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夕暮れ。廃墟に橙色の陽光がさす。廃墟の鉄筋コンクリートの床が燃えるように照る。俺たちは持ち寄った椅子と机でメルティキッスを囲んでつまんでいた。俺たちと言ってもクリエイターは何やら忙しいらしく来ていないのだが。しかし、すっかり俺もこの廃墟の埃っぽさになれたもんだ。最初のころはマスクでもしようかと勘案していたのに、今じゃ実家のような居心地だ。しかしそんな俺でも一つ、この場で気になることがあった。それはプロフィットがさっきから俺をチラチラ見てはそわそわしているのだ。
おいどうした。何をそんなにそわそわしている。
「あ、あんた、本当に忘れちゃったわけ?」
何をだ。
「きょ、今日が体験最終日じゃない」
……あー、そうだな。
「で、どうなのよ」
お前のお得意の未来視で見たらどうだ。
「それを人間に適応するってなると負荷が――ちょっと!なんであんたがそのことを!」
そりゃあな。猫を抱きかかえたあたりで気づいたさ。後、プロフィットっていう名前だな。それは利益のことじゃなくって、預言者のことを指すんだろ?
「……よ、よく分かったわね。わ、私だってあんたの能力分かっているんだから」
ほう、言ってみろ。
「あ、あれでしょ?5人集結してじゃじゃーん、みたいな」
……
「ど、どう?」
全っ全違うな。
「う、うそ!じゃ、じゃあ――」
はい、回答時間は以上です。
「えぇ~そんなぁ」
まあ、別に教えてもいいんだけれどな。どっちにしろ勝てるし。
「やけに自信満々ね」
ああ、実際強いからな。
「ふーん」
沈黙を埋めるメルティキッスが尽きた。そろそろ答えを出す時が来たかと、俺はこう徐に話し始めた。
まあ、この団の目標は何だっけ?
「非能力者が安心して暮らせる世界を作ることよ」
それには遠く及ばないだろうな。
「そ、そうかもしれないけれど――」
ああ、でも、だ。この団が弱小だからと言って非能力者の日常が終わるわけじゃない。この団の如何にかかわらず続くだろう。だったらその目標を掲げて活動し続けるのは意味のあることなんじゃないのか?
「そ、そうよ。で、あんたは参加するの」
非能力者も俺たちと変わらない人間で、それぞれの日常があって、それぞれの信条があって、それを痛感できた。彼らとともに至って、同じ人間なんだから能力者と同じように楽しめる。なのに彼らは能力者におびえ続けなくてはならない。力がないばっかりに。だったら俺がその怯えを取り除いてやろうではないか。ああ、参加するよ。だが、これは彼らへの同情じゃない。俺は彼らと同じステージに立ちたいんだ。彼らも人間なのだから、平等に暮らしたいんだ。
「っ!本当!?」
ああ、嘘だったらもう一度クリエイターの作ったあの縄にぐるぐる巻きにされて東京湾に沈められたっていい。
「やった!」
彼女は小躍りする。喜色満面。欣喜雀躍。燃えるような陽光が彼女専用のスポットライトに見えたのは俺だけじゃないだろう。そう、ここから俺、いや、俺たちの物語は始まった。




