2、剣と魔法のファンタジー
結果から言うと、私は異世界に召喚された。
いわゆる、剣と魔法のファンタジー。
同じような人たちが五百十九人(私込み)
地球にて。同日、シスターの格好をしていて、病気や不慮の事故で死ぬ寸前だった人たち。
後でわかったことだが、本物の聖職者は三人。あとはなんちゃってのうっかりさん。
「ヤッター! キタコレッ! 異世界召喚!」
フランス語でぺらぺらしゃべって、はしゃいでいるのがフランシス。わかりやすくて助かる。
私のことはジャポ子とでも呼んでもらおうか?
ちなみにどう見ても男。
他言語だと認識しているのに、日本語同然に意味を理解できるのは、異世界召喚モノのお約束、言語理解のスキルだろうということだった。
日本武道館ほどの広さの講堂。ゴシック様式とでもいうのかな?
ギャラリーもかなりいて、私たち用に用意された多角形のお立ち台が(五百人強が乗るには)狭く、全体的にごちゃっとした印象だ。
私の周辺では、神に祈り出す人、あてどなく質問をくり返す人は少数派で、多くは呆然としている。
まあ、ようは突然死ぬ思いをして、ついで拉致されたわけだから。
自分でもなんでこんなに落ち着いているのか謎だけれど。
周りのざわざわを聞きわけたところ、聖女とやらを一人呼べればよかったらしい。
それが一気に五百人越えの定員オーバー。
道化師のような格好の連中に、どういうことだと詰め寄られるローブ姿の集団。
実行した側も混乱しているらしく、私たちはまともに並ぶことさえさせられていない。
だからといって、鈍い光を放つ全身鎧の囲いを抜けて逃げだす勇気もなく、まずは状況を把握しないことには…。
ちょうどよいので、フランシスのレクチャーを受ける。
「せっかく日本に生まれ育って、どうしてあのすぐれたカルチャーに触れてないのかなぁ」
すごく残念な人を見るような目。
長身のイケメンがすね毛をさらしている方が、よっぽど残念だと思いますけどね。
先達としては優秀で。
言ってみました、ステータス!
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名前 サナミ・アケチ
レベル ふつう
スキル 言語理解 状態異常耐性 聞き耳 高速計算 完全記憶 自動書記
称号 異世界人 黄昏のヒト
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