第9話 隠されし物
「ねえ、止めておこうよ・・・」
洋子は健一に頼み込むように言った。
「何でだよ?」
健一が不思議そうに聞く。
「だって、これ泥棒と変わんないよ?」
洋子は既に日が落ち、真っ暗になった辺りを見回しながら言った。
目の前には黒田良平と言うお調子者の家がある。
「荒木燃がその女の子と抱き合うほど仲がいいなら写真の一つでもあってもおかしくはない。だから調べる。」
健一は振り向いて言った。
「第一、燃がここに居る保証なんてないでしょ?」
「ある。」
健一は真面目な顔で答えた。
「あるの!?」
洋子は驚いて言った。
「ああ、今日の授業を休んでいる間にこの写真を持って聞き込みをしたんだが・・・」
健一は荒木燃のクラスの集合写真を出しながら言った。
「どうやら4人組の女子高生達が荒木燃を見たらしいんだ。つまり、この町に荒木燃が居る可能性がある。」
「何でその時間に女子高生が・・・?」
洋子はそっちの方が気にかかった。
「まあ、細かいところは気にするな。というわけで、家捜しだ。」
健一はクラスメイトの家に入ろうとした。
「ま・・・まって健一君。」
洋子は慌てて健一を止めた。
「燃が身近に居るとは限らないよ?」
「いや、絶対に居る。」
健一ははっきりと言い切った。
「何で?」
洋子は不思議そうに聞いた。
「あそこの学校に転校した時から、どうも視線を感じるんだ。」
健一は思い出すように言った。
「確かに・・・」
洋子もなんとなくだが見られている気がしていたのだ。
「おそらく俺たちは荒木燃に監視されているんだろう。」
「何で?」
「そんなことは知らん。ただ、荒木燃が居る可能性があることは確かだ。」
健一はそう言って家のドアの前まで行った。
「どうやって開けるの、健一君?」
洋子は健一の顔を覗き込んだ。
「こうする。」
健一は指をカギの形に変え、その指を鍵穴に突っ込み、カギを開けた。
「どうだ。」
健一は得意げに言った。
「あはは・・・」
洋子は笑うしかなかった。
二人は足音を立てずに2階へ上がった。
「ここか・・・」
目の前には良平と書いてあり、木で出来た札が吊るしてある扉があった。
健一はそっと開けた。
ベットには良平が寝ていた。
「こいつ寝るの早いな・・・」
健一は良平の寝顔を見ながら言った。
「健一君、そんなことより探すんでしょ?」
洋子は静かに言った。
「ああ・・・そうだな。」
健一も静かに言った。
二人が探し始めて1時間がたった。
「ふう・・・無いね。」
洋子がため息をつきながら言った。
「お?・・・これは・・・」
健一はベットの下を除くといきなり真剣な顔つきになった。
「どうしたの?なんかあった?」
洋子は健一に近づいてみた。
「あっ・・・お前は来ないほうが・・・」
洋子は健一の言葉を無視してベットの下を見てみた。
「な!?なななななななな!?」
洋子は思わず叫んでしまった。
ベットの下には無数のエロ本があったのだ。
「う〜ん・・・」
良平が目を覚ましそうになった。
「なっ!?馬鹿!」
健一はそう言って洋子を抱きかかえ窓から逃げ出した