~怪物~
「浮気だね」
戒の所に泊まって、私は朝早くアパートを出て家に帰った。家に入ってすぐ百合に相談しようと電話を掛けたらいきなり浮気発言をされた。
浮気?
戒が、私の知らない女と付き合っている?
「明らかに浮気でしょう?そんな態度とられたら。」
「そ、そうだね。」
ちゃんと聞かなきゃ、相談にのってもらってるのに。
「そういえば、聞いた?真由美のこと。」
百合の質問に私はいいえと答えた。
「真由美、元彼が住んでいるアパートに押し入って持っていた包丁で刺して警察に捕まったって。」
真由美が、捕まった?
昨日話したばかりなのに人を殺したなんて、今の私の頭の中はいろんなことばかりでついていけなかった。
無意識に電話を切った。たった一日で暗いことばかりだ。気持ち悪い。怪物になってしまいそうなくらい・・・。
なんて、怪物になるなんて大袈裟よね、と思って鏡を取って覗いてみれば。
「ヒッ!!」
私の顔が・・・!
醜い本物の怪物に!
鏡を遠ざけてもう一度覗いて見るといつも通りの顔にホッとした。今日は休んで、明日また戒の所へ行こうと思った。
けど、自分の中にある卵の殻に少しずつヒビが入っているなんて、私はまだ気づかなかった。