第95話 相性
「はあ!!」
良平が逆手に持ったナイフを美樹の顔目掛けて殴るようにして切り付けた。
美樹は顔を少し後ろに逸らしてかわし、ガトリングガンに変えてある右腕を良平に向ける。
しかし良平はそれを読んでいたのかすでに美樹の足元にかがんでおり、ナイフを横凪に振るって美樹の足を切った。
「くっ・・・!!」
すぐに美樹はバックステップで後ろに下がり、体勢を立て直した。
切られた足からは中に詰まっているコードが見える。
しかしコードまで切れていないということは良平の攻撃を無理やりに避けて最小限にとどめたようだ。
美樹はすぐにガトリングガンを良平に向けて撃った。
良平はそれを再び先読みしていたのか、すでにサイドステップで避けており、弾は地面を弾き飛ばした。
避けた良平はそこからに地面を蹴って一気に美樹に詰め寄り、足を払う。
そしてそのまま転んだ美樹目掛けてナイフを振り下ろす。
しかしその攻撃は途中で腕の激痛によって止められた。
良平がとっさに自分の腕を見るとそこには普通ではありえない方向に曲がった美樹の足があり、その踵から出た小型ナイフが良平の腕に刺さっていた。
「・・・っ!!」
すぐにそれを引き抜き、良平は地面を蹴って後ろに下がった。
「なかなかサイボーグってのは厄介だな・・・」
腕の傷口を押さえながら良平が言った。
「あんたこそ。その先読みは敵からしたら相当いやらしいよ。」
変な方向に曲がった足を元に戻しながら美樹は言い返す。
「そう言ってもらえるとありがたいな。先読みってのはいやらしく思われてこその技だからな。」
そう言うと良平は地面を蹴って一気に美樹に詰め寄り、ナイフを突き出した。
突き出した方の手で背中にひじを立て強烈な膝蹴りを叩き込む。
後ろに衝撃を逃がさないようにしたのだ。
「がっ・・・!!」
その攻撃が美樹の腹に当たると、美樹の体はくの字に曲がり、内部で何かが壊れるような音がした。
妖の細胞の混じった足による一撃である。
相当なダメージが与えられただろう。
良平は攻撃の手を緩めず、その場で腹を押さえてうずくまっている美樹の背中をサッカーボールを蹴飛ばすような感覚で蹴り飛ばした。
美樹はすさまじい勢いで塀にぶつかり、その塀は美樹がぶつかった所を中心に崩れ、美樹の体は一般道に出た。
「・・・・・・燃!!一般人はどうする!?」
その様子を見て良平が燃に聞こえるように叫んだ。
「分かってる!!ちょっと待て!!」
燃は洋子の攻撃を受けながらそう言った。
その様子を見て良平が小さく舌打ちをする。
やはり燃でもそう簡単に勝たせてくれる相手ではないようだ。
そんなことを考えていると突然後ろから物音が聞こえた。
「!!」
良平は後ろも見ずに横に転がった。
しかし少し反応が遅れたせいか、黄色い閃光が良平の腿をえぐった。
「くっ・・・!!」
良平は顔をしかめながらも体勢を立て直し後ろを見る。
そこには右手をレーザー砲に変え、左手をガトリングガンに変えた美樹の姿があった。
「戦い中に余所見をするなんて、危険だよ?」
そう言って銃口を良平に向けると美樹のガトリングガンは火を噴いた。
それをギリギリの所でかわすと、良平がそれを思い切り蹴飛ばす。
「くっ・・・!!」
ガトリングガンは上に跳ね上げられ、美樹もバランスを崩す。
続けて首目掛けてナイフを振るうが避けられ、美樹の肩を切り裂く。
痛みに顔をしかめるが、美樹は良平目掛けて蹴りを放つ。
しかしこれもまた先読みしていたのか、良平はすでに間合いを取っていた。
「・・・どうも俺にとってお前とは相性が良いみたいだな。」
良平は体勢を立て直しながらそう言った。
美樹の機械的攻撃に対して良平は妖の細胞によって高められた運動能力、そして先読み。
良平以外の人間だったなら美樹の攻撃はひとたまりも無いだろうが、良平ならば美樹の攻撃をかわせる。
「・・・・・・確かにね。」
ため息をつきながら美樹が言う。
「でもね、今あなたは本気を出していない。」
「・・・?ああ、まあな。」
確かに本気を出しているといえば嘘になる。
しかし今ここで言うには言葉的におかしすぎる。
向こうにも何かあるのだろうか?
「だったらまだこっちにも手はある。」
やけに自身有り気だ。
「お前・・・何言っているんだ?意味がわからな・・・」
良平の言葉が途中で止まり、その顔にはあせりの表情さえ見られる。
「やっと分かったみたいだね。」
そう言って美樹は銃口を良平に向ける。