第98話 警告
「・・・・・・」
何も考えずに振り下ろされてくる剣戟。
それを燃がエネルギーの剣で受け流し、洋子目掛けて剣を横凪に振るう。
しかし洋子はそれを容易く避け、上段から一気に燃目掛けて長い剣を振り下ろす。
燃は後ろに跳んでそれを避け、そこからエネルギーを放出して衝撃波を放つ。
洋子はそれをたやすく避けると、燃との距離を一気に詰め、燃目掛けて鋭い突きを繰り出した。
「くっ・・・!!」
燃はそれをギリギリでかわし、剣を持っている腕をつかんで捻り上げた。
間接を極めているのだから普通ならばここで反撃の余地は無いはず。
しかし洋子は捻り挙げられた手に持っている剣を手首だけで振るった。
「・・・ッ!!」
燃は急いでバックステップでそれをかわそうとするが、わずかに間に合わず、わき腹を剣が掠める。
「はあ、はあ・・・」
先ほどからこのような攻撃で傷を負わされている。
洋子は相当厄介な相手だ。
他の戦いを見ても全員苦戦を強いられている。
もうこれ以上は時間をかけられないようだ。
「よし・・・!!」
燃は覚悟を決め、地面を蹴って洋子との距離を一気に詰めた。
案の定、洋子は先ほどと同じようにフェイクも何もなしに容赦なく上段から切り下ろしてきた。
しかしその攻撃は防御体制を整えていない燃には当たらずに途中で止められる・・・燃の背中から生えた赤い翼によって。
洋子の手をつかむと燃は再び捻り上げた。
先刻と同じように洋子は手首だけを使って剣を振るうが、今度は燃はそれを避けずに見事に逆袈裟が決まる。
いくらエネルギーををまとっているとはいえ、これは深手だ。
しかし燃はそんなことは気にせず洋子のもう片方の手をつかみその二つの腕をエネルギーで作り上げた紐で縛り上げた。
燃は両手の掌を完全に無防備となった洋子の腹に当て、容赦の無い衝撃波をその状態から放った。
洋子はもちろん抵抗も何もできずに吹き飛ばされ、校舎の壁にぶつかり、その壁を崩す。
攻撃はそれだけに止まらず、燃は空中に飛び上がると、そこから洋子のいる瓦礫目掛けて2発衝撃波を放つ。
その衝撃波によって校舎の壁はさらに崩れ、瓦礫がさらに積み重なった。
その様子をしばらく見ていた燃は何を思ったのか、突然エネルギーで拡張スピーカーを作り上げた。
前に良平が修学旅行の時に使っていたスピーカーと同じ形をしている。
『この町の住人の皆さん、俺は今指名手配中の荒木燃です。』
燃がそのスピーカーに向けて声を出すと、その声は拡張され、燃たちの住んでいる町全体に響き渡った。
外に出ている町の住人達は一斉に燃の居る方に目を向け、家の中や建物の中に入っていた住人は何事かと慌てて出てきた。
おそらくこの声を何かのいたずらなどと考え疑っているものなどはまだ建物の中に居て笑っているのだろうが、すぐに噂が広まり慌ててこの町から出て行くことだろう。
『大変いきなりなのですが、今からこの町を爆破しようと思います。死にたくないものは即刻この町から出て行ってください。』
その言葉を聴き、野次を飛ばすもの、冗談だと思い笑っているもの、相手にせずにまた再び買い物や立ち読みに没頭し始めるもの、していることは様々だが、どれも燃を相手にしていなかった。
燃はその様子を見て大きくため息をつき、再びスピーカーを構えた。
『今からその証拠をお見せします。』
そう言って燃は遠くにある高いビルに向かって手を掲げた。
そして一気にエネルギーを収束するとその状態から巨大な衝撃波を放った。
ビルの上層部に衝撃波がぶつかるとその部分からビルは崩れ落ちていった。




