お前に足りないもの
こういう頭悪い作品が書いてて一番楽しい。
正直最後の一言を言わせたかったがために残りの全部がある感。
めんどくさいことになった
「はぁ!?何その態度!?」
「え、いや、だから・・・」
「人がせっかく真剣に、真面目に話をしているのに聞いてなかったの!?」
「いや聞こえてるし、わかってるよ、でもね」
「あぁもうわかった!もう一回言えばいいんでしょ!もう一回言えば!!」
「は、ちょ」
「私、東城彩香は!あ、あんたのことが好き!一目惚れしたの!!だから・・・私と、付き合って!!」
「え、嫌ですけど」
「はぁああああああ!!!!?????」
5月18日水曜日
今日の高城市は三日ぶりの快晴。しばらく雨続きだったので久々の太陽がまぶしい。
こんな日は何かいいことが起こりそうな予感がする。
「・・・おかしい・・・ありえない・・・なぜ・・・?」
「うーんと、さ」
「この控えめに言って学年、いや学校一の美少女であるこの私が告白しているのに・・・」
「多分なんだけど」
「ありえない・・・夢・・・?」
「告白する相手間違ってるだろお前」
「間違い?・・・そう、これは何かの間違い・・・」
「おーい」
「だってこの控えめに言って衆議院選挙に出たら開票後即当確出るレベルの美少女であるこの私が」
「おい!」
「っ!ちょっと!耳元で大声出さないでよ!」
「いやだからさ、告白する相手間違ってるだろお前」
「は?何それ私を馬鹿にしてんの!?」
「え、いやだってさ・・・一応聞くけどお前女だよな?」
「ふざけないで!どっからどう見たって女でしょうが!控えめに言って私48が成立するレベルの美少女でしょうが!」
「声がうるさいよ・・・うん、だよなそーだよな」
「だいたい男なのにこんなスカートはいてたら気持ち悪いじゃない」
「うん、そーだよなー」
「・・・何が言いたいの?」
「うーん、もしかして気づいてないのかもしれないから一応言っておくけど」
「何?もったいぶらないで!」
「私も女なんだけど」
「知ってる!!」
5月18日水曜日
今日、学校に行く途中ふといつもと違う道を通ったら100円が道に落ちていた。
たかが100円だろうが小遣いの少ない私には貴重な100円だ。
だが果たしてこの100円を拾ってよいものだろうか。
100円が落ちているということは落した人がいるということだ。
もしこの100円が落した人にとって大事な100円だったらどうしようか。
落した人の妹が生きるために必要な手術の費用が100円足りなかったら。
落した人が銃で撃たれたとき胸にこの100円が入っていれば助かっていたら。
この100円で、救える命がある。そう考えた私はあえてその100円をスルーした。
明日も、この世界が優しさに包まれると信じて。
その100円は私の後ろを歩いていた中学生が拾った。
「えぇ・・・承知の上で告白してきたわけ?」
「そう、悪い?」
「いや悪いだろ、女同士じゃねぇか」
「・・・はぁ」
「んだよそのでけぇため息は」
「ねぇ由紀」
「なんだよ」
「19世紀のフランスを代表する哲学者、ローヴェンス・ヴァン・ムエールが著書『性愛についての簡潔な報告書』に記した次のような格言をご存じ?」
「恋という疾患は愛の営みをもって治療を行う」
「恋という疾患は・・・って、なんで知ってるの!?」
「お前にゃ関係ないだろ、で、それがどーした」
「だから!貴方には私の病気を治す義務があるのよ!」
「日本国憲法のどこにそんな義務が載ってんだよ」
「そう、恋という病気をね!」
「こいつ人の話きかねぇな」
「わかった?私のいいたいこと」
「全然わかんねぇ」
「あぁもうにぶちん!」
「私が何をしたっていうんだ・・・」
「いい?だから、この控えめに言ってヒマワリが太陽じゃなく私のほうを二度見するレベルで美少女であるこの私が、貴方に恋をしたのよ!わかる?恋!」
「だからそれが分からないっていってんだよ!」
「何がわかんないの!?あんた日本人でしょ!?」
