暗闇でもほのめかない物事
暗闇でもほのめかない物事
生ごみのような詩の出来損ないで
繰り返し行う実名の照会と
無記名答案の自己採点
騒音と会話がこんなにも近くで交雑する
あまりにも大きな声で話しかけてくるから
いつまでも不在のツイッターアイコンを遺影にした
『 』
『 』
『』
抗ヒスタミンの錠剤を噛みくだき
点眼、点鼻、点耳薬を
各種の穴になみなみ注ぐ
ウインドブレーカで防御をかため
鋲付きマスクで攻撃的な『花粉』対策
殺意とともに家を出る
しかし
くしゃみが出る
鼻水も出る
涙も出ていて
目が血走る
おう
この圧倒的な殺意で
すべての花粉をひねりつぶしてやるのだ
『電撃はりがね殺法』
はりがねのように
身をよじり
はりがねのように
攻撃をかわし
はりがねのように
腕をのばして
はりがねのように
反撃をする
はりがねのような
その一撃に
はりがねのような
あいつらは
はりがねのような
はり合いはなく
はりがねのような
鋭さもない
はりがねのようで
はりがねでなく
はりがねなような
はりがねのようで
どうやら
はりがねのようね
そうだね
はりがねのようだね
肘から手首は ぼくの縄張り
手首から指は あなたの縄張り
指から指先は 彼らの縄張り
指先からその先は ただの『縄張り』
『つわ石蕗ぶき』
さししめした指先の
ちいさな花の
くちばしれない
なまえ
石蕗
ききとれず
ききかえす
つ わ ぶ き
『毒』の
状態異常は
一行動ごとに
最大HPの
1/8を
うばう
から
もう一歩も
踊れない
『レインドレス』
雨のたびに踊る少女の踊りは
雨よりも弱々しく
雨よりも生気がないが
雨よりかはいくぶんか
あたたかかった
あたたたかかった
『まくら』してほしい膝まくらしてほしい腕まくらしてほしい肘まくらしてほしい腰まくらしてほしい踵まくらしてほしい脛まくらしてほしい腿まくらしてほしい胸まくらしてほしい頭まくらしてほしい耳まくらしてほしい目まくらしてほしい鼻まくらしてほしい口まくらしてほしい歯まくらしてほしい舌まくらしてほしい喉まくらしてほしい胃まくらしてほしい腸まくらしてほしい屁まくらしてほしい尻まくらしてほしい入念に、入念にしてほしい
『むれるとむれる』
ささやき合う言葉は陰湿ね
擦れてかぶれた肌見せ合うの
努力の結晶したたる汗
くっさい台詞で互い励ませれば
とても理想的な情熱ねっ
虚空の残響 ひとりごと
反響、孤独の それごといっそ
焼けたのどから
滴る ことば が
うなされる日々を『過熱』する
『純青月』
青いひかりをみせなくなった星から腐っていったのだ!
だから
ポエトリーなんて
うすら寒い言葉を名乗って
安心しようとすんな!
日時計のスヌーズを
そのままにして
冬虫夏草
このままそっと
『火葬して』
『斜塔』
よくできた模造品のなかで
歪み続けるということは
ピザのなかのピッツァ!
ピッツァ! ピッツァ!
『羽付き餃子』
羽をむしられた彼らのことを思うと胸がとても痛いんだ
『famitiki-tikitiki』
あの入店音は いつもそう聞こえる
ドレミファのファは ファミチキのファっ!
ドレミファのファは ファミチキのファっ!
ドレミファのファは ファミチキのファっ!
