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「で!その依頼って何よ!」
廃墟に着くや否や、俺に爛々と輝く目を向けたのは有北未来、プロフィットだった。
まあ落ち着け。逃げるものでもないんだ。
「すー、はー、はい落ち着いた!で!どういう内容なの!」
お前なぁ……。
俺は碓氷から言われた依頼内容を話した。
「へぇ、二つ名関連ね」
ああそうだ。いやか?
「いいえ全く。能力者は全員が対象だもの」
で、どうする?一応二つ名なんだし、作戦でも立てるか?
「そうねぇ。そうだ!それには実地検証が必要だわ!早速その高校に行ってみましょう!」
お前、ただ単に二つ名に会いたいだけだろ。
そんな言葉は馬耳東風。肩で風を切り俺に後塵を配させると、有北はいつの間に俺の自転車の荷物置きに乗っていた。
「なにやってんの域谷!さっさと行くわよ!」
はぁ、これだから烈しい女ってのは云々。
有北の唯我独尊な立場に閉口しながらも俺は、ペダルをこぎ始めた。後ろからはシトラスの香りがする。つまりはこいつも、こんなに烈しいながらも女子だったわけか。俺は妙に得心すると、廃墟のガタガタとした石畳を抜け、セメントの坂を勢いに任せて下った。それは風が頬をかすめる昼下がりのことだった。
目の前には古びた校舎がそびえたつ。窓は砂ぼこりで茶色く濁り、もとは白かったであろう校舎の壁も薄汚れて、はがれたところとそうでないところとのちぐはぐになっていた。校門は黒いペンキが一部剥がれ、中を錆が侵食していた。
「なかなかアンティークな感じね」
いやいや、ただ古臭いだけだろ。
古びたフェンスに背中を預けると、ギイッと軋む音がした。
「で、私たちは何をすればいいの」
お前、まさか無策でここに来たのか。
「ええもちろん」
有北は胸を張って言う。
はぁ、俺として全く、自慢などしてほしくないのだが。嘘であってほしいね。
「保証してあげるわ。嘘じゃないって」
……はぁ。じゃあ仕方ねぇ。依頼主を待つぞ。
「それも暇ねぇ。そうだ、中に入りましょうよ」
はぁ!?お前、それ、無断侵入だぞ!
「いいじゃない。世界平和のためよ」
いいや良くないね。だいたい、能力者だって法律を守るべき――はっ!いない!
校門の中を見ると、有北が手招きしていた。
「なにやってるの。あんたも早く来なさいよ」
こいつ、マジで言ってやがるのか。
俺はしぶしぶ中に入った。




