第89話 誤解
学校での事件の後、良平たちはとりあえず燃をリンの住んでいる小屋まで連れて行った。
怪我のほうはすでに無意識のうちにエネルギーで塞いでいるらしく、ほとんど治っていた。
「なんかここまで来るとこいつが本当に人間なのか怪しく思えてきたぜ・・・」
燃の怪我を見ながら良平が言った。
「・・・まあ、何にしてもこれで怪我のほうは大丈夫だな。」
「はい。しかし・・・」
光太郎が安心したようにそう言うとリンが燃に目を落として不安そうに呟いた。
「何だ?」
「・・・・・・」
光太郎が訊くとリンは何かを言おうとしたが、途中で止めた。
「何でもないです。では燃をゆっくりと休ませたいので皆さんも今日はゆっくりと休んでください。」
「・・・・・・まあ、いいか。」
しばらくの沈黙の後、そう言って光太郎はドアを開けた。
「ちょっと待ってください。敵に備え、一応我々もこの場に残ったほうがいいのでは?」
そういって俊平が光太郎を引きとめた。
「何故だ?」
「敵にとって燃君が倒れている今、このときが一番の好期です。ならばこの小屋に責めてくる確立は0%とは言い切れません。」
「・・・・・・確かにな。」
しばらく沈黙した後、光太郎が再び口を開いた。
「だがな・・・リンだって5分ぐらいでやられるほど弱くはねえだろ?5分あれば俺ならばここまでこれる。」
「しかし・・・」
「ああ、もう!!わかんねえ奴だな!!リンが燃と二人っきりになりたいって言ってんだ。ここはリンに任せようぜ。」
「・・・・・・は?」
俊平が驚いた顔をしてリンを見る。
リンは慌てているのか照れているのかは分からないが赤面していた。
「・・・・・・分かりました。」
しばらく考えた後、俊平はしぶしぶ了承した。
「よし・・・そういうことだお前ら。とりあえず今日は帰るぞ。俺達がここに居ても何にもなんないからな。」
不気味な笑みを浮かべながらリンを見てから良平と美穂、そして俊平を引き連れて家路に着いた。
光太郎たちが完全に遠くに言ったのを確認してからリンは燃の居るほうに向き直る。
「で?どうしたの?こんな合図までして。」
リンは燃の手に握られた手を上に挙げてからそう言った。
「ああ、ちょっと話があってな・・・」
寝ているはずの燃はゆっくりと起き上がってリンを見る。
リンは近くにあった丸椅子にすわり、大きくため息をついた。
「相当重要な話なんでしょ?光太郎さん達には話せないような・・・」
呆れた顔で燃に尋ねる。
「ああ、確かに重要な話ではあるんだけどな・・・」
「・・・?どうしたの?」
「まだ確証がないんだ。もしもそんな事態が起こったら・・・って感じだな。」
苦笑をしながら燃が言った。
「・・・・・・ふうん。で?その『もしも』はどんな事態なの?」
リンがそう言うと燃は真剣な顔になり説明を始めた。