「そもそもなんで私なんだよ、お前に言い寄ってくる男子なんていっぱいいるだろ」
「えぇそうね、生まれてこのかた、告白された回数なんて多すぎて途中から数えてないくらい」
「だったら・・・」
「でも!」
「なに?」
「・・・私から告白したのは・・・あんたが初めて」
「えっ・・・」
「・・・・」
5月18日水曜日
いつもと違う道を通ったせいか今日は教室についたのが始業ぎりぎりだった。
まぁ間に合ったからよしとしよう。席に着いた私は教室を見渡した。
誰もいない。教室には窓から太陽の光が差し込み、時折吹き付ける風が窓を揺らす音だけが響いていた。
こんな話を聞いたことがある。60年ほど前、今の岩手県の赤志部村で住人200人が姿を消した。
消えた住人に共通点はなく、ほんとに突然に消息を絶った。
手掛かりは全くなく、消えた住人は髪の毛一つ見つかっていないそうだ。
岩手県の赤志部村といえば昔から天狗信仰が盛んな土地だ、
だから天狗の軍団に攫われたんじゃないかなんて話もあるみたい。
60年たった今でも未解決の謎のまま。
ふと窓の外に目をやる、生徒や先生が体育館に集まっている。
あぁ、今日は朝会の日だった。
あの100円、拾っておくべきだったなぁ。
あと岩手県の話は全部妄想。
「・・・・」
「・・・・えと」
「しょうがないでしょ!」
「はい!」
「・・・好きになっちゃったんだから」
「あー・・・・」
「私だってね、なんであんたなのって、ずっと、ずーっと悩んでた」
「んー・・・」
「我慢してたの!ずーっと、ずーっと・・・・相手が女なのに、そんな感情持つなんておかしいなんてわかってるよ、でも、私、もうどうしても我慢できない・・・もっと近づきたい、ずっと見ていたい、この手で触れたい、その思いが、もう抑えきれないの・・・我慢できないの!」
「東城・・・」
「だから・・・お願い、由紀」
「・・・」
「私と・・・恋人にな」
「嫌ですけど」
「はぁああああああ!!!!?????」
5月18日水曜日
一時限目の数学、課題をやってこなかったらすごく怒られた。
二時限目の古典、予習をやってこなかったらすごく怒られた。
三時限目の化学、授業中寝てたらすごく怒られた。
四時限目の地理、英語の予習をしていたらすごく怒られた。
五時限目の英語、予習が中途半端ですごく怒られた。
六時限目の体育、バレーボールがすごく楽しかった。
放課後、すごくめんどくさいことになった。
「この!控えめに言って私が乗った電車の車両だけ乗車率が200%になっちゃうレベルで美少女のこの私にここまで言わせといてふるなんてありえなくない!?」
「いやだからさ、なんで私なんだっての」
「え?」
「私の、どこに、お前みたいな美少女様が惚れる要素があるんだよって、私よりいい男も女もいっぱいいるだろ」
「・・・私があんたに惚れた理由が知りたいわけ?」
「まぁそうだな」
「・・・それ言ったら付き合ってくれる?」
「いや意味わかんねぇし、そんな約束できるわけないだろ」
「じゃあ言わない」
「あ、じゃあいいです」
「えっ?そこ引くの!?言わせなさいよ!」
「なんなんだよおめーは!胸倉つかむな!!」
「私があんたに惚れたのはね」
「言っちゃうんだ」
「先月の化学の時間、化学室に忘れた私の教科書を持ってきてくれたの覚えてる?」
「あぁ・・・そんなこともあったような」
「それまでろくに話したこともなかったから気づかなかったけど、その時・・・私は気づいてちゃったの」
「気づいた?」
「あんたの・・・」
「・・・」
「八重歯」
「・・・」
「・・・」
「・・・は?」
「やえば」
「いや漢字が読めないわけじゃねーし!」
「あんたの!その!綺麗な八重歯に気づいてしまったの!」
「え、えぇ・・・・」
「あのときあんたの八重歯を知ってから、もう私の頭はそれでいっぱいなの」
「はぁ」
「私、もうどうしても我慢できない・・・もっと近づきたい、ずっと見ていたい、この手で触れたい、その思いが、もう抑えきれないの・・・我慢できないの!」
