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初デート 3

◆◇ 第十五章 後編 ◆◇


 厩舎に着くとダンがオロオロしながら待っていた。

「殿下、お嬢様、心配しました。ご無事で何よりです。」


「ダンが言っていた通りになったな。」

「すぐ王宮にお戻りでしょうか?」

「いや、騎士団棟に行く。ダスティンを借りるよ。」

「はい。」


ダスティンは馬から降りるとダンに馬を預けすぐルーファスの後ろに跨った(またがった)

「ダスティン、我々は騎士団棟に行く。悪いが着いたら2頭を厩舎へ戻して欲しい。」

ルーファスは馬を操りながらダスティンに指示をした。

「はい、承知いたしました。」



「さぁ、フェリシア着いたよ」

騎士団棟に帰るとマティアスはウィザードからフェリシアを降ろしながら、ホッと一安心したのと同時に

あぁ、これでもう赤ん坊抱っこができなくなるなぁとちょっとだけ残念に思った。


フェリシアは歩こうとしたが濡れたドレスは彼女の体力まで奪ってしまい、2、3歩進むとよろけてしまいマティアスにもたれかかってしまった。


「フェリシア、大丈夫か? こんなに冷たくなって悪かった。」

「殿下、どうか謝らないでください。それに私こそもたれてかかってしまい申し訳ありません。」


マティアスは待ってましたとばかりフェリシアをお姫様抱っこをして棟内に入った。

「気にするな。俺としてはフェリシアに触れられるから嬉しいよ。」

そう言うとフェリシアの顔をじっと見つめていた。

「濡れ髪のフェリシアも可愛いな。」

「殿下、こんな状況で刺激が強過ぎます。」


甘い囁き(ささやき)に慣れないフェリシアはまたもや顔がほてるのを感じた。

顔が熱いのは雨に濡れて微熱があるからよ。

そう、風邪のせい。。。。



執務室でロイドが待っていた。

「殿下、お着替えをお持ちしました。」

「あぁ、ありがとう。彼女を浴室に案内したら大浴場に行くよ。」


マティアスはフェリシアを幹部専用の浴室に連れて行った。

「汗をかくまで温まるんだぞ。」

「あ、あの、湯浴みは。。。乾かせば大丈夫です。」


今湯浴みできるのは本当にありがたいのだけれど。。

でも、困ったわ。。。


「何故?風邪を引いてしまうよ。」

「でも。。。」

「大丈夫、湯浴み中は誰も入らないように扉の前に人を立たせておくから安心して。」

「お心遣いありがとうございます。でも、違うのです。」

「違う?」


フェリシアはキョロキョロ周りを確認してからマティアスの耳に手を添えてささやいた。

「あのぅ、申し上げにくいのですがコルセットが。。。」


うっ、恥ずかしいっ。

久しぶりに殿下の前で羞恥心という言葉を思い出したわ。


マティアスは「あっ!」という顔して一瞬うつむいたが、すぐロイドを呼び寄せた。

「ロイド、フェリシアの事情を周知している侍女を呼んでくれ。」

「殿下、大丈夫です。私がここに来る前に王妃様に事情を連絡しましたら侍女をよこすとのことでした。」


フェリシアの耳にも彼らの会話入ってきた。


さすが王宮に仕えている人達は連携が上手く取れていてすごいのね。

でも、私の為にこんなに。。。感謝と同時に申し訳ない気持ちでいっぱいだわ。


フェリシアはマティアスの袖をツンツンと引っ張った。

「ん?」

マティアスが振り返ったのでまた耳元でささやいた。

「皆さんにご迷惑をお掛けして申し訳ありません。」

「そんなこと気にしなくていいからね。フェリシアは俺の大事な婚約者なんだから。」


二人がヒソヒソ話していると王宮から侍女がやって来た。

「失礼致します。王妃様のご指示により参りました。」

王妃とのお茶会の時にフェリシアを呼びに来た侍女だった。


「あーこっちこっち。」

マティアスは手招きをした。

「じゃあ彼女のこと頼むね。」

フェリシアと侍女を浴室に押し込むとドアをバタンと閉めロイドに追加の指示をした。



「フェリシア様、すぐ準備致しますね。」

「こんなことになってごめんなさい。」

「いいえ、とんでもございません。」

侍女は続けた。

「こうして将来の妃殿下のお世話ができるのも王妃様が私を信頼してくれているからこそと自負しておりますので光栄なんですよ。」

「そうなのね、ありがとう。」


侍女は笑顔で答えながら手だけはテキパキと動かしていた。

「フェリシア様、御髪のお手入れは終わりましたので後はゆっくり温まってくださいませね。」

「えぇ、そうさせてもらうわ。」

