第90話 疲労
「なるほどね・・・」
リンが納得したように頷く。
「確かに確証は無いね。でも確率的にはかなり高確率・・・なんでしょ?」
確かめるようにしてリンは燃に問いかけた。
「ああ、あまり考えたくは無いが高いことは事実だろう。」
燃がそう言うと二人は考え込むように黙り込んだ。
しばらくの沈黙。
「なあ、リン。そういえば由香里はどうなった?確かあそこに居ただろ?」
30秒ほど経った後に燃がリンに問いかけた。
「うん。彼女ならあの後すぐに起きてね・・・燃の無事を知ったら安心して帰ってったよ。」
「そうか・・・っ!!げほっ・・・ごほっ!」
燃の顔には安堵の顔が見られたが、いきなり跳ね起きると口に手を当てて咳とともに血を吐き出し、すぐにその表情はぐずれた。
「燃!?」
その姿を見てリンはすぐに立ち上がり、水を汲んできて燃に渡した。
燃はそれを受け取り、一気にそれを飲み干す。
「燃・・・やっぱり・・・」
「ああ、かなり酷くなっている。だがこれによって作戦が立てられるんだからな。良いんだ悪いんだか。まあ、安心しろ。俺はまだまだ死ぬ気は無いからな。」
リンが心配そうに覗き込むと、そう言って燃は冷や汗をかきながらも不敵な笑みを見せる。
「当たり前でしょ。こんな所で死なれたら私が困るよ。」
「ああ、そうだな・・・」
そう言ってリンも笑顔を見せると、安心したように燃は再びベットに横たわる。
さすがに体力の限界が来たのだろうか、そのすぐ後には燃はすでに寝息を立てていた。
「燃?・・・全く・・・」
リンは呆れたようにため息をつくと燃に毛布をかけ、その小屋を出た。