「そのセリフさっき聞いたぞ!てかそれ私の身体とかじゃなくて八重歯のことだったのかよ!」
「あんたほどきれいな八重歯を持ってる人、私みたことない」
「あ、それはどうも」
「ねぇ、お願い由紀、私と付き合って!そして・・・思いっきり八重歯を触らせて!」
「断るに決まってんだろ!なんちゅー告白じゃ貴様!」
「・・・どうしてもだめ?」
「普通に嫌です」
「うぅ・・・」
「てか、だいたいそれ私じゃなくて私の八重歯に惚れたってことだろ?最悪八重歯さえありゃ私がいなくてもいいってことじゃないのか?」
「それは違う!確かに私はあんたの八重歯が好きだし魅力的だと思ってるよ!」
「お、おぅ」
「でも・・・それはあくまできっかけであって、私が好きなのは、そんなきれいな八重歯を持ってるあんたなの」
「うーん・・・」
「でも・・・もういいや」
「ん?」
「なんか言いたいこと言ったらすっきりしちゃった、ごめんなさいね、無駄に時間取らせて」
「お、おぉ、ずいぶんあっさりだな」
「素直にOKしてくれるなんて思ってなかったし・・・それに、好きに、なっちゃったのは、私、自身のせいだし」
「・・・」
「ほんとに、ごめんね、こんなの、勝手だけど・・・今日の事は・・・忘れて、じゃ」
「おい、まて!」
「っ!」
「その・・・なんだ、お前の言う通り私は一向に悪くないし、むしろ被害者といっていい・・・だた、その、さすがに、女に告白されるなんて思ってもみなかったから、その、少し言い過ぎた部分もあるし、それに・・・女の子泣かせたなんて、さすがに気分が悪い」
「なっ、泣いてない、泣いてないし!」
「だから・・・その・・・」
「・・・?」
「・・・友達、せめて、友達になろう!な?」
「友達?」
「ほ、ほら、何事にも順序ってあるじゃないか、だから・・・あぁいや、別にそのあと恋人になるとかそういうのじゃなくてえっと」
「・・・ふふっ」
「え?」
「優しいね・・・由紀は」
「あっ・・・・」
「・・・わかった、今日のところは友達で勘弁してあげる」
「あ、あぁ・・・ちょっとまて、今日のところはってなんだ」
「私、あきらめないから!」
「おいまて!おい!あぁもうなんなんだよ!」
5月18日水曜日
拝啓、父上、母上様
非常にめんどくさい友人ができましたが、私は元気です
敬具
「由紀!部活オフでしょ?!ローゼンの新作のクレープが今日かららしいからいくよ!」
「えぇー、今日はゆっくりしたいんだが」
「ノープログレムよ!ほら!さっさと立って!」
「意味わかんねぇよ!おい!袖引っ張るな!」
「ゆっきとさーやさぁ、最近急に仲いいよね」
「付き合ってんじゃないの?」
「えー!超お似合いじゃん」
「式には呼んでねー」
「お前ら勝手なこと言うな!」
「ほら!いいからいくの!」
「あーもう!ほんとお前」
めんどくさい!
5月18日水曜日
少し前の私だったら、今日の事は泣いて喜んでいただろう。
あいつはきれいだ、すごくきれいだ。
女の私から見ても、あいつはほんとうにきれいだ。
透き通るような白い肌に少しウェーブがかったロングヘアー、すらりと伸びた脚に滑らかな指先。
初めて出会ったとき、私はその姿に一瞬で心を奪われた。
でも、これだけの容姿の女の子だ、きっと恋人もいるに違いない。
それに、私は女だ。女が女にこんな感情を抱くなんて間違ってる。
だから、私はこの思いを「憧れ」だと思うようにした。
私は遠くから彼女に憧れ続けた。
下手に近づいて、この思いが知られてしまうのが怖かった。
でも、私はそれだけでよかった。幸せすら覚えていたのかもしれない。
ただ、私は知ってしまった。学校の身体測定の日、保健室であいつは制服を脱いでいた。
そこには私の憧れがあるはずだった。だが、私は見てしまった。
あいつは着やせするタイプだと、なぜか信じている自分がいた。
けれど、私は知ってしまった。
その日以来、私はあいつに憧れるのを止めた。
あぁ、ほんとうにおしい、ほんとうに、あぁ、ほんとにあいつもうちょっと・・・
おっぱいおおきかったらなぁ。