第2章:プリムの子
第2章
「んで…どういう事?」とプリムは聞いた。
ここはいつものBAR。
いつものカウンター席に、プリムは座っていた。
その隣には白い髪の少女も座る。
「確か、クルシスって慈愛の狼の名前よね?」とプリムは聞いた。
「はい…そうです。」と少女は答えた。
「貴方、どう見ても人間にしか見えないんだけど?」とプリムは少女を見渡した。
「いえ…私、狼です。人間の魂を入れた狼なんです。名前は、ソフィアって言います」と少女は答えた。
「人間の魂を!?」とプリムは驚いた。
「はい…話すと長くなるんですが…良いですか?」とソフィアは答える。
狼 SOPHIA ver.
〜残された家族〜
「私がまだ、子供の時でした。その頃の家族は、クルシス母さんとロンゾ父さん、ロクサス兄さんで仲良く森の中で暮らしていました。
でも、そんなある日の事です。
森に、5人の男達が来たのです。その男達は、皆昆虫の魂を身につけていました。
クルシス母さんとロンゾ父さんは、私達を守るために戦ってくれました。
私と兄さんは、洞窟で父さんと母さんを待っていたのです。
でも、銃声が聞こえて…」とソフィアが泣き出した。
プリムは、まあまあ…と肩をさすってあげた。
ソフィアは、話を続けた。
「その後に、5人組の男が洞窟に入ってきたのです。
でも、入ってきた途端クルシス母さんは血だらけで私達の事を守ろうとしてて、ヘラクレスオオカブトの魂を持った人間と戦いました。
ロクサス兄さんも、頑張って私を守ろうとしてて…でも、私はアイツらに捕まりました。
そして、人間の里に連れて行かれました。
飢餓の時代に、子供の狼が人間の里に居る。
それは、残酷な結果になるだろうと思いましたが…
人間達は、私を可愛がってくれました。
少ない食糧を分けてくれたり…
言葉は通じ無くても、楽しい日々だった。
でも…、内戦が始まり…
育ててくれた人間は死にました。
私の中に、人間の魂が入ってきました。
とても温かくて…。
私は、それから人間を見る旅に出ました。
長い長い旅に…。
そんな時に、クルシス母さんとロクサス兄さんが死んだと言う話を聞いたんです。
私は、急いでクルシスの森に帰りました。
木の陰から見ていたら、洞窟から母さんを猟師が運んでるのを見てしまったんです。
傍らには、ロクサス兄さんの死体もありました。
でも、他にも猟師が食いちぎられた跡があ死んでました。
猟師の話を聞いた所、もう1匹の狼を逃がした。と話しているのを聞きました。
それから、私は情報収集をしてもう1匹の弟の名前を知りました。
でも、居所が分からなくて…。」
話を終え、クリームソーダを飲む。
プリムは決心をした。
「分かった。彼に会わせてあげる。でも…見て驚かないでね」とプリムは言いドアに向かい歩き出した。
ソフィアはマスターにごちそうさまでした。とお礼を言うと、プリムの後を付いて行った。
プリムは思う。なんと言う残酷な運命。
狼に育てられた人間…
人間に育てられた狼…
5人組の男が、この子の運命を変えた。
プリムは聞いてみた。
「ねぇ、5人組の男は何の魂を持っていたの?」それは、分かりきっていた。でも、もしかしたら…って言う希望もあったが、現実とは厳しい物。
「えっと…カブトムシとヘラクレスオオカブトとクワガタとカマキリと…後1人は何だっけ?」とソフィアは言う。
カマキリ!やはり、そうか。あの時に、傷だらけで町に来たのはランドの母さん達と戦った為!プリムは悔しくて、拳を握った。
そうこうしているウチに、ランドの家の前まで辿り着いた。
外で洗濯物をしていたソルが気付いた。
「あっ…アネさん!おはようございます!んっ…その子は誰っすか?」と聞いてきた。
「あっ…この子、ランドの…」とプリムが言いかけると、ソフィアは言った。
「娘です!」と…。
クルシス母さんの…と言いかけたがソルは聞いてなかった。
ソルが真っ白になっていく…。
「ランドの……娘!?何てこった…。アネさん…いつの間にか生んだんですか?いや…こうしては居られない!みんなに知らせなきゃっ!」と家の中に入って行く。
「ちょっと!ソル!話を最後まで…」と叫ぶが、走って行ってしまった。
プリムは思った。
面倒臭い事になったと…。




