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  作者: 水野 すいま
99/124

第99話 効果

しばらくの沈黙の後、町は混乱に包まれた。

最初は疑ってはいたものの、燃がビルを壊したことによって実際にその光景を目にしてしまい、信じざるを得なくなったのだ。

そしてそのビルは前にリンが狙撃場として使っていた廃墟、つまり今は何にも使われてなく、誰も居ないのだ。

おそらくは警察も恐怖により近寄ってこないだろう。

「・・・ッ!!げほっ、ごほっ、げほっ!!」

燃が突然激しく咳き込むと口に当てた手から血が滴り落ちた。

そしてまるでそれを待っていたかのように、突然瓦礫が爆発したように四方に飛び散り、その中から剣を構えた洋子が姿を現した。

洋子は地面を蹴り、燃に向かって一直線に飛び上がる。

燃が苦しそうに咳き込みながらも掌を洋子に向けるとそこから衝撃波を放つ。

それを洋子はかろうじて剣で受けるが、空中なので踏ん張りどころが無く、そのまま地面に落下していった。

そして何を思ったのか、燃もその後を追うようにしてそのすぐ近くにゆっくりと降りていった。

燃が地に降り立つと洋子が一気に飛び起き、剣を横凪に振るった。

「くっ・・・!!」

それをバックステップで避け、燃は纏っていたエネルギーを四散させると、周りの気を収束した。


「・・・彼はずいぶん控えめに戦っているんだね。」

燃達の戦いの様子を見ながら余裕の笑みを浮かべて俊平が言った。

「・・・?」

リンがその言葉に反応し、燃の方を見る。

確かにかなり控えめに戦っている。

エネルギーをほとんど使わずに気を駆使して戦っているのだ。

「まあ、当たり前といえば当たり前か・・・健一との戦いに備えているんだろうね。」

備え・・・確かに普通ならばそれは必要なことだろう。

しかし燃のエネルギーは無限にあると燃からは聞いている。

つまり備えとしてエネルギーを使わないということは燃にとっては不利となるはず。

リンがそんなことを考えていると突然リンの隣の土が弾け飛んだ。

「ほらほら、考え事していると死んじゃいますよ。まあ、どちらにせよ結果は変わらないと思いますけど。」

レーザーガンを構えた俊平が言う。

「確かに今の状態だと劣勢かもしれないね。でも、あまり私を甘く見ない方がいいよ。」

リンはそう言って右手に持っていた剣を捨て、懐からレーザーガンを取り出した。

今まではこれを使うと町の住人に被害が出るかもしれなかったから使えなかった。

しかし今なら住人がいない・・・つまりは思う存分に使えることができるのだ。

「へえ・・・確かにリンさんは昔からレーザーガンを使うのは得意でしたね。しかし・・・」

そう言いながら俊平がリンに一歩、歩み寄った瞬間、俊平の頬から血が滴り落ちた。

リンが俊平に向けて撃ったのだ。

「油断していると危ないよ?これはね、ただのレーザーガンじゃないの。燃の改造が施してある。」

「・・・・・・なるほど。だから町の住人がいたときは使わなかったのですか。・・・わかりました。本気でお相手します。」

そう言うと俊平は体勢を低くし戦闘態勢をとった。

リンも身構える。

次の瞬間、俊平はリンの視界からは消えていた。

「!?」

急いで辺りを見回すが、どこにもいない。

「ここです。」

後ろから声がし、急いで振り返るがすでに遅く、俊平の回し蹴りがリンのわき腹の入っていた。

「がっ・・・!!」

リンは痛みのあまりうめき声を上げ、その場にうずくまった。

しかしその痛みをこらえ何とか腕を上げるとそこからレーザーガンの引き金を引いた。

俊平はそれを避けると地面を蹴って一気にリンとの間合いを詰める。

「くっ・・・!!」

ギリギリのところで俊平の拳をかわしたリンは左手で持っていた剣を俊平目掛けて横凪に振るった。

俊平はそれをバックステップで避け、地面に手をついてすぐに体勢を立て直す。

が、目の前にはレーザーガンを構えたリン。

すぐに体を捻るが一瞬間に合わず、弾は俊平の肩を貫通した。

「ぐっ!!」

俊平はうめき声を上げるが、痛みをこらえて再び地面を蹴り、リンとの間合いを詰める。

その途中で俊平はリン目掛けてレーザーガンを投げた。

「!?」

リンは一瞬驚いた表情をしたが、すぐに気を取り直し、冷静にそのレーザーガンを剣で弾いた。

しかし、その一瞬で俊平を見失ってしまった。

「あぐっ・・・!!」

すぐに辺りを見回そうとするが、突然起こった腹部の激痛によってそれを止められてしまう。

自分の腹を見るとそこにはリンの腹に突き刺さった剣とそれを掴んでいる俊平の腕。

「・・・ッ!!これは・・・私の・・・剣・・・?」

先程、俊平の撃たれたのは体勢を立て直すときに下に落ちていた剣を拾い、反応が遅れてしまったためだったのだ。

「その通り。僕に武器がないと油断しましたね。」

そういって俊平がリンの腹を貫通している剣を引き抜くと、そこから血が噴出すと同時にリンがうつ伏せに倒れた。

「くっ・・・!!」

力を入れて立ち上がろうとするが、激痛により力が入らない。

リンは普通の人間だ。

妖との合成体でもエネルギーの使い手でもない。

つまりこれは完全な致命傷なのである。

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