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再会

◆◇ 第九章 前編 ◆◇


 これからは公務をすると約束したマティアスに小さいながら執務室が与えられた。

「なんだか子供が勉強するみたいですね。」

ルーファスが毒を吐くがマティアスは机に突っ伏しままため息ばかりついている。


「ハァ~」

「先ほどからため息ばかりじゃないですか。陛下にはフェリシア様のこと認めてもらったんですよね?」

「うん、まぁね。」

「それでしたら何を悩むことがあるんですか?」

「お前と違っていろいろあるんだよぉ。」


そこへマティアスの側付きのロイドが書類を持って執務室に入って来た。


「殿下、陛下からです。この種類に目を通していただいて署名をお願いいたします。」

「おぉ、ロイドいいところに来た。この間頼んだ品物はちゃんと侯爵邸に届けてくれたか?」

「はい、もちろんでございます。」

「彼女は喜んでいたか?」

「あいにく外出中でございまして執事長にお預かりいただきました。」

「外出?」

「はい、何でも修道院へお出かけになったとか。」

「は?修道院?まさか修道女になろうとしている訳ではないよな?」

「ご安心ください。奉仕活動とのことでした。」


あぁ、ヨカッタと安心してると執務室に新しい客が訪ねてきた。


「へぇ~これがマティアスの執務室か。」

「これは珍しい。アーサー兄上自らどうされましたか?」


アーサーは机の前に置かれているソファに腰を下ろした。


「まぁ、ちょっとな。マティアスは明日時間空いているだろう?」

「えぇ。」

「ランチェスター公爵のお茶会に付き合ってくれないか?」

「お茶会ですか?」

「ほら、この間食堂で言われただろ?」

「あぁ、お妃選びの件!」

「母上がお茶会で公爵夫人たちに声をかけたらしい。」

「それで、ランチェスター公が」

「あぁ、女性たちはこういう話だと俄然力を発揮するからな。」


女性たちの会話を聞くのは今後フェリシアとのお茶会の参考になるかもしれない。

「はい兄上、お供いたします。」



〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*


一方こちらはフェリシアが閉じこもっているスィントン侯爵邸。


「お嬢様、奥様がお呼びです。」

「お母様が?」

「はい、お天気がいいのでお庭でお茶をしましょうとのことです。」

「わかったわ。すぐ行くわ。」


フェリシアが庭に行くと母親のレイラは刺繍を刺していた。


本当にお天気がいいわ。雲一つない青空、陽射しが眩しいくらいね。


「お母様、お待たせしました。」

「あら、、早かったわね。」

「お母様刺繍ですか?」

「そうよ、新しい化粧ケープにね。」

「ふぅ〜ん。」

「フェリシアは刺繍は嫌いかしら?」

「う〜ん、嫌いというか苦手かな。せっかくお母様に教えていただいたんだけど。。。。」

「ふふ、フェリシアは刺繍より木登りだものね。」

「へへ、」

「でもね、いつかやりたくなる時が来るから時間がある時に練習なさいね。」

「は〜い。」


お母様は刺繍をやらせる為に私を呼んだのかしら?

まさかね。

フェリシアはお茶を一口飲んだ。今日の紅茶は甘い香りがして私好みだわ。

焼き菓子も美味しそう。


「ねぇフェリシア、いつまで邸に閉じこもっているつもりかしら?」

「だってぇ。。。」

「殿下にお礼の返事は書いたの?」

「ごめんなさい。書いてません。自分でもどうしていいのかわからなくて。」

「あら、ダメじゃない。今日中に返事を書くこと、相手は王族よ。いいわね?」

「はい、わかりました。」


「それと。。」


うわぁ、まだあるのー


「明日ヴェロニカの所に行って子守りをして欲しいの。」

「お姉様に何かあったのですか?」

「明日公爵主催のお茶会があるらしいのだけど使用人が足りないらしいの。」

「公爵邸で何かあったのですか?」

「元々一人は出産で里帰りしていたのに、一昨日また一人父親が危篤になって実家に帰ったそうよ。」

「まぁ、2人も居ないなんて大変ね。」

「それで、お茶会の間子供たちと遊んで欲しいんですって。」


何故だか胸騒ぎがする。


フェリシアは何かが起こりそうで二つ返事は出来なかった。

ティーカップを揺らして小さく波打つ紅茶をしばらく見つめていた。

その様子を見たレイラは「お行儀が悪くてよ」と言いたそうにフェリシアの肩にそっと手をおいた。


「はい、わかりました。お姉様のお手伝いに行きますわ。」


もし曇り空だったら

もし邸内だったら断っただろう。


この青天とそよそよと吹く気持ちのいい風が彼女の背中を押したのだった。





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