ショーケース越しの注文
わたしにとって右側は
あなたにとっての左側
わたしの手前は
あなたの奥
わたしにとっては脂っこい
あなたにとっては脂ののった
このファミチキを
おひとつ
おくれ
ショーケース越しからの返答
あげる
あげる
ファミチキあげる
油であげる
180度であげる
6分あげる
それを並べる
あなたにあげる
ピリ辛ファミチキ あげる
甘辛ファミチキ あげる
世知辛ファミチキ あげる
おいしい、おいしい
ファミチキ あげる
『ちむぽしごき師』
の一団が街に来た
同じくして転校してきたぼくの周りには
早くも新たなクラスメイトたち
ちむぽしごき見せてよ
ねぇ、もったいぶらずにさぁ
ちむぽしごき見せてよ
どうやらぼくのことを
一員だと勘違いしているらしい
ぼくは誤解をとくため
ぼくがいかに
ちむぽしごきができないかを見せつける
クラスメイトたちは落胆した様子だったが
それなら一緒に見に行こうよと
誘われるがまま河川敷に向かった
なんかの草がいっぱい生えたそのなかに
ちむぽしごき師たちが張った黄色いテントが
ちょこんと頭をのぞかせていた
ぼくとクラスメイトたちは足音を忍ばせながら
近寄り
布をそっとめくり上げて
なかをのぞく
桃栗三年柿八年
ちむぽしごきは二十年と申しますように
果実が一日にしてならぬように
ちむぽしごきもひとしごきではなりません
日々のしごきは丹精こめて
丁寧に丁寧に
愛でるように丁寧にしごいてください
そうすればあなた方も
立派なちむぽしごき師になれるでしょう
つぎつぎにテントのなかに入っていく
クラスメイトたち
ちむぽしごきができない
ぼくは
つぎの街に
向かうのだった
『コンタクトマーキング』
2ウィーク後のアキュビューを
街の各所に張り付けて
ほんとの私がデビューしないよう
日々、厳重に
見張っています
『ローテンション・バイブレーション』
日夜
襲いく
る
憂鬱 な
振動 の
適切 な
対処法 とは?
『ギルブレ』
調子のくるった呼吸で
水面に
ひたした
顔
めざめる
顔
とびあがる
顔
とびかかる
呼吸
ありえない
呼吸
呼吸
寝静まった夜は幻想 通過する『夜汽車』の轢音に耳をすませば 駈け出したばかりのぼくらの まだ色づいていないきらめきが聴こえる もういい加減目を覚まさないと 彼女がそうくちにした ぼくはなにも言い返すことができなくて 自分のくちに飴玉を放りこむ ただ甘いだけのものなんて 高校生のぼくはそういったっけ その続きを思い出す前に 家を出た まだ夜なのに もう夜なのに でも『毎朝の出勤時に舐める飴玉が唯一の楽しみだった人生よりも』 ずっといいはずだ そう思ったぼくの前を 夜汽車が通過した 風を切りながら 通過していった
『サウンドスケープゴート』
すべての音が自分に向かってくるような気がして電車には乗れなくなった 排水溝に集まる水のように おと がぼくに押しよせてきた このままでは潰されてしまうと思ったから ぼくはからっぽになった からっぽの になった
樹木の断面のように輪を巻いた 蜘蛛の巣を伝う夜露は星めいて 糸状の軌道で引きあって ときに押し退けあっては 渦巻いて つくった星雲のできばえを 確かめる蜘蛛の脚からこぼれた 一筋の軌道 垂直に陥っていく線条の 定まることのない『座標』に 錯乱したと吐き重なる虚飾を穿つ 頑なに凍結した円錐がその饒舌を割るとき 冷血 それは無数の停止 その連結だった
『首つり死体の揺れ方』
ものの分からぬ子どもでした
走れば転び、跳ねれば挫く
不器用な子どもでした
不安定に揺れながらも
精一杯生きてきましたが
どうやら
ここまでのようです
ぼくの、
ぼくの死体はどうでしょうか
汚さぬよう なるべくすべて出し切りましたが
つい 我慢できずにお菓子を食べてしまいました
足下を汚してしまっていたら
申し訳ありません
遺品整理はできる限りやったつもりですが
もしなにか残していたらすみませんが対応を、
あっ、そうだ
返し忘れた本があったので
返しに行ってきます
はい、駅前にある図書館です
え?
返しに行ってくれるんですか?
それはとても助かります
では、よろしくお願い
いたします。
『もしも』
ぼくが犬だったら
捨て犬だろう
もしも
ぼくが猫だったら
ノラ猫だろう
もしも
ぼくが缶だったら
空き缶だろう
もしも
ぼくが色だったら
無色だろう
もしも
ぼくが星だったら
星屑だろう
もしも
ぼくが
ぼくでなかったら
捨て犬も
ノラ猫も
空き缶も
無色も
星屑も
もしかしたら
なくなってしまうのかなぁ
詩なのかも分からないですが、どこかに属さないとどうやらやっていけないらしいシリーズ。
前回は散歩をしながらつくりましたが、今回は一気に書き上げました。