第94話 成果
「お前・・・本当に俺を抑えるつもりか?」
健一がまるでバカにするような口調で美穂に言った。
「もちろん。私嘘つくのは嫌いだからね。」
美穂が大剣を構え、戦闘態勢をとった。
「そうか・・・まあ、こうして話しても何も分からないしな、さっさと始めるか。」
そう言って健一は獣のような腕をした左腕を美穂に向けて掲げた。
「!?」
何かが健一の腕に集中するのが見え、美穂は思い切り地面を蹴って後ろに飛びずさった。
しかし、健一は何もせずにその腕を下ろした。
「どういうつもり?」
健一の行動の意味が分からず、美穂は警戒を解かずに健一に訊いた。
「いや、そこまで下がられると避けられるか、受けられるかして体力の無駄になるだけだと思ったから止めただけだ。」
「ふうん・・・ずいぶん消極的なんだね。」
隙をうかがっているのだろうか、美穂は徐々に健一との間合いを詰めている。
「まあな、すぐに燃との戦いが控えてるわけだしな。」
健一はそう言って一瞬だけ燃の居る方に目を向けた。
「そう簡単にはやられない!!」
その隙を見逃すはずが無く、美穂は大剣を思い切り振り上げ、健一の飛び掛かった。
美穂の大剣は健一を切り裂くはずだった。
しかし、その攻撃は健一の黒い翼によって受けられてしまった。
予想よりも早くに止められてしまった攻撃はろくに力も入らず、あっさりと弾かれてしまう。
「くっ!!」
しかしそこで攻撃を止める訳にはいかず、美穂は弾かれた勢いを殺さずに逆方向から横凪に振るった。
健一はそれを地面を蹴って飛び跳ねてかわすと同時に剣にしてある右腕で美穂の大剣の腹を突き、美穂の手から叩き落しす。
そのすぐ後に獣のような腕を美穂目掛けて引っ掻くようにして振るった。
美穂は危険を察知し、大剣をそのままにし、急いでバックステップで健一の爪から逃れる。
着地した後、少しバランスを崩すがすぐに態勢を立て直し、前を見る。
するとそこにはすでに左手を美穂の方に向けて掲げている健一の姿があった。
「終わりだ。」
健一がそう言った瞬間、健一の手から紫色の衝撃波が放たれる。
美穂は避けられないと判断したのか、両手を前に突き出し、防御の体制をとった。
あたりの気を根こそぎ収束する。
紫色の衝撃波は美穂の手と衝突し、美穂はその場で思い切り踏ん張った。
美穂はその場から2メートルほど押されたが、やがて衝撃波の勢いは無くなり、空中に消えていった。
「何?」
相当予想外だったのか、健一は余裕の表情を崩した。
「あんたの攻撃なんかよりも燃の衝撃波の方がよっぽどきつかったよ。」
にやりと笑いながら美穂がそう言った。