「お召し物なんですが王宮で預かりお手入れしておきますので。」

「そんな。」

「あとお着替えなのですがフェリシア様に合うのがございませんでしたので取り急ぎお仕着せをお持ちしました。申し訳ございません。」

「全然気にならないわよ。もともと濡れたまま帰るつもりだったからむしろありがたいくらいよ。」


侍女は一礼すると浴室から退出した。


「ふぅ〜、気持ちいい〜」

湯船に浸かる(つかる)とつい声が漏れてしまった。

青白かった顔は血色がよくなり紫色になっていた唇も赤みをおびてきた。


風邪を引かないようによく温まらないとね。

でも、なんだか変な気分。

身体は温まって来ているのに首の後ろがゾクゾクするわ。

やっぱり風邪引いちゃうのかな。


着替え終えたフェリシアが浴室から出てくるとマティアスが待っていた。

「フェリシア、しっかり温まったか?」

「はい。お気遣いありがとうございました。」


マティアスはフェリシアを上から下まで見ると急にモゴモゴし出した。


「フェリシアはそのような服も似合うのだな。可愛いぞ。」


湯上がりで紅潮したフェリシアの顔はますます赤くなった。


もう、また。殿下ったら。。。

こう何回も続けられると私の心臓も持たないわ。。


侍女に入れてもらったお茶をソファで飲みながら一休みをしていると扉を叩く音がした。


「失礼致します。シリル スィントンでございます。」


あっ、お兄様だわ。

マティアスはフェリシアの顔が一瞬でほころんだのを見逃さなかった。


シリルは入室するとマティアスに挨拶をしフェリシアの側に来た。

「お兄様、どうしてここへ?」

「殿下が心配して連絡をくれたんだ。具合悪くなってないかい?」


シリルは両手でフェリシアの顔を包み込み顔をじぃーっと覗き込んだ。

すると今度は手のひらで前髪を上げると自分のおでこをフェリシアのおでこにくっつけた。


「う〜ん、微熱がありそうだね。」

「大丈夫ですわ。邸に戻ったら早く休みますから。」


シリルは優しく包み込むような笑顔でフェリシアの頭を2回ポンポンとした。

それは「いい子にするんだよ」と言っているようだった。


シリルのこの一連の行動を瞬きもせず見ていたマティアスは衝撃を受けていた。


な、何なんだ!

まるで恋人同士がいちゃついてるようではないか!

しかもこのモヤモヤ感は何だ?

落ち着けマティアス。二人は歳の離れた兄妹(きょうだい)だ。

第一初めてフェリシアを見た時も二人は抱き合っていたじゃないか。


固まったまま仁王立ちしているマティアスを見ていたルーファスはすぐに察し笑いをこらえていた。


「今日はお疲れでしょうからそろそろ馬車の準備をしましょう。」

ルーファスは侍女に目で合図し、マティアスの肩に手をあてた。


フェリシアとシリルはマティアスの気持ちをよそに仲良く帰路についた。

「フェリシア身体は大丈夫? やっぱりちょっと熱っぽいな。」

「ちょっとだるい感じするの。今晩熱が出そう。」

「大事なフェリシアをこんなことして。明日殿下に注意しようか。」

「お兄様、やめてください。ほら、おかげでこうして久しぶりに二人で馬車に乗れたじゃないですか。」

「そうだね。」

シリルはフェリシアの髪をそっと撫でた。


スィントン邸に戻るとアンナが玄関ホールで待っていた。

「お嬢様〜王宮から先触れが来た時は驚きましたよ。」

「アンナ、フェリシアを頼むよ。微熱があるっぽいから。」

「はい、シリル様。承知いたしました。さぁ、お嬢様お部屋に参りましょう。」




一方、騎士団棟執務室の二人は向かい合って座っていた。

マティアスは釈然としない様子で、ルーファスはニヤニヤしている。


「婚約者の兄上にヤキモチを焼くなんて、器の小さい王子ですね。」

「いや、ヤキモチなんかじゃない!ルーファスも見ただろ?」

「何をです?」

「おでことおでこを合わせてたんだぞ!」

「あぁ、よく母親が子供にやるやつですよ。」

「母親ならな。シリルは男だぞ。」

「年が離れているのでしょ?きっと父性に似たようなものですよ。殿下だってジョシュア様が王女様だったら溺愛しますよ。」

「ルーファス、決めたよ。次の目標はフェリシアの頭ポンポンだ。(おでこゴッチンは目標が高過ぎるしな)」


その後王宮では第三王子が令嬢用の部屋着を依頼したらしいと一部の使用人たちの間で噂になったとかならなかったとか。



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