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File1: Help Makimoto to shop
で、今日から俺の体験期間が始まるわけだが、何をすればいいんだ?
俺たちは学校の帰りに廃墟ビルにて集まっていた。クリエイターの糞野郎は、何やら忙しいらしく、数日間はいないらしい。
「そうねぇ、あ、今日は牧本さんが食材を買いに行く日ではなかったかしら?それを手伝いましょう」
……まあいいが。
そういって自転車をこいできたのは一見の民家。プロフィットは徐にインターホンを押す。
「あ、牧本さーん!買い物手伝いに来ましたー!」
しばらくして出てきたのは白頭の、感じの好いおばあさんだった。プロフィットが言うには非能力者らしい。
「あらあら有北ちゃん。いつもありがとう」
牧本さんは俺に微笑みを飛ばす。
「あ、レン――じゃなくって域谷君です」
おい、お前なんで俺の本名を――
「あらあら域谷君、初めまして」
は、初めまして。
「そうねぇ、こんなに人数がいるのなら、今日は遠出しましょうかしら」
そういって牧本さんが指示したのは、近くの大型スーパーマーケットだった。
牧本さんが先陣を切って歩いていく。
俺はプロフィットにそれとなくなぜ俺の本名を知っているのか聞いてみたが、プロフィットの友人に非能力者の天才ハッカーがいて、そこからの情報らしい。情報化社会畏るべし。
ほぇー、結構色々なものが置いてあるんだな。
俺がスーパーマーケットに行った感想はそれだった。そんな漠とした感想を思っているうちにもプロフィットと牧本さんはどんどんとかごをいっぱいにしていく。もちろん、そのかごは俺が持っているわけだが。やれやれ、なんで俺は筋力増強コースのジムよろしくだんだんと加重されて行っているんですかね。そうこうしているうちにかごは片手では運べないほどの重さになり、そろそろ勘弁してくれと思った矢先に、牧本さんがレジへ行くことを指示した。この時の牧本さんには天使の翼とわっかがあったと思う。
会計を終えて袋詰めをし終わった後、牧本さんからプレゼントをもらった。
「今回は二人ともありがとうね。はい、これあげる」
そういってくれたのは箱詰めされたメルティキッスだった。
「私が思うに二人にはこれが似合うと思うわ」
……それはどういう――
牧本さんは唇に人差し指をつけてウウィンクした。
「恋には波乱万丈がつきものだわ。むしろ、それがあるからこそ恋も燃え上がる」
俺には、いや、俺とプロフィットには何のことだか分らなかった。だが、牧本さんの見つめている先には、何やら楽しそうな世界がありそうだった。
「じゃあこれを家に運んでくれるかしら」
牧本さんは朗らかにほほ笑むと、歩き始めた。