族を探した。


すると声はもっと近い所から聞こえた。

「ちょっと、お待ちになって!」


もう、王宮でこんな声を出すなんて非常識な令嬢だこと。

誰が誰に声を荒げているのかしら?


フェリシアは興味本意で振り返るとギョッとした。

真後ろに赤いドレスを着た令嬢が取り巻き二人を従え仁王立ちしていた。


え?まさか私だったの?


「わ、私のことでしょうか?」

「そうよ。あなたあまりお見かけしないお顔だけど?」

「あ、はい。まだ社交界には出ておりませんで。。」


困った。。一体この方はどなたなのかしら?


「あら、デビューもしていないのにマティアス殿下とはどういう関係なのかしら?」

「えっ?・・・・・」

「先程マティアス殿下と随分と馴れ馴れしくお話しなさってたようですけど?」


あぁ、さっき殿下と一緒にいた所を見られたのね。


フェリシアがどう答えたらいいものか考えていると、背後にいた子分らしき令嬢が口を挟んできた。

「殿下と親しくお話しできるのはこのシンシア様だけですからね!」

「よく覚えておいた方がよくてよ!」


なるほど、この赤いドレスの親分令嬢はシンシアというのね。


子分の言葉に気をよくしたシンシアは更に難癖をつけてきた。

「まだデビューしていないとはいえ殿下に失礼な態度は取っていないでしょうね?」

「も、もちろんです。」


あぁ、早くこの緊急事態から抜け出したいわ!


「ちょっと、そこのお嬢様方! ()って(たか)って弱い者いじめなどしてお見苦しいですわよ。」


絶妙なタイミングで救世主が現れた。


「あっ、ベネット侯爵夫人!」

三人は驚いて慌てて挨拶をした。

それを見たフェリシアも続いて頭を下げた。


あぁ、助かった。

でもこの方は公爵夫人なのね、失礼のないようにしなくては。


ベネット公爵夫人のリサはチラッとフェリシアを見てから三人に問いかけた。

「貴方たち、このようなパーティーの席で何をしているのですか!」

「マティアス殿下に失礼な態度をとっていたので注意をしていただけなんです。。。あっ、あの、急用を思い出しましたので私たちこれで失礼いたします。」


バツが悪くなったシンシアと取り巻き二人は苦しい言い訳をして逃げるように立ち去って行った。

三人が見えなくなったのを確認するとフェリシアは改めてリサに挨拶をした。


「公爵夫人とは気づかず大変失礼いたしました。私、スィントン侯爵家が次女フェリシア・スィントンと申します。この度はお助けいただきありがとうございます。」


リサはやっぱりと思った。

もしかして?と思ったけど、やはりこのご令嬢がマティアス殿下の思い人だったのね。


「楽しいパーティーでいきなり知らない人に言われて驚いたでしょう?」

「は、はい。初めてのことでしたから。。」


リサは夫のベネット公爵の所に戻ろうとしてた途中で偶然四人の会話を耳にした。

最初はよくある令嬢たちの嫌味の言い合いだと思っていたが「マティアス」の名前が聞こえたので様子を伺っていたのだった。


「彼女はバートン宰相のご息女なの。彼女は以前からマティアス殿下に熱を上げているのよ。」

「そ、そうなのですね。」

「でも貴方は気丈に振る舞っていれば大丈夫よ。殿下は貴方の味方だから。」

「はい。気をつけます。お気遣いありがとうございます。」


フェリシアはお礼と共に再度お辞儀をするとリサは微笑んでから去って行った。

「フフ、また近いうちにお会いするかもしれませんわね。では。」


頭を下げたままフェリシアは考えていた。


シンシア様が積極的だから殿下は女性が苦手だったのかしら?

えっ、待って。

シンシア様はバートン宰相のお嬢様。。。ということは。。。

もし殿下と私の関係を知ってしまったらシリルお兄様の立場が悪くなってしまうわ。


フェリシアはゆっくり頭を上げリサを見送った。


アレ?

そもそも公爵夫人はなぜ私にあのようなことを話されたのかしら?

殿下は私の味方だなんて。。

もしかして殿下と私の関係にお気づきなのかしら?

まさか。。。ね。

もしかしたらジョシュア殿下のお側にいることをご存知なのかもしれないわ。

とにかく皆んなの所に行かないと!


フェリシアはキョロキョロしながら庭園内を歩き回った。

いつもはさすが王宮の庭園は広くて素敵!と思っていたが今回ばかりはこの広さが忌々しかった。

それに加えこの招待客の人数。


もうー、お兄様ったらどこにいるの?


半べそ状態のフェリシアがウロウロしていると手を振っている男性を見つけた。

「おーい、フェリシアー」

紛れもなくシリルだった。


「お兄様、どこにいたんですか!遠くに行きすぎですわ!」

「あはは、ごめんごめん。」

シリルはフェリシアの手首を掴むとグイグイ引っ張って行こうとした。


「今ね、クロフォード侯爵とお会いしたんだ。家族ぐるみでお付き合いしてただろ? フェリシアに会いたいって。」

「イタタ。覚えているわ。ユーインにはよく泣かされたもの。」


クロフォード侯爵家とはフェリシアが幼い頃父トラビスの仕事関係で付き合いがあり、スィントン邸にも何度か遊びに来たことがあった。

ユーインはクロフォード家の嫡男であり子供の頃はよくフェリシアにちょっかいを出し泣かしていた。


「侯爵お待たせしました。フェリシアを見つけて来ました!」

シリルはまるで宝箱でも見つけたかのように言った。


小父(おじ)様、小母(おば)様、お久ぶりでございます。フェリシアでござます。」

「おぉ、こんなにお綺麗になって。トラビス殿も自慢でしょうな。」


ファリシアが苦手なユーインもいた。

ユーインは幼ない頃の面影は僅かで今は見目麗しい青年になっていた。


「ユーイン様、ご無沙汰しております。」

フェリシアが挨拶をするとユーインはハッとした。

「フェリシア嬢、お久しぶりです。」


ユーインは一言話すとフェリシアのことを何か言いたそうにじっと見つめていた。



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