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夢中戦─夢の中で戦う話─  作者: チラシ
7/12

第七夜 プリズム


 鷹見は防戦を強いられていた。いや、それは防戦というよりそれは撤退に近いだろう。少年の攻撃をかわす、受け流す、攻撃される前に攻撃を止める。などあらゆる方法で腕を修復する時間を稼いでいる。今、鷹見の右腕は完璧ではないが刀を握れる位には修復されている。しかし鷹見はそれより気になることがあった。


 (こいつ、さっきより明らかに()()()()()()()()?でなきゃこんなに攻撃を捌けるわけない)


 事実少年の身体能力は明らかに落ちていた(とはいえ今現在でも人類のあらゆる競技の記録をぶっちぎりで更新できるほどの力はあるだろうが)。しかし徐々に動きにキレが、速さが戻ってくる。それは鷹見の腕も同様であり少年と鷹見のコンディションはほぼ同時に完璧となった。鷹見は少年を睨みつけると思考する。何故少年の動きは急に鈍くなったのか。


 (……絶対、かめはめ波打ったからだよな)


 鷹見はドラゴンボールを読んだことは無かったがかめはめ波を打つのには体力の消耗が激しいのだろうということは彼にも想像できた。そもそも少年自身取って置きだと言っていた。連発は出来ないのだろう。


 (なら、やることは変わらない。離れてかめはめ波を打たせよう。その反動で弱っているところを斬ればいい)


 再び鷹見は少年から距離を取り刀を構える。それを見た少年は頬を膨らませて叫んだ。


 「なんだよ!正々堂々かかって来いよ!」


 「やだね、怖いから」


 「この野郎!じゃあこっちから行くぞ!かーめーはーめー……」


 来る、鷹見はそう思い身構えた。鷹見の作戦は全てかめはめ波をかわせる前提で動く。幸い打つ前の隙が大きい上(この隙に攻撃しようとも思ったが近寄った瞬間攻撃されそうだったので止めることにした)軌道は予測しやすいのでそれは容易だと考えていた。


 「波ーーー!!!」


 少年はそう叫ぶと体をぐるっと捻り()()()放つ。その反動でロケットのような爆発的推進力を得て鷹見に突進した。少年の奇妙な行動に一瞬気を取られたせいか対応が遅れ腹に直撃する。鷹見の胃の中の物がすべて吐き出された、体が吹き飛ばされブロック塀に激突する。


 (がっ!ゲホッ!息、出来なっ……!体、動かない……!)


 痛みは無いが息が出来ず体が動かない状況に鷹見は苛立ちながら体を修復してゆっくり立ち上がる。ダメージは大きいはずだが鷹見には余裕があった。理由は一つ。


 「うああっ!僕の、()()!」


 鷹見は少年が突っ込んできた刹那の隙を突き脚を切断したのだ。神業じみた所業ではあったが一度かめはめ波の速度を体感していた鷹見にとってそう難しいことでは無かった。


 (驚きはしたけど大して効果的じゃ無かったな、子供で助かった。切実に)


 少年の機動力は失われた、後はもう詰将棋だろう。鷹見はゆっくり少年に近づいていった。手こずりはしたがようやく殺せると思うと彼は浮足立っていた。そして刀を振りかぶり振り下ろすまさにその瞬間。


 「たす…………けて………」


 鷹見は惨めにガクガク震える少年に、かつてあの殺人鬼、篠田を前にした自分の姿を重ねた。


 (ああ、そうだ。何回も誓ったじゃないか。人殺しはだめだって。ここでは実際に死なないなんて関係ない。駄目なものは駄目だ!)


 そう思い鷹見は刀を下ろそうとした、しかし。


 「もういいよ、()()()


 また、鷹見の口が勝手に動いた。いや、今度は口だけではない。体のすべてが言うことを聞かず勝手に動く。そして止める間もなく少年を斬り殺してしまった。


 「誰だ……お前誰だよ!」


 ここにきて鷹見健也は自身の中に自分以外の誰かがいることを認めざるを得なかった。彼自身ここでは混乱していたため気づかなかったが口が動く。


 「俺はお前だ、お前だったんだよ」


 再び鷹見健也の意思とは裏腹に口が動いた。


 「けど今はもう違う……俺は鷹見()()だ」 


余談ですが少年の戦闘能力は原作二巻の悟空位です

三巻だったら鷹見は負けてたと思います

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