第96話 スイッチ
「くっ・・・!!」
俊平がギリギリのところでリンの剣をかわす。
リンの手には二本の剣。
それに引き換え俊平の手にはレーザーガン。
一見俊平が有利のように見えるが、一度近づいてしまうとなかなか狙いが定まらない。
リンに狙いを定めて引き金を引くが、やはり避けられてしまう。
俊平はほぼ反射神経だけで地面を蹴って後ろに跳び下がった。
しかしわずかに間に合わなかったのか、リンの剣が俊平の腹をかすめ、わずかに傷ができる。
「・・・ッ!!・・・腕を上げましたね。」
俊平は切られた腹を押さえながら体勢を立て直した。
切られた腹からはわずかなれど血が出ていた。
「何言ってるの。前から私の方が上だったじゃない。」
そう言ってリンは片方の剣を逆手の持ち替え、俊平のいる方向に走り出した。
「そうでしたか?」
俊平が走ってくるリン目掛けて引き金を2、3回引く。
しかしリンはそれを逆手に持ち替えた方の剣ですべて弾いた。
「・・・!!」
リンが剣を振り下ろすと、俊平は横に避けてそれをかわす。
そしてそのまま転がり、途中で手をついて反動を利用して立ち上がった。
「・・・やはりこのままではダメですね。」
体勢を立て直してしばらく考えた後、俊平が呟くようにしていった。
「・・・?」
リンは言っていることのわけが分からず、黙って俊平を見る。
懐からスイッチのようなものを取り出し、俊平はそれを押した。
すると腕や足についていたリストバンドがはずれ、地響きを立てながら地面に落ちた。
「まさか・・・!!」
リンがすぐに剣を構える。
が、間に合わずに高速移動してきた俊平の膝蹴りをまともに食らってしまった。
「ぐっ・・・!!」
吹き飛ばされたリンは途中で手をついて何とか体勢を立て直した。
「光太郎さんたちと同じものを・・・!?」
腹を押さえながら苦しそうにリンが言った。
「はい。」
にこやかに俊平が言う。
「燃!!なるべく早くして!!」
燃の方を向き、リンは声を張り上げた。
「分かってるって!!」
傷だらけの燃がそう返してきた。
その声には微妙に焦りが見える。
「戦い中に余所見なんかしていて良いんですか?」
「!?」
すぐ後ろからそんな声が聞こえ、振り向くとそこにはレーザーガンをこちらに向けた俊平の姿があった。
リンは俊平が引き金を引く前に剣の柄の部分でレーザーガンを叩き、自分から狙いをはずした。
外れた弾はリンの方をかすめ、地面をえぐった。
そのままリンは剣を俊平目掛けて横凪に振るう。
その攻撃を銃身で受けると、俊平は拳をリンの鳩尾に捻り込んだ。
「かはっ・・・!!」
リンの体はくの字に曲がり、地面を転がった。
すぐに立ち上がろうとするが吐き気とめまいによって足に力が入らない。
「くっ・・・」
四つん這いのまま、かろうじて顔だけ俊平に向けた。
俊平はこの状況を楽しむようにして笑っている。
「そうだ。一つ忘れてましたね。僕の仲間のためにもしておかなければ・・・」
そう言って俊平はポケットから新たにスイッチのようなものを取り出した。
「・・・それは?」
「光太郎さんと良平のリストバンドのコントロール装置です。」
リンが訊くと俊平はにこやかにそう言ってそのスイッチを押した。