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初デート 1

◆◇ 第十五章 前編 ◆◇


 「ジョシュア殿下、今日は庭園パーティーの件でマティアス殿下に相談がありますのでこれで失礼いたしますね。」

アーサーとマデリンの件を伝えるのだから嘘ではない。

が、本当はマティアスが「全然二人きりで会えないじゃないか」とこぼすので時間を作ったのだった。


「相談って本当?」

ジョシュアの目がキラリと光った。

この目は完全に疑っている目だ。


「本当ですわ。ふふ、大人の相談があるのですよ。」

「えー、そんな事言ってフェリシアって大人なの?」

「えっと、男と女の相談ですわ。」

言った本人が恥ずかしくなり赤面していると

「フェリシア無理しちゃって。顔が赤くなってるよ。」


私より口が回るなんて全くオマセさんだこと。


「殿下、この次は殿下にお付き合いいたしますから。」

フェリシアはそう言い終わるや否や部屋を出た。



騎士団棟へはもう一人で行かれる。

なるべく人目を避けて執務室へとやって来た。

この扉もすっかりお馴染みだ。


「殿下、フェリシアでございます。」

「入って入って。」

マティアスの返事の後ルーファスが扉を開けてくれた。


フェリシアはまずマデリンの庭園パーティー出席とアーサーとのお茶会も受けてくれてことを伝えた。

マティアスは大層喜び、まるでアーサーの婚約が決まったかのようだ。


「早速母上に連絡しよう。これでやっとフェリシアと堂々と手を繋いで歩けるな。」

「で、殿下。慌てないでください。パーティーの出席が決まっただけですわ。」

「ん?そうか。でも、フェリシアの親戚なら決まったも同然だろ。」


あら、殿下って意外とあわてんぼうさんなのね。


マティアスは窓越しから外を見るとフェリシアに向かって

「今日は天気もいいし、前祝いにウィザードと出かけよう。」

と言うとルーファスに目で合図をし、フェリシアの手を引きながら部屋を出た。


改めて二人で並んで歩くと恥ずかしさを否めない。

いつになったら慣れるのかしら。

しかめっ面をしているフェリシアを見てマティアスは不思議そうに言った。


「フェリシアどうしたの?ウィザードに乗りたくないの?」

「いえいえ、乗りたいですわ!」


いつもの花壇を横目に厩舎に向かうとマティアスはダンを探した。

「ダン、ウィザードを頼む。」

「はい、殿下。至急馬具を準備いたします。」

ダンが慌てて用意を始めた。


フェリシアは少し不安になって確認した。

「殿下、二人で乗るのですか?」

「もちろん。」


マティアスは「どうして?」という顔をしていた。


二人で乗ったら身体が密着してしまうではないですか。

と、思わず口に出そうだったが殿下の笑顔を見たフェリシアはここは黙っていた方がいいと判断した。

変なことを言って二人で意識し合ったら大変だわ。

それに一人で乗る自信はないし。

ありがたくウィザードに乗せてもらいましょう。


厩舎から少年がウィザードを引いて出て来た。

「お嬢様、私の息子でダスティンといいます。ダスティン、ご挨拶をしなさい。」

ダンに言われたダスティンは照れながらぺこりと頭を下げた。


私と同じ歳位かしら、うふふ、ジョシュア殿下より初々しい感じね。

「よろしくね、ダスティン。」


ダスティンはチラッとフェリシアの顔を見ると恥ずかしそうに再度お辞儀をした。


「殿下、遠乗りですか?」

ダンが聞いてきた。

「いや、丘までのつもりだ。」

「ここは晴れていますが、西の方に雲が見えますのでお天気にご注意ください。」

「あぁ、わかった。ありがとう。」


マティアスはウィザードを撫でた後赤ん坊を高い高いするようにフェリシア持ち上げるとウィザードに乗せた。

瞬間移動のようにあっという間に馬上に移動したフェリシアは一瞬何が起きたかわからず、気づくと視野が広がっていた。

目線を少し下におろすとマティアスが自分に微笑みかけており、ここでウィザードに乗せて貰ったことを自覚した。

続いてマティアスもヒョイとまたがり手綱を引くとウィザードはゆっくり進み始めた。


「お気をつけて行ってらっしゃいませ。」

ダンの声を背にして二人は王宮裏の丘を目指した。


周りには乗馬の練習をしている騎士や、馬を運動させている厩舎係がいた。


ウィザードの上からの見る景色は全然違った。

360度見渡しながらまるで空中を走っているようだった。


「うわぁ、素敵。歩いた時と見え方が全然違うわ。」

フェリシアは無意識に声に出してしまった。

その様子を見たマティアスはご満悦だった。


「フェリシア、少し速度を上げるからしっかり捕まってて。」

「はい。」


マティアスがまた手綱を引くとウィザードは返事をするかのようにヒヒィーンと鳴き速度を上げた。


「ヒャッ」

フェリシアは思わず声をあげ、ギュッと目を閉じた。

ほんの少し速度を上げただけで顔にかかる風が違う。


「フェリシア、大丈夫?目を開けて。」

マティアスに言われ片目だけうっすら開けマティアスを見上げた。


えっ、誰?

彼女の瞳には見たことのないキリッとしたマティアスの顔が写っていた。


そうだ!殿下は王子であると同時に騎士様でもあったんだわ。

私を乗せての手綱さばきは馬の扱いに慣れている騎士様だって大変よね。


時折り見せる彼の眼差しはいつもニコニコしているマティアスと違ってとても新鮮で、

更に、前からの風を受け髪が後ろに靡いているマティアスの顔は本当に凛々しく美しかった。


なんだろ、私。

さっきまでは胸がドキドキしていただけのに今はキュンと締め付けられるようだわ。

何なの、この締め付けは?

きっとこれは殿下と上半身を密着させているせいよ。

絶対そう。

だって殿方と相乗りなんて初めてだもの。

ましてお相手はこの国の王子様だし。。


「ねぇ、フェリシア。さっきからどうしたの?」

我に返ったフェリシアはマティアスに顔を向けた。


「俺の顔をじーっと見ては不安そうな顔をしたり急に赤くなったりして。そうかと思うとボーッとしたり。」

「お見苦しくて申し訳ございません。」

「全然見苦しくないよ。むしろフェリシアの七変化を見られて嬉しいね。さぁ、もうすぐ着くよ。」










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