第8話 弱点
「ええ!?今日もうちに来るの?」
洋子は屋上で叫んだ。
「ああ、まだ荒木燃の事がいまいち分からないからな。」
健一は落ち着いた態度で言った。
「う〜ん・・・まあ、別に良いんだけどさあ・・・」
洋子は悩みながら言った。
「よし、決まりだな。」
健一はそう言って立ち上がった。
「あっ、ちょっと・・・」
洋子も慌てて立ち上がった。
そのまま二人は教室へ向かっていった。
「ねえねえ、二人って付き合ってるの?」
教室に戻り、席に座ると隣に座っている秋葉原竜太が話し掛けてきた。
洋子はその言葉を聞いて頭を抱えた。
「どうしたの?」
竜太はいきなり頭を抱えた洋子を心配した目で見ながら言った。
「いや・・・別に付き合っているわけじゃないよ。」
洋子は冷静に答えた。
「ふ〜ん、そうなの?」
竜太はなにやら疑った目つきで言った。
「うん。そう。」
洋子は頷きながら言った。
「じゃあ、何でいつも一緒に屋上に居るの?」
竜太は面白そうに聞いてきた。
「ああ・・・それはね、私が荒木燃のことを知っているって言ったら健一君が是非そのことについて教えて欲しい、って言ってきて・・・」
「ああ、なるほど。で、彼は何で荒木燃のことが知りたいの?というか、荒木燃って誰?」
竜太は興味深々なようだ。
「まあ、そんなことは気にしないで。早くしないと授業が始まっちゃうよ?」
洋子は誤魔化しながら言った。
「あっ・・・やべ・・・教科書借りてこなきゃ。じゃあ、また後でね。」
竜太はそう言って教室を出て行った。
竜太は既にクラスだけでなく、他のクラスにまで友達を作っているようだった。
「はあ・・・健一君のせいだよ?」
洋子はため息をついて健一に話し掛けた。
「何がだよ?」
健一はぶっきらぼうに答えた。
どうやら何も聞いていなかったようだ。
「・・・何でもない・・・」
洋子は呆れたように言った。
健一は洋子の部屋で荒木燃に関しての情報をすごい勢いで見ていた。
「なあ、荒木燃の変わったところとかないか?」
健一は調べながら洋子に聞いた。
「変わったところ?そうだねえ・・・変わったところと言えば、1年間姿を見せなかったときがあるね。」
洋子は思い出すようにして言った。
「1年間?何で?」
健一は顔をあげていった。
「その前にお父さんとお母さんが死んじゃってさらにお兄さんまで居なくなっちゃったの。多分そのショックで休んでたんだと思う。まあ、1年したらまた転入という形で入ってきたけどね。」
「その1年何やってたんだ?」
健一は不思議そうに聞いた。
「それがよく分かんなかったの。聞いても山ごもりとか言って話を茶化されちゃってたの。」
「ふ〜ん・・・じゃあ、弱点とかは?」
「弱点?」
洋子は怪訝な顔をした。
「まあ、苦手なものでも良いや。とにかくなんでもいいから教えてくれ。」
「う〜ん・・・弱点、て言うと変だけど・・・一時期燃がからかわれてた時期があってね、その原因が小さい子と抱き合っていたって言うネタなの。それで燃がその子のこと師匠って呼んで・・・」
洋子は顔をしかめながら言った。
「師匠?」
健一がその言葉に疑問を抱いたらしい。
「うん。燃君が皆にその現場を目撃されたとき助けを求めるように『師匠〜』って言ってた。」
「ふ〜ん・・・なるほどな・・・」
健一がにやりと笑った。
「健一君?」
洋子はその笑いに寒気を覚えた。