9、禁書
教会に与さない聖女にまで閲覧が許されたのは、それだけこの世界が危機に瀕しているからだろう。
魔王の復活。
魔族の暗躍によって起こったであろう戦争。
魔物の活性化。
フランシス曰く、テンプレだそうだ。
禁書の内容は、過去の聖女が行った奇跡。
ざっくばらんに言えば、彼女たちが行使した魔法と、それを再現できないかと苦闘した魔法使いたちの軌跡だ。
多少の差異はあれど、大別すると三種類。
浄化。癒し。結界。
セトさんは結界の聖女で、規模といいその性質といい、王城と大変に相性がよい。
三種すべてそろっているなんて不幸中の幸いだと、貴族たちは喜んでいるらしい。
スキルの使い方はなんとなくわかるけれど、やはり使いこなすには練習が必要。
参考までにと公開された書物を紐解いてわかったことは、あくまで聖女は象徴だということだ。
最後の希望とも言える。
たとえ聖女が百人いても、この国一つ、カバーすることはできないだろう。
そのままであれば。
セトさんは、まず、結界魔法を私に記録させた。
魔法行使時に現れる、光輝く魔法陣。
火の玉を飛ばしたり、水の矢を打ち出すような単純なものであれば、すでに正確に記録されたものが出回っているけれど。
聖女たちが行使するものは、巨大で複雑怪奇。
そこで私の絶対記憶と自動書記の出番というわけ。
その上、異世界人の私たちには言語理解のスキルがある。
神聖語だろうが、古代語だろうが、意味を読み解き、無駄を省き、組み直すことができる。
元プログラマーの女性が。
だいぶ省エネになった魔法陣にエネルギーを供給するのは、複数の魔法使いでも、魔物から採れる魔石でもよい。