結論は文明弱者
「夏が!好きだぁぁー!」
放課後の校舎に響き渡る女子の声、これはけして愛の告白などというベタなラブコメシーンと言うわけでもなく。俺、高山潤一の名前でもない。
だが安心して欲しい、いつもの光景である。
「唐突に叫んでも夏は帰ってきませんよー」
「私の夏に対する愛の告白に対して茶々を入れるつもりか高山潤一!」
フォローでツッコンだら怒られた、皆様あれは愛の告白らしいです。
今さらだがこの放課後の教室で夏に対して愛の告白をしているらしいこの女は家が高山潤一家の隣にある幼稚園からの幼なじみなどという是非ともラブコメに発展させたいような間柄なんかでも同じ生徒会で生徒会長と雑務みたいな間柄でもない。
唯一ラブコメに発展しそうな間柄だとしたら俺の斜め前の席がこの雪原幸...さっちゃんである。呼んだことないけど。
「第一、高山潤一は夏が嫌いなのか。夏の日差しなど浴びたら火傷しちゃう乙女肌なのか!」
「そんな乙女肌な分けないだろ!日焼けバッチコイだわ!」
「ならば吸血鬼か!私の血は寝不足睡眠不足とジャンクフードでまずいからよろしく!」
「日焼けバッチコイっていってるだろ!そんな吸血鬼いねぇよーよ。あと寝不足睡眠不足っていっしよ!そんなアピールでよろしくされても吸血鬼諦めないとおもうけどな!」
目の下のくまを指差しながら雪原は猛烈にアピールしてきた。
あ、ポテチ食べ始めた。
「そうか、私はな高山潤一夏が好きなのだ...もぐもぐ」
「汚いから食べ終わってから話そうな」
そういいながら外の景色を遠い目でながめる。
雪で埋もれた外の景色を。
「なぜだぁぁぁ!!!なぜ私はこんな雪山の孤島で余生を過ごさなければならないのだぁぁ!!湘南に行きたい!湘南でパリピもといイルマニア私はなる!!」
「勝手になってろ!湘南でも冬は冬だ、あとイルマニアは埼玉県の入間市だから湘南ではない。」
雪原発狂、机を叩く、床を転げ回る、友達やめたい。
「夏はいいぞぉー、夏になると夏コミがある、クーラーでガンガンに冷えた家でコーラとポテチで宴ができるのだぞ!」
「冬コミもあるぞ、暖房を消してガンガンに窓をあけて冷えた家でコーラとポテチをどうぞ。」
「お前はバカなのか?」
目をキラキラさせながら夏の良いところ?を説明してきたので冬でもできると伝えたらめっちゃ真顔で返しやがった。
「はぁ?高山潤一お前は人間なのか?」
続けて人間かどうかまで訪ねてきやがった。なぐりたい。
「いやいや、お前の夏にやってることは理解できたがそれを人類皆さもやってるかの如く言われましても。あと人間です。」
「かー情けない、文明の機器も扱えず自然の摂理も超越しながらただただぐーたらできるこの世の中でいまだにパソコンの電源も入れられないとは!」
「謝れ!いろんな人に謝ってその生活を悔い改めろ!あとパソコンの電源も入れられないぐらい遅れてるみたいに言うな、俺はケータイで買い物だってできるんだぞ!」
そういって俺の愛用のスライドできるやつを胸ポケットから出して見せつけた。
「あ、先生高山君がケータイ持ち込んでます!」
「やめろぉぉぉ!」
見せつけていたケータイをすぐにカバンに投げ入れチャックを閉めた。
「嘘だけど」
「嘘ぉかぁぁい!」
くっそドキドキした、くっそドキドキしたぁー皆さんも校則は守りましょう。
「それは心臓に悪い嘘だからやめてぇー」
ちょっと涙目になりながら胸を撫で下ろすと。
「高山潤一!残念だけどあなたはやっぱりパソコンの画面の電源は入れられないみたいね!」
「はぁ、パソコンの電源入れたら一緒につくだろ?」
「あなたがケータイで買い物してるって言ってる方法...ワンセグでテレホンショッピングてかタカ⚪で見た商品電話して買ってるだけじゃないの!?」
俺の疑問をよそに俺の買い物方法をあててきた。
「おおとも、最新掃除機とか洗濯機も俺が注文した。怒られたから二度と注文しないと誓ったが。雪原も気をつけた方がいいぞノートパソコン格安10円とかいいながらルーターとかわいふぁいとかよくわからんこといって詐欺られるから。」
「よくわかってないあなたが悪いわね...」
哀れな子を見るような目でみられてるんだが、俺は間違ったこと言ってないぞうむ。
「そんな事言うがお前はケータイで注文した事あるのかよ!」
「私はスマホで注文してるのよ」
「...な、雪原、お前スマホ持ってんのかよ!」
ふるふるふるふる
「?、どうした、高山潤一?」
「神だぁぁぁ!文明機器の神降臨!スゲェー!」
ふるふると震えてテキトーな事言っとく、さすがにスマホは友達が持っているので知っているが持っていないので雪原を持ち上げとこう。
「いや、あなたのお友達とか持ってるでしょ。初めて見たとか言わせないわよ」
一瞬でばれた。
「あと無理やりケータイって言ってるけど普段ガラケーって言ってるのも知ってるから」
全部ばれてた
「パソコンは本体の電源と画面の電源は別なのよ」
それは知らなかった。パソコン室のパソコンがつかない事があったけどそういう事なのかもしれない。
「すみませんでした」
「さぁ、謝りなさい、私はパソコンの画面の電源も入れられない文明弱者ですって」
謝ったよね、謝ったよね?
「私はパソコンの画面の電源も入れられない文明弱者です、ってなかなか酷い罵りだな」
「興奮するんでょ?」
「しねぇぇぇよ!いや、ホントにしないからね興奮しないからね!」
意外なパンチが飛んできたこれは交わしきれない、かわすけど「てか夏の話はどうなった!どうせならそのスマホで説明してみろよ!」
「残念だけど充電が切れたわ」
俺は聞き逃さなかった、そして鞄の中からケータイを取りだし「俺のケータイは電池残量強し、そこが文明機器の差なのだよ」
見せつけたのだ!
「文明機器としては劣ってるけどね、あ、先生」
バカめ2度はくらわん、俺は電池残量をアピールし続ける。
「高山、その手に持ってる文明機器を持って職員室に来なさい。」
「...はい」
ふるふるふるふる
今度は怯えて震えてます。
「ふふ、じゃあね高山潤一バスの時間になったわ」
そういって雪原は変える準備を始めた。俺も帰る準備をして怒られに行くか。
「ああ、そんな時間か俺は怒られてそのまま先生に送ってもらおう」
「また、明日ね。」
雪が降り積もる校舎でバスを待つ間だけ、何の意味もないけど寒さぐらいはしのげる暖かい時間のお話。