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最強の能力者に平穏など訪れない  作者: 世界一の能力者のゴーストライター
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俺は電車に揺られていた。車窓からは高層ビルの群れがのぞく。その窓に移る電車は、目印の黄色を太陽に輝かせながらなおも進む。赤色の制服が車内に目立つ。飯田橋駅。その駅名がコールされると車内は渦巻き蠢動した。――




「レンジャー」

俺はその声に驚いて後ろを振り返った。そこにいたのは白髪のツインテールに、青い目をした少女だった。彼女は胡乱げに目を細めている。俺は彼女の素性など宇宙の神秘よりも知らない。だが、彼女の身に着けているもの、先に言うと赤い制服なのだが、それを見た俺は彼女がこの先にある、法理高校の生徒であることを知った。しかしそんなことはどうでもいい。俺と彼女は、たぶん関係のない人なのだから。ああそうだ。あの、“レンジャー”なんて声に驚いたのも、今時5人やら7人やらの戦隊ものにあこがれを持つ人がいるなんて思いもしなかったからなのだから。俺はなおも胡乱げに俺を凝視してくる彼女に背中を向けると、法理高校、俺の新たな学校へと足を進めようとした。

「待ちなさい」

刹那、俺は呼び止められた。鼓動が早くなるが、ああ、これはあれだろう。女子から呼び止められて、恋の始まりを予感したに違いない。ああ、なんと純情な男子生徒なんだ俺は。俺は早歩きでその場を立ち去ろうとする。いつしか、路地に出ると彼女の気配は消えた。安堵した俺は宴席に座り込む。

まだ――

「まだ知られちゃいけない。俺は平穏が欲しいんだ」

驚いて声の主に振り向くと、悪い予感ってのはつくづく的中するもんで、彼女がさもここに来ることを予想していたように空のごみ箱に腰かけていた。

一体それは誰のセリフだ。

俺は引きつった笑いで尋ねる。

「さあね。知らないわ」

そんな――

「そんな韜晦なセリフ、言えるものなら言ってみたいね」

……

俺は黙らざるを得なかった。なぜなら彼女の言った言葉が、ちょうど今俺の言おうとしていたことだったのだから。

「私の名前は有北未来。……と言ってもわからないでしょうから、いいわ、二つ名で自己紹介してあげる。“プロフィット”よ」

彼女は白髪のツインテールを手ですき上げる。路地に差し込む陽光が彼女の髪をきらめかせた。

で、なんで俺の二つ名を知っている。

「そりゃそうでしょう。二つ名を序列順に並べた呼び名、ルクプトゼフの頭文字なのだから」

それは答えになっちゃいない。重要なのは、なぜ、俺がレンジャーだとわかったのかってことだ。

彼女は考えるようなしぐさをする。そしてこう宣った。

「まあ、成り行きね」

……ほう、成り行きか。ふっ、面白い。俺もこう見えて結構色々な刺客を退治してきたのだが、そんなあやふやな理由を答えたふざけた野郎はお前が初めてだ。

「そりゃどうも」

……クックック、いいねぇ。いい感じで図に乗ってるじゃないか。これだから二つ名のついたほかの連中ってのは面白い。そいつらは自分が最強だと思って浮かれていやがるのさ。なあ、なんで今二つ名のついた奴らが7人だと思う?10人の方がきりがいいじゃないか。

「知ってるわ。あなたに勝負を挑んで一方的に嬲り殺されたんでしょう?」

それを知りながらもなおも俺に勝負を挑むとは。いい気になってんじゃねえよ!

瞬間、あたりが一瞬にして消し飛ぶ。

……まあ、こんなもんか。プロフィット?お遊びもほどほどにしておけ。

砂塵が落ち着く。

……ああ?なんだありゃ?

目の前には黄金色の扉があった。

……いや、知っているぞ。俺はこの扉を知っている。ということは……クックック、もしや、あのプロフィットとか宣った野郎、あいつと組んでいやがんな?ハッハッハ!そいつは面白い!傑作じゃねえか!

「やあレンジャー君」

そこにいたのは、プロフィットと宣いやがった糞野郎の傍らにいたのは、緑の髪をフォーマルにまとめた、黒縁眼鏡の少年だった。

俺に二つ名殺しをやめさせた恩人、クリエイターさん、どーっも!

俺は黒い球を打ち出す。

クリエイター、緑髪の少年の前に空間的な渦が発生したかと思うと、その球はクリエイターとプロフィットを通過し、後ろの方へ通り過ぎた。

後ろで大爆発が起こる。

「わかったかい?有北さん。これがレンジャー、序列一位の力だよ」

「ええ、だいぶ分かったわ。でも、仲間になれば確かに心強い」

何こそこそと話していやがる!お暇なのは嫌いですかい!?

俺は上空に先ほどの黒い球を一瞬にして空を埋め尽くすほどに作り出す。

「わお。これは僕だけじゃ厳しいかも」

「分かったわ。今予測する。……三秒後に飛んで」

「わかった」

刹那、地上を大爆発がとらえる。黒い球が降り注いだのだ。

「次、右」

「わかった」

「次は左」

「ほいほいっと」

ちぃっ、ちょこまかと……これでどうだ!

刹那、全方位からの黒い球がクリエイターたちを襲う。

「え!これは……」

刹那、プロフィットの顔が引きつる。それを見た俺はしたり顔をして最後の締めをした。

ちっ、気の滅入るような蠅叩きだ。

俺は力を使いすぎてふらふらする。刹那、上空から声が聞こえた。

「テレポートができる蠅なんてのは、どうかな」

クリエイターのしたり顔が見えた。

クック、最後までふざけた野郎だ。煮るなり焼くなり好きにしろ。

俺は気絶した。


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