第81話 最終日
新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
ー修行を始めてから2週間後ー
多数の棒が光太郎目掛けて飛んでくる。
最早これは誰が見ても避けることは不可能と考えるであろう。
しかしその棒のどれもが光太郎に当たらずに木に当たるものばかりであった。
「ふう・・・この修行ももう終わりか・・・」
木の上に立っている光太郎がそう呟いた。
しかし次の瞬間、
「おわっ!!」
光太郎は木から落ちた。
足を滑らしたわけではない。
木が折れたのだ。
当たり前である。
光太郎の体重がかかっている上に重りの分の重さもあるのだ。
地面に頭が触れる直前で光太郎は手をつき、態勢を立て直そうとする。
しかしそこをすかさず大量の棒が光太郎を襲う。
「くっ!!」
光太郎はそのまま足に思い切り力を入れ、高速移動をする。
次に地面に足がついた瞬間、立て続けに高速移動をして再び棒の大群をかわした。
「しょうがねえ。このまま帰るか。」
光太郎はそう呟きながら高速移動を繰り返した。
辺りの木々は倒れ、その中心には燃と美穂の二人がいた。
燃はゆっくりと手を掲げ、足を踏ん張った。
「行くぞ・・・!!」
そう言うと同時に燃は凄まじい強さのエネルギーの衝撃波を美穂に向かって放った。
燃の体は放った衝撃によって少し後ろに押される。
美穂はすごい勢いで気を収束し、大量の気を一気に圧縮した。
「はあっ!!」
掛け声と共に美穂は両手を前に出し、その衝撃波を止めようと試みる。
しかしその勢いはなかなか止まらずに美穂はどんどん押されていく。
「くっ!!」
美穂は苦し紛れにさらに気を収束し、足にそれを送り込んだ。
燃の衝撃波の衝撃によって辺りの美穂の後ろにあった木は凄まじい音を立てて倒れた。
「はあああああ!!」
美穂は力の限界まで振り絞り、両手を思い切り突っ張った。
すると衝撃波は勢いをなくし美穂の目の前で空に消えた。
「うわっ、わわわわわ・・・」
いきなり抵抗がなくなったせいか、美穂はそんな声を上げ、前につんのめって倒れてしまった。
「いたたたた・・・・」
そう言って美穂はゆっくりと立ち上がる。
「正直、今のを止められるとは思わなかったよ。」
燃は転んだ美穂が滑稽だったのか、笑いながらそう言った。
「『思わなかった』って・・・止められそうにない衝撃波を打ったの!?」
美穂は信じられないといった風の顔でそう言った。
「ああ、本当のところそうだ。今日がラストになるからな。少し暗い無茶をしても良いんじゃないかと思ってさ。」
「あれ?今日で終わりだっけ?」
予想外だったのか、美穂は驚いた顔で燃に聞いた。
「ああ、そうだ。今日帰るぞ。だからもう上がるぞ。丁度光太郎さんも帰ってきた。」
燃がそう言った瞬間、美穂と燃の間に光太郎が突然現れた。
「よう。」
光太郎は少し息があがっている。
「どうも。もうかなり連続で行ける様になったんじゃないですか?」
「ああ、これもお前の修行のおかげだな。」
にやりと笑いながら、光太郎は嫌味ったらしく言った。
「あの・・嫌味にしか聞こえないんですけど・・・」
気まずそうに燃が言った。
「当たり前だ。この2週間死ぬかと思ったんだぞ?な?」
そう言って光太郎は美穂のほうを向いた。
「うん。本当に。さっきだって無理そうだと思った力で撃ってきたもんね。」
呆れた目で美穂も言う。
「そうでございましたか・・・」
ため息をつきながら燃が言った。
「まあどう思われようと昨日言った通り特訓なので仕方ないですけどね・・・とりあえずもうすぐ出発します。用意しておいてください。」
燃はそう言って二人に背を向けた。
「ああ・・・」
「うん。」
二人は頷いて小屋の中に入った。