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俺たちは校長のありがたいお言葉を列に立ちながら傾聴する。結果から言えば紅組の圧勝だったが、苦戦したことも――ないな。なんといっても女子にはあいつが居やがる。そう、有北だ。その時点でもう出来レースだったのだ。おっといけない。校長先生のありがたいお話の最中に雑念が入ってしまった。俺は心新たに前へ向き直る。然し、聞こえない。だから俺は仕方なく、そう、仕方なくだ、有北に話しかけた。
なあ有北、あのはげちょびん、なんて言ってやがる。
「さあ、知らないわ。興味のないことだもの」
おいおい、そう言ってやんな。あの人だってあんなにも全校生徒を見まわしながら言っているじゃないか。多分みんなにためになることなんだろう。
「さあ、ただ単に女子生徒の体操服姿に欲情しているだけじゃないかしら」
お前なぁ、たとえそうであったとしても、あの人はJKと出会いがないかわいそうな人なんだから許してやってくれよ。
「……あんた、最低ね」
おいおい、俺のどこが最低だっていうんだ。
「さっきの発言全部よ。私たちも傷ついたし、あの人だってそれを聞いたら涙を流すわ」
今でさえ汗だくなんだ。そこに涙の一滴や二滴加わったってなにも変わらないだろう。ほら、歌にもあるじゃないか。『涙流しても、汗にまみれた笑顔の中じゃ、誰も気づいてはくれない』とな。
「名曲を曲解しないでいただけるかしら。……で、あいつはどうするの」
あいつら?
「ほら、後ろであんたを罵倒している」
後ろを振り向くとそこには俺に中指を立てた男子生徒がいた。遠くでよく聞こえないが、何やら喧伝しているらしい。
ああ、リレーの陽キャ面倒属性君か。
「なんでそんなあだ名がつけられているかすごく気になるのだけれど、まあ今はいいわ。でも、あいつ、早めに対処しないと困ったことになるわよ」
忠告ありがとう。
「……はぁ、その様子だと全く聞いていないわね」
かくして俺たちの体育祭は終わった。
大学は一年生の時はラクタンを多くしておくことをお勧めします。




