第1章:ランドの娘?
第1章
「ルナお母様…ランドは起きましたか?」と朝から家に訪ねるプリムがいた。
よく見ると、ルナの目の下には隈が出来ている。あまり良く寝れないようだ。
「毎日、ランドに会いに来てくれてアリガトウね」とルナは笑顔で言うが、元気は無い。
あの昆虫3兄弟の戦いから1ヶ月あまり経っているが、未だにランドは目を覚まさない。
体への負担や怪我が原因で、植物人間になってしまったランド。
プリムは毎日、ランドに会いに来ていた。
「今、お茶入れるから上がって」と中に受け入れる。
外では、元気の無い母の為に、ソルが洗濯をしている。
中では、ルルがご飯を作ったりしていた。
プリムは家の中に入ると、台所に向かう。
ここであの朝、3人でご飯を食べたんだ。ランドは魚の骨を喉に引っ掛からせてたっけ?
ルナがお茶を運んで来て驚く。
「プ…プリムちゃん?何で泣いているの?」
いつの間にか、プリムの目から涙が出ていた。
「プリムちゃん…大丈夫だって。ランドは目を覚ますわよ」と力の限り笑顔でルナは言う。
「ほら、今日は美味しいハーブティを作ってみたの!飲んで」とルナはプリムにお茶を差し出した。
プリムは涙を拭き、椅子に座るとハーブティを一口飲む。
温かくて心が休まる香り…プリムは落ち着いた。
大体、朝から昼にかけてここでお茶を飲むことが日課になっていた。
お昼になれば、ルルが料理を作る。
けれど、いつも作りすぎてしまう…。食べ盛りの息子は居ないと言うのに…。
その度に、ソルがいつもより多くご飯を食べていた。
昼から夜にかけては、ソルとルルが町へ仕事に出掛ける。
2人が帰ってくるまで、プリムはランドの看病をずっとしている。
2人が帰って来て、ご飯を食べてホテルに帰る。
これで1日が終わっていた。
ホテルに帰る途中に、町のBARに寄ってみた。
もう夜が遅いと言うのに、まだBARはやっている。
プリムはドアを開け中に入った。
そして、いつもの席に座る。
マスターが、プリムに気付きクリームソーダを運んで来た。
マスターはプリムから、大方の事は聞いていた。
いつ見ても、プリムに元気は無かった。
マスターも時々、ランドの家に行ってはランドの顔を見ていたりしていた。毎日、何も変わらず寝ているランド。
兄弟がアクアランドに行く日の夜に、ランドは酔っぱらって獣人化をして店を破壊しようとしてたな…とマスターは思う。
あの日は楽しかった。ランドが初めてこの店に来たとき、食い逃げかと思ったら、後でお金を払いに来るし。
なのに、盗賊の親分だ!とか言ってたなぁ。とマスターは吹き出した。
でも、今目の前に座っているプリムの隣には誰も居ない。
いまにでも、ドアをバンッと開けて元気に入って来るんじゃないかと、今でも思う。
プリムは席を立つと、お金を出そうとしたがマスターは拒否をした。
プリムはペコッと頭を下げて店を出ていく。
この店に来て、何も喋らないプリムにマスターも少し元気が無かった。
また、夜道を歩くプリム。ホテルの前に着き顔を上げた。
あの夜…ランドが、あの窓から入って来てクルシスの花をくれた。
今でも、窓に鍵はかけていない。
いつでも、ランドが入れる様に…。それに5階だし、鍵をしなくても誰も入れない。
また涙が溢れそうになる。
その時であった。
ドンッと横に引っ張られる感覚に陥る。
プリムは横に倒れた。
すると、まだ若い少女の声が聞こえて来た。
「あぁぁぁ、スイマセン!よそ見をしていた者で!スイマセン大丈夫ですか?」と少女がプリムに手を指しのべた。
プリムはその手を、握り起こしてもらう。
プリムは少女の顔を見た。まだ少女は初々しい顔をしていた。
髪は綺麗な白髪で、白いマントをはおっていた。
髪は、肩の方まで長い髪をしている。
少女は頭を下げると、1枚の紙が落ちてきた。
プリムはそれを拾ってあげると、そこには"ランド・ウルフを探してます"と書かれていた。
不意にプリムは言葉に出してしまった。
「えっ?ランドを探してるの?」と言った後にしまったと言う顔をした。
下に書かれている文字。
"懸賞金10000ルリ"
少女は目を光らせた。
「お姉さん…今、何て言いました?彼を知ってるんですか?」と聞いてくる。
「いえっ…その…人違いかなぁ〜って思ったんだよね。」とプリムは曖昧な答えをする。
「お願いします!お姉さん!私…私、彼に会いたいんです!お金も倍出しますから、彼の居所を教えて下さい!」と遂には泣き出す。
「えっ…いや…泣かないで?ねっ?ほら、今日は遅いから明日、会いに行こうよ…ねっ?お金も要らないし。だから、泣かないで」とプリムは泣き出した少女に話しかける。
「でも、1つ聞いて良い?貴方は彼の何なの?」とプリムは聞いてみた。
もしかしたら、私…昔出ていったランドの娘です!とか言っちゃったりしてっ!とプリムは妙な妄想をする。
少女が答えた。
「私、娘です!」
その答えに、プリムはガーンと頭の中で何かが落ちる音がした。
しかし、少女が続ける。
「クルシス母さんの」