~友達~
「彼と別れた。」
いつもののカフェで友人二人と珈琲を飲んでいると明るくてお喋りな伊藤真由美が珍しく暗かったのでしっかり者の虻川百合が聞いてみると恋人とのことを発言した。
「は?なんで?あんなにラブラブだったじゃん。」
私と百合は驚いた顔で真由美を見た。二人はあんなに愛し合ってたのに、真由美は暗い顔のまま口を開いた。
「別の女がいたのよ、しかも二人。あんな男だななんて思わなかった、絶対許さない。」
私も百合も開いた口が塞がらないまま真由美を見ていたが、百合はやっと声を出して励ますように見た。
「別れて正解!男はそいつだけじゃないんだからもっといい彼氏見つけて見返してやんな。」
そうだよと私も頷くと二人は私を羨ましいと言うような目で見た。
「あんたはいいよね。結構続いてるんでしょ?」
真由美の言葉で私は幸せな顔で二回も頷くと百合は私を指差した。
「でも、あんたの彼氏も注意した方がいいよ。愛してるなんて嘘でも言えるからね。」
そうだ、人の心なんて読めることなんてできないんだから本当に愛してるとは限らない。百合の言葉が頭の中で繰り返した。何度も、何度も・・・。
二時間ほど話して別れた後戒の元へ会いに行こうと足を進めた。築三十年のあのアパートへ。
合鍵を使って扉を開くと戒は電話中だった。私が来たことに気づくと急いで電話を切った。
「来るなら連絡くれてもよかったのに」
戒は玄関で靴を脱いだ私を抱きしてめてキスをした。
「ごめんごめん、今の友達?」
「あ、ああ、そう友達。呑みに行こうってうるさくてさぁ。」
嘘だ。
この人は気づいていない、嘘をつくとき口元を触る癖がある。私は気づいていることにこの人は知らない。そう考えていると、私は名前を呼ばれてハッとした。
「な、なに?」
「今日泊まってく?」
「あ、うん。」
最近SEXしていない。ベッドに入ってもただ一緒にねているだけで、戒は求めて来ない、キスする回数も減ってきた。泊まる回数もデートする回数も何もかも減ってきた。
まさか別の女がいる?
でも、証拠がないから決めつけることはできない。
また、百合の言葉が繰り返した。何度も何度も・・・。