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三人のお茶会

◆◇ 第十四章 ◆◇


 今日はヴェロニカが子供たちを連れてスィントン家に里帰りする日だ。

朝から侯爵夫妻はソワソワしている。

ランチェスター公爵家の嫡男になるであろうジュリアンが生まれてから10ヶ月程経つがまだ顔を見ていなかったので、

それはそれは楽しみにしていた。


「お父様、お母様、今参りました。」

ヴェロニカの声と共にパタパタと駆け寄ってくる音がする。


「お祖父ちゃま、お祖母ちゃまー」


ローザが二人に抱きついて来た。

孫は子供より可愛いとよく言われるが、デレデレした侯爵の顔を見ると本当なのだと思う。


「走り回るのが好きなところはフェリシアに似ているな。」

侯爵はボソッとつぶやいた。


すっかり母親らしくなったヴェロニカはローザに促した。

「ローザ、まずはご挨拶でしょ。」

「はい、お母様。」

ローザはくるっと回って侯爵夫妻の方を向きカーテシーをした。

「お祖父様、お祖母様、ご無沙汰しておりましゅ。本日はお招きありがとうございましゅ。」


か、可愛いー

フェリシアはローザを「いい子いい子」をしたかったが家族の手前グッとこらえた。


「ローザ、よくできましたね。」

母親のレイラは嬉しそうだったが、フェリシアは複雑だった。

公爵家に生をうけたからには淑女教育は生まれた瞬間から始まってしまうが、まだ幼いのだからそんなに急がなくてもと思ってしまう。

自分もこのまま何事もなければ殿下と結婚していずれは子供が授かるだろう。

そうすれば王族としての教育が幼少期から始めなければならない。

そう思うと私って本当に甘やかされていたのね。

フェリシアがしばらくローザを見つめているとヴェロニカの声が聞こえた。


「フェリシア何しているの?早くいらっしゃい。」


そうだった、久しぶりに三人でお茶をするのだったわ!


慌ててサロンに行くとお茶の用意ができていた。


フェリシアの様子を見ていたヴェロニカは笑いながら言った。

「フェリシアは相変わらずね。でも、本当に驚いたわ。王子と婚約だなんて。」

「まだ正式ではないのよ、お姉様。婚約の内定みたいなものだから。」

「ふふ、公爵がね、知っていたら二人の席を設けたのにって残念がっていたのよ。」

「あ、あの時は本当に偶然だったの。それにまだ婚約なんてしていなかったし。。。」


フェリシアは続けた。

「そうだ、後から聞いたのだけど、あのお茶会って王太子様のお見合いだったとか?」

「そうよ。公爵が陛下から頼まれたらしいの。」

「ふぅん、でもご縁がなかったのよね?だって王妃様からご令嬢を紹介してほしいと言われたもの。」


フェリシアがマデリンの話しをするとレイラが捕捉した。

「フェリシアから聞いてキャサリンに手紙を送ったのよ。ちょうど昨日返事がきて庭園パーティーに合わせて王都に来るそうよ。」

「まぁ、本当? 明日早速殿下を通じて王妃様に伝えてもらうわ。」


「でも大丈夫かしらね。殿下はマデリンを気に入ってくれるかしら?」

ヴェロニカが不安をあおってきた。

「マデリンは元々公爵の娘だもの問題ないでしょう。」

レイラは縁起でもないことを言うなという表情でヴェロニカを見たが、実家に来た安心感からか彼女の毒づきはヒートアップしてきた。


「王太子様も金髪碧眼だし少し頑張れば絶対美丈夫になると思うの。先日のご令嬢もとても素敵で王太子妃に似つかわしいお嬢さんだったのに会った途端若干引いてたわ。」


「ヴェロニカ、口がすぎますよ。」

レイラが注意するとヴェロニカは「そうだったわね。」と言う顔をして落ち着かせる為にお茶を飲んだ。


王太子様って何か訳ありなのかしら?

王妃様のお願いだから引き受けてしまったけど私で大丈夫かしら。。。。


「お姉様、そのぉ、王太子様って難しいお方なの?」

「とても聡明な方よ。私の知っている男性陣は皆口を揃えて言うわ。ただ。。」

「ただ?」

フェリシアは食いついた。近いうちにお会いすることになるはずだから聞いておかないと!


「う〜ん、ふくよかなよね。小さい頃から。」

ヴェロニカは何かを思い出したようにクスクス笑い出した。


「まだフェリシアが生まれる前なんだけど、庭園パーティーにスィントン家も招待されたのよ。その時見ちゃったの。」


ヴェロニカがそこまで話すとレイラも笑いをこらえられなくなり手で口元を隠した。


「えー、お母様も知ってるの?」


レイラはうなづいた。

ヴェロニカは続けた。

「私が疲れてしまったから会場の外で休もうとお母様と移動してたら、奥で三人の王子たちが兄弟げんかをしてたのよ。しかも、原因は王太子様が二人の王子たちの分のお菓子まで食べてしまったからみたいなの。」


ヴェロニカは一口お茶会を含み更に続けた。

「最後にはノア殿下とマティアス殿下は泣きながら王太子様に『白豚!』って言ってたのよ。」


フェリシアはお茶を吹き出しそうになった。


「殿下たちはまだ幼かったから。マティアス殿下は三歳位じゃなかったかしら。その時はとても驚いたけど今思うと可愛らしいわ。王族とはいえ男の子三人だとけんかもするでしょからお付きの人は大変だったでしょうね。」

レイラは昔を懐かしむように言った。


「ヴェロニカにここで見たことは二人だけの秘密よなんて言ったけど、まさかそのうちの一人とフェリシアが婚約するとは想像できなかったわ。」

レイラは話しながらフェリシアの手にそっと自分の手を重ねた。


「さぁさぁ、今の話しはスィントン家の女性だけの秘密ですからね。今や立派な王子になって国の為に尽くしてくれているのですから。」


レイラは話題を変えようとしたが、フェリシアは『白豚』が気になって仕方なかった。


明日会いするかも知れないのに『白豚』が頭から離れないわ。

本人を目の前にして淑女としていられるかしら?笑い出したらどうしましょう。



フェリシアの不安ををよそに、その後はたわいもないおしゃべりでお茶会は終了した。






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