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逃亡

何の訓練も受けていない現代の一般人が、夜の闇の中を走り続けるのは、自殺行為に等しかった。

道は見えず、地面の感触だけが頼りだった。いくら舗装された道とはいえ、人気の少ない山道、アスファルトはひび割れ、時折それに躓いては転び、道を誤り草地に入っては後ずさる。

もし、次の一歩で崖に踏み出してしまったら、と思うと足に重しがついたように遅くなる。

それでも、走る事を止めるわけにはいかなかった。


どれぐらい走ったか分からないが、不意に大きなナニかに躓きド派手に転んでしまった。

すぐさま立ち上がろうとしたが、出来ず、痛みで思わず呻き声を上げた。

後ろを振り返ると、人工的な灯りがユラユラと動いている。

ボクは歯をくいしばると、腕の力だけで、藪の中に這って行った。


灯りはどんどん近づいてくる、ボクはその正体を確かめる事が出来なかった。ただこちらには気付かずに通り過ぎてくれと願うばかりだ。


一際強くボクが潜んでいる藪を灯りが照らし出した。

地面に体をめり込ませんばかりにボクは這いつくばり、息を止めた。

灯りはボクに気がつく事もなく、一定のスピードを保ったまま通り過ぎて行った。その後に、花のような甘い香りが漂った。

徐々に暗くなっていく中で、ボクはゾッとした、灯りが通り過ぎる際に全く音がしなかったのだ。足音一つと無かった。それから辺りに漂ってる花の香り、落ち着く香りだが、それがさらに不気味さを演出しているようだった。


こらからどのような行動を取ろうかと考えを巡らせる。

(ここに居てはダメだ、早く逃げろ)

と思う気持ちと

(灯りは通り過ぎた、ここで朝まで待て)

という気持ちがせめぎ合い、ボクは何もできずにいた。

どれだけ考えていたか分からないが、不意に足の痛みで現実に引き戻された。

ボクは体の力を抜くと、まずは傷の手当だなと思った。


そろそろと顔を上げて辺りを窺う。

異常はなさそうだ。帆布製の肩掛けカバンの中からスマホを取り出し、明かりを点ける、その場に座ろうとボクはゆっくりと体を起こした。

その時だ、視界の端にボンレスハムのような腕が見え、それからドラム缶のような巨体が確認できたところでボクは声も無く気を失ってしまった。


つづく



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