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最強の能力者に平穏など訪れない  作者: 世界一の能力者のゴーストライター
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カメラのフラッシュがたかれる。音は会場を包み込み、光は会場を余すところなく照らす。この仮面越しにでもこんなにまぶしいのだから、直接見たら失明もありうるかもしれない。俺たちは今、クリエイターに連れられて記者会見に来ていた。クリエイターが言うにはこれも一つの仕事らしい。しかし、記者の数が多いな。俺が呆けていると、隣から、これまた素性を知られないように仮面をした有北がこう聞いてくる。

「なに呆気にとられているの。この記者はほとんどが、あんた目当てなのよ」

俺目当て?こいつらのほとんどが?そんなわけないだろう。お前だって二つ名であるわけだし。

「ええ、そりゃああなたがこの団に入らなければ私目当ての人も多かったでしょうね。でも、あんたが、何かの間違いでこの団に入ってしまった。あの、最強と言われ今まで一匹狼を貫いたあんたが。そりゃあ、こんなに集まるわよ」

「それに、機関の人もレンジャー君が参加するってことならってことで傘下に入れてくれたんだからね」

クリエイターが付け足す。

ほぇ、意外とみんな暇なんだな。

「どうしてそうなるのよ」

だって、俺一人のために何かが動いたってことだろ?自分の人生に必死のやつは俺になんか脇目も振らないだろうから。

「はぁ、みんな自分の人生に必死だからあんたに張り付いているのよ。あんたは自分の影響力ってのをもう少し――」

「二人とも、そろそろ記者会見が始まるから用意して」

俺と有北は前に向き直った。

「えー、では、これより、APKS団の発足記念記者会見をしたいと思います。まずは、この団の代表を務めるクリエイター様からお言葉をいただきたいと思います」

クリエイターにマイクが渡る。会場が一瞬にして静寂になった。おいおいクリエイターさん。あんたが言うには俺目当ての人が多いとかなんとか抜かしていやがりましたけれど、これじゃあんた目当ての人も数えきれないくらいいるんじゃないんですかね。

「皆さんこんにちは。この団の代表を務めるクリエイターです。本日はお集まりいただきありがとうございます。早速ですがこの団の到達目標を話させていただきます。この団は非能力者でも住みよい街を作るということをコンセプトとしております。何か質問はありますか?」

会場に息をのむ音が響いた。それだけ大それたことを言ってのけたのだろう。一人、記者が手を挙げた。

「そ、それは実現可能なのでしょうか」

その目の奥には、未だ俺たちに対する恐怖と疑念がある。

「ええ、できない可能性が高いでしょうね。でも、できない可能性が高いからと言ってあきらめるような僕たちではありません。理想は追求して初めて叶う可能性がある、そう思いませんか?」

「し、しかし、それが逆効果になる可能性も!――」

「……では、皆さんは一人の男の話を聞いたことがあるでしょうか?まだ、二つ名が独断専横を築いていた時代の話を」

「ど、どんな話でしょうか」

「それほど遠い昔ではありません。二つ名になった人々はその能力の強大さからあらゆる悪事を働いていました。人の土地を勝手に収奪したり、権力者を脅して自分に都合の良い法律を作ったり。そんな時、一人の男が二つ名になります。その人はほかの二つ名とは違い、一人でいることが好きで、いつも飄々としていました。それを煙たがった二つ名が彼をつぶそうと奇襲を仕掛けます。――ええ、ここでお気づきかもしれませんが、その一人の男と言うのはレンジャー君のことです。――あとは分かりますね?そいつらを退けるどころか、絶大なる力を見せつけた彼は、畏敬も込めて序列の枠組みの中の一番を与えられます。それから、まあ先日我々は性根の腐った二つ名を狩ったばかりですが、大体落ち着いたのです……」

「つ、つまり、示威行為によってそれを実現しようと言うことですか?」

「まあ、大体そういうことです。……ちょうどその流れになったので、今度はレンジャー君から一言もらいましょう。レンジャー君、お願いします」

やれやれ、こんなに会場のボルテージを上げてもらっちゃ、どんなパフォーマーでも鼻白むってやつでしょうが。俺はあきれながらもマイクを受け取る。

ええ、皆さんこんにちは。レンジャーです。……

「ほらレンジャー君、もっと何かしゃべってよ。みんな期待しているよ」

期待って言ってもな。俺はそんなの請け負いたくないんだが。

「じゃあ、……ほら、なんでこの団に入ったのか、とか」

ああ、そうか。じゃあ話してやろう。お前も耳の穴かっぽじってよく聞いとけよ。

「適度に聞いておくよ」

適度にって……。まあいい。えー、皆さん。皆さんの中にはこんな疑問を持つ方がいるかもしれません。なんで一匹狼だった俺がこの団に?しかも機関なんぞの言いなりなんかに?そこで皆さんに聞きたい。皆さんは、例えば、非能力者が同じ人間だったとして、どう思うでしょう。人間?そりゃそうだ。あいつらだって、弱くはあるものの思考して、体の形は俺たちと同じで、……。そう、非能力者だって人間なんです。だったらなぜ差別するんですか?そりゃ弱いからです。当たり前でしょう。なんで非力な奴にかまう必要がある。なんで非力な奴に俺たちと同じだけの権利を与えなくちゃいけない。虐げることができる立場なんだからできるだけ虐げておけと。皆さん。我々は今、気候問題に直面しています。貧困問題に直面しています。それはなぜでしょうか?実は我々の生活のせいなのです。我々の帝国主義的な利潤社会を築くために多くのグローバルサウスが犠牲を払い、多くの労働者が労働力を搾取されています。そんなの関係ない。それは今までの我々の考えでした。しかし、それが今になって問題になった。今になって気候問題や貧困問題が露呈した。つまり、虐げるってのは幾分問題のあることなのです。それを皆様に自覚していただきたい。そして次に、俺からは多様性って言葉を提案したい。これは俺の中学の先生からの受け売りですが、つまり即座にデータは示せませんが、最近、なぜか企業が多様性を取り入れています。それは一体なんででしょうか。答えを言ってしまうと、多様性のあるチームの方がないチームよりも生産性が向上するからです。これをたとえば我々の現在に照らして考えてみましょう。我々は非能力者を虐げて権力の座に傲然と座っている。一体、それのどこに多様性があるのでしょうか。どこまでも閉塞的じゃないですか。この国をよくしたい、自分の価値をもっと向上させたい。そう思っている方がこの中に大半でしょう。そういう方々にこの言葉が届いてほしい。多様性とは我々の、あるいはこの国の能力を上げるうえで欠かせない概念なんです。最後に、長々と話しましたが、俺が何でこんなにも非能力者の実質的平等に熱心なのかと言うと、それはただ単に、そっち側の方が楽しそうだからです。能力の有無にかかわらず公園でかけっこできる。笑い合える。そっちの世界の方がより魅力的で、楽しそうじゃないですか。俺からの話は以上です。

会場には再度静寂が訪れた。

「次はプロフィット様にお伺いいたします。プロフィット様――」


こんな拙速な奴じゃ書籍化できないだろうなと思いつつ、でも目指してしまう、どうも、諦め悪い奴です。

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