第82話 知らせ
「はあっ!!」
リンが剣を振るう。
それを良平が何も考えずに反射で避ける。
その特訓を夜にやり、睡眠時間を減らし、そして学校に行き続けて2週間。
この二人の体はもうすでにボロボロであった。
「くっ!!」
「うっ!!」
二人はそれぞれ苦痛の声をあげて間合いを取った。
良平は足、リンは腕を抑えている。
お互いに木刀で打ち合ったのだ。
「大分腕を上げたね・・・」
リンは涙目になりながらそう言った。
「おうよ・・・」
良平も痛みをこらえるため、しっかりと足を抑えている。
「お〜い!!」
そんな時、校門の方から燃の声が聞こえてきた。
「おっ!?帰ってきたみたいだぞ。」
その声を聞いて良平は立ち上がった。
「そうみたいだね。」
リンも立ち上がり校門の方を見る。
「よう。」
「お兄ちゃん、久しぶり。」
光太郎と美穂はそう言って手を挙げた。
「どうだった、そっちは?」
良平も手を挙げながら言った。
「・・・まあ、死ぬ思いだったとしかいえないな・・・」
「・・・私も・・・腕が飛ぶかと思った・・・」
その話を振った途端、二人は暗い顔になった。
「そっちはどうだったんだよ・・・?」
光太郎が聞き返す。
「・・・全身アザだらけだ・・・」
確かに半袖から露出している腕、顔などにはいくつものアザがある。
おそらく胴体にはもっと多くのアザがあるだろう。
「そうか・・・そっちも大変だったんだな・・・」
そう言って光太郎が良平の腕に視線を落とす。
「で?それは何の真似だ?」
光太郎がにやりと笑いながら、良平を見る。
「いやあ、俺も師匠みたいに強くなりたいと思ってさ・・・」
そう言って光太郎がつけている重りと同じ物をつけている腕を光太郎に見せた。
「そうか・・・」
嬉しそうに笑った。
「じゃあ、お互いにどれくらい強くなったのか確かめ合おうじゃないか、良平!」
「いや、ちょっとそれは・・・」
良平がそう言いかけた瞬間、反射で顔を後ろに逸らした。
良平の顔の前を光太郎の小さな木刀が通る。
「良く避けた!それでこそやりがいがあるってもんだ。」
「師匠!?マジですか!?って、うおっ!!」
光太郎の木刀が良平を襲う。
「・・・・・・で?そっちはどうだった?」
黙ってその戦いを見ていた燃がしばらくしてからリンに訊いた。
「うん。良平もかなり強くなったよ。そっちは?」
リンが訊き返す。
「ん?ああ、もうばっちりだ。大抵の敵には負けないだろうな。」
「そう。それは良かった。」
「それと悪い知らせがある。」
燃が真面目な顔をする。
「何?」
リンも真剣な顔をした。
「エネルギーで作ったスパイが見つかった。」
「!?・・・それじゃあ・・・」
「ああ、向こうが来るのもそう遠くない。」
燃は真っ暗な空を見上げながらそう言った。